笑って!マリア。〜セクサロイドだって夢を見る〜
猫野 尻尾
第1話:ホームエクスマキナ。
注、この作品は性的要素を含みますので、苦手な方は読まずにスルーしてください。
よろしくお願いします。
この物語は今よりけっこう未来の話・・・。
ガイノイドも夢を見る。
俺んちのガイノイドは次の朝、朝食の時、昨日見た夢を一生懸命僕に
話してくれる・・・。
昔と違って、今の時代、独身男性と独身女性ばかりの世の中になっていた。
それはテクノロジーの進化やトランスヒューマンの研究進化によって
世の中には普通にロボットやアンドロイド・ガイノイドが活躍していたからだ。
当然、家庭の中にも彼ら、彼女らは存在していた。
ちなみに、一般的には男性型がアンドロイド、女性型がガイノイドと
呼ばれた。
当然のごとく恋人や奥さんを持たなくても、彼たち彼女たちがその代わりを
担ってくれていた。
アンドロイドやガイノイドがいるから、人間のパートナーなどいなくても
不自由はしない。
発売当時は目が飛び出るほどの値段だったアンドロイドも、普及するにつれて
一般人でも、なんとか手にれることができるようになっていた。
ただし高級住宅が一軒買えるくらいの値段だった。
俺は「
某広告会社に勤務してて、毎日パソコンの前でデザインを担当している。
趣味はとくにないかな・・・アウトドア派でもないし・・・どっちかって
言うとインドア・・・おまけに出不精と来てる。
俺は社会人になってから、彼女がいない日々を悶々と送っていた。
だから誰か家のことをしてくれるパートナーが欲しかった。
ほんとは人間の女性の彼女が欲しかったが、それが無理なら
ガイノイドの女の子でもいいからいてくれたら楽しいだろうなって思っていた。
その日、いつものように仕事を終えて、もよりの駅まで来た時のことだった。
パンフを抱えた、キザそうなメガネをかけた痩せぎすな中年女性がなにやら
モニター募集のアルバイトの求人をやっていた。
なんとなくだけど興味を惹かれた俺は、立てかけてあった看板に貼られてあった
ポスターの女の子を見て釘付けになった。
その写真の女の子がめちゃ俺のタイプだったからだ。
それは、可愛いメイドの衣装を着たガイノイドの女の子の写真。
最初は人間かと思ったけど、ガイノイドと書いてあった。
人間じゃないとは言え、俺はその子に一目で惹かれた。
で、何を血迷ったのか、魔が差したのか、中年女性の話を聞いてみることにした。
中年女性の名前は
ガイテック・グローバルって企業の広報担当及びこの企画の責任者でも
あるらしい。
モニター募集の内容は、好みのガイノイドを半年間レンタルしてもらって、
その間のデータを収集するって言うものだった。
ガイノイドをレンタルしている間、一ヶ月に一度、体験した率直な感想や
使い心地などのアンケート取りに及川さんが家に訪ねて来る。
ネットとかメールじゃなく直接、客の反応が知りたいらしい。
なんでも、カタログの中から、好みの子が選べるって話だったけど
俺は迷わずポスターの子がいいと言った。
レンタルとして提供されるガイノイドたちは、実はみんなセクサロイド
なんだそうだ。
そのためのデータ取りだってことらしい。
「セクサロイド」って言うのは文字通り、セックスに特化したガイノイドのこと。
セクサロイドが家にいるなんて、あまり大きな声では言えないが、特に違法
じゃない。
最近では独身男のための家事手伝い、病人の看護、老人介護、なんでもこなす
ことからホームエクスマキナとも言われている。
そう読んだ方が聞こえがいいからだ。
昔はラブドールなんてあったが、いまはセクサロイドに取って代わられてる。
そりゃ、しゃべらない動かないってより、ちゃんと意思表示してくれるほうが
いいに決まってる。
俺はポスターの彼女が俺のマンションに来るってだけでテンションが上がった。
俺には今、付き合ってる人間の彼女がいないから、ひとりぼっちの
俺の相手をしてくれるガイノイドがちょうど欲しいと思っていた。
まさに今回のモニター募集はいい機会だった。
ガイノイドを買おうと思えば、買えないこともなかったが長い返済ローンを
組むのが嫌だった。
俺の歳だと払い終わるのはたぶん定年退職するくらいの歳になってからだろうな。
それなら、頑張って人間の女性を探したほうがいいし・・・。
いろいろやりたことも他にあるから、なるべくなら借金は作りたくない。
まあ・・・お試し期間限定のレンタルだから・・・。
気に入らなかったら返却すればいいだけのことだろ。
契約後一週間で、ちょうど会社が休みの時ブツは届くことになっていた。
中身はガイノイドだから、すごい厳重な梱包なんだろうなって思ったから、
配達の場所をゴミ処理工場にしてもらった。
俺のアパートになんか届いたら、ガイノイドを出した後の箱のゴミ処理が
大変だと思ったからだ。
解いた梱包の端材をそのまま処理工場で処分して貰えるからな。
で、送られてくる当日、指定さてた時間に間に合うよう会社から軽四を
借りてゴミ処理工場へ出かけた。
ゴミ処理工場で待ってると、宅急便のトラックがやってきてデカい荷物を置いて
いった。
汗だくで梱包を解くと、発泡スチロールとプチプチの中から例のポスターの子が
現れた。
「お〜ポスターのまんまじゃん・・・」
あとは、中に何が入ってるのか知らないが小ぶりのトランクが一個入っていた。
ガイノイドの横にあったタブレットを立ち上げてマニュアルを見た。
起動はとても簡単・・・ガイノイドの鼻が起動スイッチになってるみたいだった。
鼻をプチっと抑えると、キュイーンって音がしてガイノイドが目を覚ました。
「実物のガイノイドなんて・・・初めて見るな・・・人間と変わんないんだな」
ポスターの写真通り・・・金髪のショートカット、美人ってより可愛い系。
彼女は右と左を確認すると、ムクッと起き上がった。
でもって最初っからスケスケのベビードールを着ていた。
(おお、可愛いぞ、めっちゃ可愛い・・・)
(これじゃ〜人間の彼女なんていらないって気持ち分かるわ・・・)
「ここはどこでしょう?」
それが彼女が発した最初の言葉だった。
「ここはゴミ処理場・・・」
「え?もしかして私、起動したばかりなのに、もう処分されるんですか?」
「違うよ・・・そんなことしないよ・・・」
「君を梱包してた、めちゃ大げさな粗大ゴミをここで捨てようと思って、
君をここに運んでもらったんだよ」
家に持って来てもらったら、結局ここへ捨てに来なきゃいけないだろ」
「そうなんですね・・・と言うことで・・・」
「は〜じめまして・・・え〜と・・・なんでしたっけ?」
「は?・・・」
「最初はなんでしたっけ?・・・ああ、あなたの生年月日と、それからお名前と
年齢を教えていただけます?」
「でね・・・私の名前ですけど、あなたの好みの名前があったら私に
つけてくださると、ことがスムーズに運ぶんですけど・・・」
「最初っからなんだかめちゃ馴れ馴れしいんだな・・・」
(だいたい、アンドロイドとかガイノイドとかって、もっと事務的で機械的
なんじゃないのか?)
「まあ、でもいいわ、俺の生年月日と名前はマンションに帰ってからでいいだろ?
とりあえず、ゴミ処理場からとっとと退散・・・マンションへご招待するよ」
ガイノイドを梱包してたゴミを処理場に捨てさせてもらって、俺は借りてきた軽四に彼女を乗せた。
「きゃ〜私、こういうの、乗るの初めてですぅ〜」
「めっちゃ、ドキドキします」
「ドキドキって・・・そんな感情あるのか?」
「おいおい・・・、バタバタしないで大人しくしてくれよ」
「窓から手とか顔出すなよ・・・危ないから・・・いっか?・・・行くぞ」
「イケイケ〜・・・やっほ〜」
「なんだこいつ?・・イメージ違いすぎるじゃん・・」
つづく。
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