過ぎし日の贈り物たち

りつ

* * *

 そっと、手をさしのべる。


 にぎっているのは、小さな葉っぱ。

 公園の広場にしゃがみこみ、空がうすい夕日の色になるまで探し回って見つけた「それ」を、一帆かずほくんに渡そうとする。


 わたしはただ、仲直りがしたかった。


 この間、一帆くんの家に遊びに行った時、おやつの取り合いからけんかになってしまったこと。その時たまたまやかんに触ってしまい、手の甲をやけどしたこと。そのせいで、一帆くんがたくさんおこられてしまったこと。


 一帆くんは何もわるくないし、わたしもけがのことは気にしていない。そう伝えたいのに、何となくはずかしくて、言葉がうまくでてこない。

 一人もじもじしていると、一帆くんはわたしをにらみながらつぶやいたのだった。


 ——やりかえしてやる、ってことか。


 どういうことだろう。彼はわたしの手にした葉っぱを、まるで悪いものであるかのように指さした。


 ——オレ知ってるんだからな。「それ」の花言葉。


「フクシュウ」だろ。


 一帆くんはわたしの手からパッと「それ」を取り上げると、葉っぱをつまんで引きちぎってしまった。


 一枚、二枚、三枚……。


 緑色の葉が落ちていく。

 ハートの形をした、小さな緑色が。


 やがて、葉っぱを散らした「それ」を、一帆くんはわたしの手に戻してきた。


 一生けんめい探して見つけた四つ葉のクローバーは、ただのさびしげな一つ葉になってしまっていた。


 花言葉なんて、そんなの知らない。

 四つ葉のクローバーは、幸せのしるしだったんじゃないの。


 どうしようもなくかなしくなって、手にした緑がにじみゆがんでいく——。

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