坂本ちえ
~坂本ちえ~
影山聡子がA市の別荘の近くで捕まってから五日が過ぎた。
取り調べには応じているが、質問には適当な答えしかせず、佐々木や坂本ちえ、久保田の話になると急に目を閉じて瞑想をはじめるということだった。
こんな調子であるから、警察は坂本ちえの証言だけが頼りだった。
(ちえさんは昨日退院したはずだよな……)
日常を取り戻していた神野ゆいは、ふと坂本ちえのことが気にかかった。
(洗脳はされていなかった)
田中警部に聞いた、発見された時の状況を思い出していた。
(首輪をされて、鎖で繋がれていた)
影山聡子はその時別荘にはいなかった。
神野ゆいは急に胸騒ぎがするのを感じた。
ブブブブ……
電話だ。
「篠原さん? お疲れ様です」
電話の内容はこうだった。
坂本ちえがまだショック状態なのか話せなくなっている。
坂本大臣が神野ゆいに一度ちえを会わせたいと言っていると。
何も話さなかったとしてもいい、試すだけでもお願いしたいと言っているそうだ。
篠原もそれには賛成だが、監視付きという条件でどうだろうか、と神野ゆいに聞いてきた。
「私でお役に立てるかどうかわかりませんが、会うだけ会ってみます。本当に篠原さんそばにいてくれますよね?」
『もちろんだとも。心配いらないよ』
「わかりました。では明日、お待ちしております」
神野ゆいは電話を切った。
(坂本ちえ……か)
胸騒ぎはまだ消えなかったが、神野ゆいも少し、坂本ちえと対面してみたい気持ちが出てきていた。
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