魔法少女ソル・スプリング
たつみ暁
プロローグ
『春が好き』
太陽の光が降り注ぐ中。舞い散る桜の花びらに向けて手を伸ばしながら、『彼女』は言った。
『この大地に新しい命が芽吹く季節だなって、感じる。この星が生きているって、感じる』
くるくるはねた赤毛が、春の光に照らされて、きらきらと輝く。
『いつか子供が生まれたら、「春」を使った名前をつけたいな』
お前はまだ若いのに気が早い。
そう告げたら、『彼女』は、『おや』と少し明るめの茶色い瞳を細めた。
『わたしはもう大人の仲間入りの歳。そういう話をしたって、いいじゃない』
そういうことじゃあない。
自分から見たら、『彼女』はいつまでも子供で、危なっかしい、守らねばならない存在だ。なのに、『彼女』はひらりはらりと自分の思惑の手をすり抜けて、先へ先へと進んでいってしまう。
先の話なんてしないでくれ。
離れていってほしくなくて、思わず差し出した手は、
『彼女』は、自分の手の届かない遠くへ、行ってしまったのだ。
やはり陽光ばかりがまぶしい、春の日に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます