第21話 ルナとデート①

 体力テストが行われた日の放課後、勇司はルナと一緒に十色図書館を訪れていた。


「今日の体力テストどうだった~?」

「良くも悪くもって感じだな。俺はルナみたいに運動神経良いわけではないし。ルナは?」

「私より運動神経が良い人がいなかったらたぶん学園内で一位!」


 そう言ってルナはVサインを勇司に向けた。


「凄いな。そんなに成績良かったのか?」

「まぁね~」


 ルナの運動神経の良さは今も健在らしい。


「さすがだな」

「えへへ、ありがと!」

「ルナは昔から運動神経良かったもんな。運動部には入らないのか?」

「入らないよ~。部活をやってる時間ないし、それに部活に入ったら勇司と一緒にいれる時間が減っちゃうからね!」

「そっか。でも、今日の結果でいろんな部から勧誘が来るんじゃないか?」

「来ても全部お断り! 部活に入ったらこうして勇司と放課後デートも出来なくなるし、絶対にやらないよ!」


 ルナの意思は固そうだ。

 勇司としてもそっちの方が嬉しかった。

 なぜなら勇司もルナと同じ考えだからだ。


「それで、図書館にやって来た目的は?」

「目的は特にないよ~。勇司と放課後デートできるならどこでもよかったんだけど、せっかくだから私も本が読めるようになったし、一緒に図書館に行って本を選んでみたいな~って思ったからかな~」

「なるほどな。じゃあ、一緒に本を選ぶか」

「選ぼ!」


 ここの図書館は勇司にとって庭みたいな感じだった。

 子供の頃は毎日のように来ていた。

 三年経って久しぶりにやって来たが、本の配置とかは昔と何も変わっていなかった。

 そのことが嬉しかった。

 第二の地元に帰って来たような感覚だ。


「ここの図書館はよく利用するのか?」

「そうだね~。本を読むようになってからは毎日のように利用したよ」

「そうなのか。すっかりとヘビーユーザーだな。ルナが利用してくれるようになって嬉しいよ」

「図書館っていいよね~。無料で本が借りれるとか最高過ぎない?」

「それな。ヤバいよな。新刊とかも割とすぐに入るし」

「ね~。読みたい本をリクエストしても買ってもらえるし、ほんと凄いよね~」

「向こうでも図書館に通ってたな~」

「そうなんだ~」


 そんな話をしながら勇司たちは日本文学コーナーへと向かっていた。


「ルナは海外の小説とかは読むのか?」

「海外のは読まないかな~。日本語に翻訳されたやつだよね?」

「さすがにな。俺も英語とかフランス語とかの小説は読めない」

「翻訳されたのは読むの?」

「たまに読むかな。ホームズとか好きだからな」

「ショーロックホームズ?」

「シャーロックな」

「あぁ、シャーロックか! 面白い?」

「面白いぞ。でも、恋愛小説と違ってかなり頭使うから、慣れるまでは大変かもだけどな」

「せっかくだから借りて帰ろうかな~。オススメ教えて~」

「オススメか~。全部面白いから最初から読んでいくのがいいと思うけどな。シリーズだし」

「じゃあ、一巻目から借りる~」

「それじゃあ、海外文学のところに行くか」

「そうだね~」


 日本文学コーナーを通り越して海外文学のコーナーに向かった。

 海外文学コーナーに向かっている途中で懐かしい顔を見かけた。


「あれは……」

「どうかした?」

「知り合いがいた。ちょっとだけ話をしてきてもいいか?」

「どの人?」

「あの人」


 勇司は目の前の名札をつけている男性を指差した。


「司書さん?」

「だな。俺が子供の頃にお世話になった人。まさかまだいるとは思わなかった」

「そうなんだ。行って来ていいよ。私はさきに海外文学のコーナーに行ってるね」

「分かった。ありがとな」


 ルナは海外文学コーナーに向かって行った。

 ルナを見送ると勇司は司書のもとへと向かった。


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