第18話 夢子とデート②

 映画館を後にした二人はカフェにやって来ていた。


「カップルメニューがあるみたいですよ」


 そう言って夢子がお店のメニューを見せてきた。

 言われてお店の中を見てみると、たしかにカップルがたくさんいた。


「せっかくなのでこの中から何か頼みませんか?」

「そうだな。どれを頼む?」

「勇司君はお腹空いてますか?」

「まぁまぁって感じかな。ポップコーンを食べたし」

「では軽食にしますか? 私もあまり空いてないので」

「そうだな」


 メニューにはがっつりした料理からスイーツまでいろいろ乗っていた。


「パンケーキとかどうですか?」

「パンケーキか。いいな」

「では、パンケーキにしましょう。ソースとかフルーツとかいろいろ選べるみたいですよ」

「その辺は夢子に任せるよ。好きなやつをトッピングしていいよ」

「悩みますね。少し時間をください」


 夢子は真剣な表情でメニューとにらめっこをしていた。

 勇司はその様子を見つめている。

 今日の夢子は少しだけメイクをしていた。

 メイクをしている時の夢子はいつもより少しだけ大人っぽい。

 可愛いのは可愛いし、美人なのは美人で何も変わらないけど、少しだけ大人っぽいから不意に見せるちょっとした表所にドキッとしてしまう。

 今も真剣な表情でメニューを見つめている夢子を見て勇司の心臓はドキドキとなっていた。


「決めました! て、どうかしましたか?」

「今日の夢子は大人っぽいなって見てた」

「そうですか?」

「あぁ」

「勇司君好みですか?」

「そうだな。好きだな」

「そうですか。ありがとうございます。注文しちゃいますね!」


 少し照れくさそうに頬を赤くした夢子は店員さんを呼んでパンケーキを頼んだ。


「いちごにしたんだな」

「はい」

「いちご好きだもんな。夢子」

「好きですね」


 夢子はいちごが好きだった。

 誕生日ケーキを選んだりする時も必ずと言っていいほどいちごの入ったケーキを選んでいた。


「誕生日のケーキとかいつもいちごのやつ選んでたよな」

「ですね。誕生日といえば、来月は勇司君の誕生日ですね」

「そうだな」

「勇司君の誕生日をお祝いするのも三年ぶりですね」

「祝ってくれるのか?」

「もちろんです。三年分のお祝いをするので楽しみにしていてくださいね」

「それは楽しみだな」


 それぞれの誕生日をみんなで祝うというのは出会った時にできた決まりだった。

 その約束が今もまだ有効で勇司は嬉しかった。


「俺も夢子たちの誕生日をちゃんと祝うからな」

「楽しみにしてますね」


 それから映画の感想を話し合っているとパンケーキが運ばれて来た。

 生クリームといちごがたっぷりと乗った甘そうなパンケーキだった。


「めっちゃ甘そう」

「ですね。でも、美味しそうです」


 夢子は瞳をキラキラとさせてパンケーキを見つめていた。


「早速食べてもいいですか?」

「どうぞ」

「四枚あるので二枚ずつですね」


 そう言って夢子は小皿に二枚のパンケーキを取り分けて勇司に渡してきた。 

 もちろんいちごと生クリームも半分だ。


「それではいただきます」


 夢子は丁寧に両手を合わせてパンケーキをフォークとナイフを使って一口サイズに切った。そして、いちごと生クリームを乗せて口に運んだ。


「美味しいか? って、聞くまでもないよな」


 パンケーキを食べた夢子の顔を見れば丸分かりだ。

 頬がとろけそうなほどゆるゆるになっている。


「ふわふわでとても美味しいです」

「よかったな」

「勇司君も早く食べてみてください」

「そうだな」


 勇司もいただきますを言って、夢子と同じようにパンケーキを切って口に運んだ。

 なるほど、これは夢子の頬がとろけるのも頷ける。 

 パンケーキは口に入れた瞬間に溶けてなくなるほどふわふわで、生クリームは濃厚、いちごは甘酸っぱい。


「美味しいな。これは一瞬でなくなりそうな」

「ですね。もう一つ食べたいくらいです」

「遠慮せずに頼んでもいいぞ?」

「全部食べ終えた後のお腹と相談ですね」

「残ったら俺が食べるよ。思ってたより大きくなかったから、これくらいなら食べれるだろうし」

「それなら、頼んでもいいですか?」

「いいよ」

「ありがとうございます」


 夢子はいちごのパンケーキをペロッと完食すると店員を呼んで次のパンケーキを頼んだ。

 次はメロンのパンケーキを頼んでいた。


☆☆☆

 

 

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