第31話 死の意識
夜中にまるで雷に打たれたような突然の激しい頭痛で隆一郎は飛び起きた。吐き気を伴い頭が破裂するように痛む。健康自慢であった隆一郎にとって野球やラクビーなどの激しいスポーツでの激突や骨折などの痛みは経験があるものの、内部疾患での痛みなど今まで経験がなく頭痛など皆無であった。
40㎡ほどもある広い自室の大きな窓ぎわに置かれているフランス製の巨大なベッドの中で一向に治まらぬ激痛に悶えていた。
電話までの距離は5m以上はある。執事や使用人を呼ぶにしても激痛のため歩けないし動けない。広いベッドの上でひとり七転八倒するのみで電話をかけることさえできない状態であった。
大声など出しても外に聞こえはしない。隆一郎の趣味であるエレキギターを夜中に最大のボリュームで弾いても音漏れがしないように両親に頼んで防音処理されているからだ。
魂である影1019も生である隆一郎の激痛を共有していた。影としては実態がないはずの頭部分が爆裂するかのような激しい痛みが襲う。永遠に続くような5分間の後に残たっものは異常な汗のみであった。
まるで嵐のようであった。心臓が頭の中に移動したような脈に合わせた激痛の鼓動。死というものを感覚したことがない影ではあるがまるで死を意識するような痛みであった。
ベッドのシーツがまるでバケツの水をぶちまけたように汗で汚れている。なんとか立ち上がり使用人に頼んで新しいシーツを運んでもらったがベッド自体が濡れているため、他室で持ち主もなく遊んでいた空きベッドを自室に運び入れてもらった。
あまりにも水浸しになったベッドを見た使用人や慌てて駆けつけた執事までもが隆一郎がまさかのオネショをしたのではないかとみんなで大笑いしたほどである。
この激しい頭痛のことは誰にも話さなかった。片付けに駆けつけた執事や使用人には恥ずかしいからと言う理由でしっかりと口止めをしておいた。
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