アリシア奮闘記 ~恋は魔法を無双する!?~

月杜円香

第1話  落ちこぼれのアリシア

「……ですから、エメットさん。学び舎は、お嬢さんの遊び場ではありません。15歳で三度の呼び出しは、前代未聞なのですぞ!!」


「まあまあ、娘はまだ15歳です。セルグ師、あの子には、私の血が流れているんです。必ず立派な魔法使いになれるはずです!」


 この世界の聖地たる銀の森の学び舎の応接室では、魔法学の専任教師であるセルグ師の方が押されている

 ああ、この自信家にも泣かされたものだった。

 コレの娘か……。

 セルグ師は、盛大に溜め息をついた。


「アンスニィ、悪いが学舎は五回の親呼び出しで退学だ。そして、アリシアは来年魔法学を専攻出来る可能性は皆無だ」


「そんなはずは……ソコまでひどい成績ではないはずです」


「そうですな。レトア語以外は、まずまずです。が、初めての呼び出しは、レトア語の知識を何も伝えないで、学び舎に入れたあなたに責任を問う為でした。次は、古代レトア語の試験を三回続けて赤点を取った時、今回も魔法学専攻に足る古代レトア語の実力がない事を保護者のあなたに分かって欲しいからです。

 聞けば、アリシアには魔法使い志望の動機は無いそうですからね」


 セルグ師は、そこまで一気に言うと、出されていた香草茶を飲んだ。


 アンスニィ、エメットはAランクの魔法使いである。

 ロイル姓が貰えるには、三ランク足りなかった。

 だが、一族の中では最も地位が高く、それが本人の自慢でもあった。

 だから、一人娘のアリシアにもなんの躊躇ためらいもなく、自分と同じ道に進ませようとしていた。

 この世界は魔法使いこそがエリートなのだ。


「ハッキリ言います。アリシアの古代レトア語の成績は壊滅的ですぞ」


「なんと!!」


 古代レトア語は、古い時代の言葉であるが、異種族とも意思疎通のできる言葉でもある。

 余程、言葉に魔力が無い限り、精霊の契約も出来ないのだ。

 そして呪文は、古代レトア語を元に成り立っている。

 つまり、古代レトア語が壊滅的なアリシア・エメットには、魔法使いへの道は断たれたようなものである。

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