第13話 15:52 危険な男がやってきた!
マルコに行くともうすでに、父母、寧々、朝陽の嫁子ども2人がいた。
「朝陽は?」
「あいつは会合だ。あいつにとって人脈が何よりの仕事だからな。
おい、母さんに挨拶しろ!」
「お母さま、お久しぶりです。」
「いいのよ、私に挨拶なんて。十維さんお元気でしたの?活躍はいつも伺ってますよ。」
「はい、元気にしてます」
母と息子……とてもぎこちない会話だ。
仕方ない。俺と母は血が繋がってない。俺と朝陽を産んだ母は俺を産んでしばらくして病死した。その後、今の母が来て寧々が産まれた。幼い頃から一緒にいるがどうも俺は馴染めないまま大人になってしまった。
食事中は、寧々、母、朝陽の嫁の3人が喋り、俺と父は黙々と食べる。
「そういえば十維さん、なんでも気に入った方が見つかったそうね」
グフッ……
母の言葉に咽せた。
「えっ?」
寧々も驚く
「お見合い写真のなかで気に入った方がいらしたんですって!先程、お父様から伺いましたよ」
そっちか……
「まぁ、十維さんにそんな話があるんです?初めて聞きました。朝陽くん何も教えてくれないから」
朝陽の嫁も驚く
「別に気に入ったとかではないですよ。知ってる人がいたのでみてたんです」
「それでもそんなこと初めてじゃない?
家柄も頭もとても良いお嬢さんのようだし、うまく行くと良いわね」
「へーーーー」
寧々がさも意味ありげに言う。俺は無視して食事を楽しんだ。
マンションに帰ったのは、夜の9時近くになっていた。
「お兄ちゃん、どういうこと?お見合い?
気に入った人が出来たの?」
「そんなわけないだろ。親父が怒るから仕方なく会うことにしたってだけだよ」
「知り合いなのよね?」
「あぁ、高校の時の同級生だ」
「接点は?」
「…………当時、告白された」
「え?そんな人とお見合いするの?大丈夫?ヤバくない?」
「なんで?」
「だって、昔好きだった人とお見合いなんてしたら、期待度大って向こう思わない?
すぐ惚れられるわよ。ちゃんと断れるの?」
「大丈夫だよ、ちゃんと断るさ。さ、もう寝よう。疲れた」
今夜はさっさと寝ることにした。
翌日もおれは、日課のランニングに出発する。
でも今日はMaxに会えなかった。
仕事へ行きいつものようにその日の仕事をこなしていく。
が、今日の十維は少し違う。
いつもと違うのは時計を見る回数がいつもの何倍にもなっていた。
早く16時にならないかな……会いたい!
そう、今日はMaxがこの事務所へやってくる日だ。
チラチラ入り口をみたり、コーヒーブレイクがいてもより多かったりと、なんだかせわしない。
「お客さんが来られたら教えますので、仕事してください」
詩織さんからも怒られるがそれでも、心待ちにしているのは止められない。
15:52 事務所受付あたりがざわつく。
俺は自分の部屋を出て受付へ行くと、もうMaxが来ていた。Maxはいつもの黒づくめの服ではなく、デキル男のように紺色のスーツを着ていた。しかしワイシャツのボタンは相変わらず開けている…セクシーとしか言いようがない、色気がすごい!
女性社員が彼を取り囲んでいる。目がハートだ。
俺は慌ててMaxの横に行き、肩を抱き
「はいはい、失礼!彼は僕のクライアントだからね、
みんなは来なくていいから仕事しなさい!」
そう言ってMaxを連れて俺の部屋まで行った。
「詩織さん飲み物は僕の部屋のをあげるから大丈夫です。それよりも誰も入れないでください」
全く……Maxの色気のせいで大変だ……
これから相談なのにここまでに疲れる十維なのでした。
「なぜシャツのボタンを閉めないんですか?」
俺の部屋のソファに案内し最初に聞いた。
「なぜって……このシャツのボタンですか?気になりますか?
あまり閉める経験がないので、閉めると変な感じがするんですよね。閉めた方がいいですか?」
「僕の前は…… 僕だけなら開けてていいですけど、ここに来るまでは閉めててください……」
「何故ですか?」
何故……って……
やきもち焼くからなんて言えないよな……
「とにかくです。
さ、仕事の話をしましょう。まずはこちらに記入をお願いします。
飲み物は何を飲みます?コーヒー?紅茶?」
「ではコーヒーを。」
相談シートに記入してもらっている間にコーヒーメーカーのスイッチを入れる。
俺は向かいの席に座った。座るだけでドキドキしてしまう。
「綺麗な事務所ですね。
生まれて初めて弁護士事務所というところに入りましたよ。思ってた以上に綺麗な建物で内装も綺麗で驚きました。
はい、これ書けました」
コーヒーを淹れ、机に並べたら、Maxの書いたシートを見る。
Maxからの依頼はこうだ。
海外DJ(複数名)との契約に協力してほしい。彼らはみな国籍が違い、その国ごとに入国制限も条件も違うのでビザの所得にも難航している。
特に問題なのが、どうやら前科もちで、その償いの弁償金も滞納しており、出国自体の許可がとれない人がいた。
その人のことは諦めれば良いのでは?と思っても、その人が中心のため、他の連中が絶対条件で彼の参加を言ってきている。他の連中を説得するか、そいつを無事に日本へ入国させて欲しい
というものだった。
「これは、かなり大変な作業になるかと思います。希望通りにやれるかどうか……。
どう考えても全員を終えるまでは時間がかかります。宜しいですか?」
「もちろんです。一人一人でも僕は構いません、確かな契約をお願いします。」
「わかりました。
それではひとつひとつ詳しく伺いますね……」
俺はキチンと仕事モードでいつものように内容を確認していく。
この聞き取りだけで多くのことがわかってくる。
クラブシルキーの経営状態から、従業員のことなども。多くのことがみえてくるのだ。
聞き取り項目が多かったため、60分では足りなかった。
「すみません、時間が足りないようなので、この続きはまた明日にでも来てくれませんか?」
「僕は大丈夫ですが、先生は時間よろしいので?」
「はい、明日のこの時間も空けてますので大丈夫です!
これからは毎日この時間をできるだけ空けるようにしていきますので、よろしくお願いします」
「そうなんですね。すみません、時間取らせてしまって」
「いいんですよ!それが仕事ですから!
それでは、続きはまた明日に。
これからこんな感じで依頼解決までは多くの時間がかかると思います。
何度も何度も話を聞かせてもらいますがよろしくお願いします。土居誠さん。」
十維は、握手を求めた。Maxはすぐに手を出してくれた。
「よろしくお願いします」
「以上が仕事モードです。
さて、ここからはプライベートです。お時間はまだありますよね?」
「プライベート?なんですか?」
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