第10話 兄の思いと寧々の恋
十維が専務室に入ると、秘書たちは誰が十維と専務の朝陽にお茶を持っていくかのじゃんけんをする。
「朝陽、きたよー」
「おう、久しぶりだな。
お前まで急に寧々のところで生活するって言って、出て行くから家が一気に寂しくなったぞ。
で、どうしてる?2人だけの生活はどうなんだ?」
専務の朝陽は、十維の兄で高柳家の長男で、跡取り。今は本社にて社長の父の元、勉強している。
寧々の家での生活をしてから、早くも2ヶ月が経過したのだが、その間一度も実家には帰っていなかった。
「快適だよ。寧々が頼んだ若林の家の家政夫がうちにもきてて、寧々に家事を教えてるよ」
「なんだって?若林の家の?
そもそも、若林の社長とは会えたのか?家政婦を借りるくらい仲良くなってるなら、じゃ2人は?」
頼まれたこともすっかり忘れてしまうほど、引っ越し以来頭の中がMaxでいっぱいだった。
「若林の社長会えたよ。朝陽くらいの年齢かな?めちゃくちゃイケメンだった。細くて背も高くて、モデルか?くらいカッコよかった。
性格は、かなり地味にみえたな」
「そうか…で、寧々とはどんな感じだ?」
「寧々と?」
「向こうのお母さんが寧々とくっつけたい、というもっぱらの噂があるんだ。いい人で、寧々もいいなら問題ないと、父さん母さんとも話してる」
朝陽だって寧々に彼氏がいることは、もちろん知っている。
「やめろよ、なぁ朝陽、俺や寧々の恋愛は自由にさせてくれないか?
学校も仕事も、家族のこと、グループのことを思って選んだ。
だからせめて好きになる相手くらい自由にさせてくれよ」
「そりゃ好きな相手と幸せになれるならそれでいいさ。家、会社に迷惑かけないなら好きにすればいい。
だがな、寧々の今の彼氏は違うだろ。
彼はどうみても稼げそうにないやつだ。将来性が全く見えない。
寧々は俺たち兄弟の中で、唯一の女の子だ。俺もお前も寧々が大事なように、いや俺たち以上に親父は寧々が大事なんだ。
一生あいつが困らないような相手を選んであげることだって、家族の大事な務めじゃないのか?」
「朝陽、そうじゃないだろって……やはりお前とは……。
家のことを思って普通に見合い結婚したお前とは、分かり合えないな……」
呆れながらソファに座ると、秘書が、お茶運んできた。
「そもそも若林社長と寧々とは何も起きないよ。だって…………」
十維は、寧々と引っ越して来てからの若林家とのことを、思い返していた。
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