第7話 キスと危険な男と涙と……
十維はいつも以上に急ピッチで酒を呑む。
目の前にMaxがいてゴンちゃんがいて、3人で他愛無い話をしているいまの時間が楽しくて幸せで、夢のように感じていた。
「そろそろ帰ろうか、トーイ立てれる?帰れる?
もし無理そうならうちに泊まる?』
ゴンちゃんがいう。
いつもよりハイペースで飲んだ十維は、ほぼ意識がない。
「いいよ、隣だからオレが送るよ。大丈夫」
Maxが? Maxが僕をおくってくれるの?
今日は一緒に帰れるの?うれしい!
Maxは、完璧に酔っている十維を立ち上がらせ、自分の肩へと手を回し歩く。十維は、Maxの顔をベタベタ触りながらニヤける。
十維の身体は日々鍛えているのだが、Maxの胸板はもっと大きくて逞しかった。
何度もその胸板に抱かれるのを想像し、オナッていた十維は、やっと本物の胸板に触ることができて嬉しくて嬉しくてたまらない。十維の手はもう自制が効かず、ベタベタベタベタとMaxの顔や身体を触りまくる。
もうMaxに抱きついて離れない。
「ちょっとトーイ!あなた大丈夫?もうなにやってる
のよ!どうしちゃったのー?もう……
ごめんねMax。悪いけどトーイを頼んでいいの?普段こんなことならない人なのに。
どうしたんだろ……もう……
あ、タクシーがきたわ!」
なぜか、ゴンちゃんはオネェ口調になっている。
ゴンちゃんはうろたえていた。いつもは冷静沈着で、どんな人にナンパされても表情一つ崩さず対応している十維が、Maxの身体をベタベタ触り、ニヤけ顔が止まらないところをみて驚きが隠せない。
「それでは帰りましょう高柳先生」
Maxは、十維の肩を抱えて一緒にタクシーに乗った。
「高柳先生じゃなくて、トーイって呼んで!ね?まっくす……ぼくのことを、とーいって呼んで……」
なだめるように触りながらなんとか十維を、タクシーに乗せる。
「トーイったらほんと大丈夫?
それからMax、送ってくれるのはありがたいんだけど……その……」
「ゴン、今日は紹介してありがと、助かったよ。
あぁお前の言いたいことはわかってる、安心しろ。約束はキチンと守るさ。
明日はジム定休日だよな?明後日昼にまた行くよ。
じゃ運転手さん、ここまでおねがいします」
マンションに向かって走り始めるタクシー。
タクシーの行方を心配そうにじっとゴンちゃんはタクシーが見えなくなるまで見つめていた。
タクシーの中では十維は相変わらずMaxの顔や身体をベタベタ触り胸板の感触を確かめていた。
「まっくすさん……まっくすさん……
とーいってよんで……まっくすさーん……」
そんな十維に対して、なだめるように頭をヨシヨシするだけのMax。
タクシーはマンションにつき、眠ってしまった十維を抱えて降りる。さすがに夜なのでこの時間はコンシェルジュはいない。
玄関ホールを歩いているところで、十維は目を覚ます。
「歩ける?」
「うん」
Maxは十維をおろし、腕を支えながら歩く。
エレベーターに乗る。
ここでもMaxは十維を支えるだけで、それ以外何もしない。
これを逃したら、もうMaxさんに迫る
チャンスはないのかもしれない……
そんな考えが頭をよぎる。
十維は突然Maxにキスをする。舌を無理やり入れていく。
両腕はMaxの首後ろに回し、できる限り体を密着させ、舌を絡ませ音が響くようにキスをする。
Maxにその気になってほしくて必死で求めるように……
しかし、Maxの舌は絡まない。
Maxの手が、十維の両肩を掴み、十維を止めた……
……………
「ダメですよ、さ、帰りましょう」
「やだーー」
一度は離されたが、すぐまた十維はキスをしに迫る!
今度は顔を背けられて口にすら当たらない……
「かなり酔ってますね、ダメですよ。さ、家に入りましょう」
またしても止められ、離された、拒絶されたのだ
エレベーターが8階に到着する、2人は無言で降りる
十維はふらつきながらも、無言で自分の家に入っていった。
そして扉が閉まると同時に、急いで自分の部屋にいく。
ドアにもたれると同時に、涙が溢れてきた……
いつもたくさんの男とシてるのに!
なのに僕はダメなの?
僕は彼に受け入れてもらえないの?
彼らと僕は何が違うの?
マックス……
マックス……
僕は君のことこんなに好きなのに……
へたりこみ、泣きじゃくる。
十維はその日そのまま眠ってしまった。
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