第4話 リュカリュカちゃん誕生
里っちゃんから譲られる形だったけれど、問題なくプレイできると分かって一安心だ。
ホッと一息ついていると、アウラロウラさんが声を掛けてきた。
「さっそく『アザーアンドアナザーワールド(Other & Another World)』におけるあなたの
現在リアルの時間は午後九時。幸い、と言って良いものかは微妙なところだけど、特定の部活動に入っていないため明日の日曜日もほとんど丸一日自由にできる。
あらかじめ、今日の内にキャラクターの作成を終えていた方がゲームをプレイしやすいかもしれない。
「ええと、それじゃあお願いします」
「かしこまりました。ではまず、キャラクターの名前を決めてください。本作では一部、他のプレイヤーとの交流も行えるようになっていますので、リアルでの本名は避けていただいた方が無難だと思われます」
どこから身バレするか分からないものね。トラブルに巻き込まれないためには自衛が大事になるというのは、どこでも同じということらしい。
だけど、あまり奇をてらったものやキラキラし過ぎているものは避けておきたいものがある。
それに、ちゃんと自分の名前だと認識できるという点も大切だ。
そうすると、本名である
そして悩むこと数分。
「決めた!ボクの名前は『リュカリュカ』で!」
里香と優華でリュカ。二人だから繰り返してリュカリュカだ。
このゲームを始めるきっかけをくれた里っちゃんとの繋がりも感じられるので、個人的には満足のいく名前となった。
「なんだか私、死んじゃったみたいになってない?」
という里っちゃんのぼやきが聞こえたような気もするけれど、それはきっと幻聴のはず!
「リュカリュカさんですね。この名前はキャラクターメイキング終了時まではいつでも変更できますので、別の名前を思い付いた時にはおっしゃってください」
あうち!もしかして微妙に気合が空回り?
と、とにかく次に進みましょう。
「リュカリュカさんは初心者ということで基本的な部分から説明をさせていただきます。既にご存知の点がありましたら、その都度申し出ていただければ、スキップするようにいたしますので。また、外見については最後に決定することになりますのでご了承ください」
アウラロウラさんの言葉に頷くボク。RPGなんて小学生の時以来だし、VR型のゲームに至っては初めての経験だ。ここは多少面倒でも全て聞いておく方がいいだろうね。
「さて、まずはなんといってもキャラクターの土台となるステータスからです。『アザーアンドアナザーワールド(Other & Another World)』、通称『OAW』では〈筋力〉〈体力〉〈敏捷〉〈知性〉〈魔力〉〈運〉の六種類から成り立っています」
それぞれの詳しい説明は以下の通り。
〈筋力〉。
主に武器や素手による、俗にいう物理攻撃の値に関係している。この値が高いほど攻撃力が増すと考えて問題ないとのこと。
また、一定値を超えないと装備できない武器や防具も多いそうだ。
〈体力〉。
こちらは主に防御に関係したもので、これの十倍がキャラクターのHPとなる。
武器防具の装備条件となっていることが多い。
〈敏捷〉。
いわゆる素早さだけど、単純に早く動けるというものではなく、適切に体を動かすための能力という方が適当。
また、手先の器用さもこれに含まれ、生産職には必須の能力値。
〈知性〉。
賢さ。多種多彩な『技能』の習得や熟練度の上昇に関係している上、魔法を使用した際の効果にも影響あり。
生産職の必須能力、その二でもある。
〈魔力〉。
魔法の効果に関わる能力。これの五倍がキャラクターのMPとなる。魔法効果が上昇する一部装備品などの条件となっていることも。
〔錬金〕などの魔法が絡む生産技能の判定にも使用される。
〈運〉。
ラッキー、アンラッキーを数値化したもの。ゲーム内のほぼすべての行為にわずかながら関係している。行動の成否判定から技能の大成功確率に加え、魔物を倒した時のアイテムドロップの数や品質にも関わっているのだとか。
その影響範囲の広さと大きさから、他の能力値とは違ってレベルアップ時の手動能力値上昇ができなくなっているうえ、プレイ中は現在値を中心に常に上下数ポイント分変動しているという一風変わった能力値。
そして、キャラクターの初期値は各能力共に五ポイントであるとのこと。
つまり、HPは〈体力〉の十倍の五十が、MPは〈魔力〉の五倍の二十五が初期基本値ということになる。
「きわめて大雑把に言いますと、物理攻撃をメインとするなら筋力と体力を、魔法攻撃を主体とするなら知性と魔力を優先して上昇させていくようにすれば良いでしょう。また、生産を中心にプレイを楽しむのであれば敏捷と知性が必須能力となります」
運についてはボクたちプレイヤー側でどうこうできるものではないから、あまり思い悩まないことが一番らしい。
「ええと……、まんべんなく上げていくというのは?」
「どの能力値も高いに越したことはないので、最終的にはそれが理想ということになるとは思います。ですが、必然的に大器晩成型となるので特に序盤は苦労することになるかと。プレイヤーの方それぞれに好みなどがありますが、その点はやはり自己責任ということになってしまいますね」
いわゆる器用貧乏な状態になってしまうのだろう。
「ただ、どういった方面に成長させていくにしても、技能の習得や熟練度上昇に影響する知性はある程度伸ばしていくことをお勧めします」
各種行動の判定をする時に、関連する技能を持っていると成功率が大幅に上昇するのだとか。
例えば剣で攻撃した時、〔剣技〕を持っていれば攻撃力や命中率がアップするようになっている。さらに、各属性の魔法のように持っていなければ使用すること自体ができないものも多い。
そのため、ゲームを進めていく上で一番重要な点だとも言われているそうだ。
とはいえ、まだ自分のプレイスタイルが全然分かっていないから、成長の方向性も決めることができないかなあ……。
「それでは種族と職業を先に考えてみてはいかがでしょうか。種族によって初期能力値に変化がありますし、職業を決めれば大まかにでもどのように成長させるべきかが見えてくると思いますので」
ふみゅ……。
ここはアウラロウラさんのアドバイスに従うとしようか。
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