以外と酒飲みだったニャー助太郎

「オーガの群れが三〇体に一〇〇体以上か。こりゃあ大規模な討伐隊を送り込むしかねえなあ」


 そう話すのはゆうがおダンジョンのダンジョン管理組合長オルフェガ・トルデオさん。

 報告が報告だけに直に組合長まで通されました。


 さすがにオーガ一三〇体以上ですもんね、大規模討伐隊を送り込まないと勝てませんよね。


「本部から有力ダンジョン攻略者を集めて貰うか。今後の処理はこっちで行う、任務ご苦労であった」

「はーい」

「しかし、お前の猫ちゃん横に太いな」

「きつねですっ。でも太ってるのは確かですね。マナの供給量減らそうかな」

「太ってない太ってないニャ。これはマナをため込むためにエーテル変換してごにょごにょごにょ」


 なんかわめいてますがぷよぷよしているのは確かなので、食事制限(魔力を変換したマナの供給を減らす)させましょう。


 さて、組合長室を出て向かうは「ゆうがお広場」。地下三〇階層で取れた新鮮なお野菜、二五階層で取れた鉱石などが並んでいます。農家が直接持ってくる旅の駅みたいな感じですね。


「結構な金額を頂いたのでちょっとしたご飯作ろう。あとは……」

「魔導具の作成だニャ!」

「何でも入るビックポーチかバックパックでも作ろうかと思ってるよ。イガグリでグレネード取り出せなかったの大失敗だったからね」

「本当に死ななくて良かったニャ……」

「マナ食べられなくなるもんね」

「そうじゃニャイ!」


 こってり怒られたあと材料を買い漁って三階層にあるボロい我が家へと帰還。

 地上に近い所は貧民街に近いので治安も悪い。せめて一〇階層以下に住みたい所。ゆうがおダンジョン攻略したら次のダンジョンに引っ越すんだけどさ。


「新鮮なブヒ鶏とお野菜で作った炒め物は美味しいねえ」

「ワインが進むニャ」

「飼い主のワインだぞ自重しろ」

「ワーイーンー♪」


 以外と酒飲みだったニャー助太郎をよそに美味しい料理をついばんでゆきます。


 ブヒ鶏は鶏がブタになったような品種の動物で、大量生産が出来る鶏肉みたいでブタの甘みが感じられる食材。あまり手に入らないけど三〇階層にもいけば手に入るもんですな。

 階層ごとに季節が違うからいつでも初物が手に入る、新鮮トメィトゥと、新タマネェギィのパスタも大変美味でござった。ワインに合うね。


 ひとしきり食べて眠ったのちに、二日酔いの頭痛で起きながら魔導具制作へと向かう。

 いくら世界一の魔力があっても二日酔いには勝てない。


「それじゃあ、ビックポーチを作るね……いたたた」

「毒の入ったマナを流し込んで来るニャ。ニャーにまで毒が入ってくるニャ」

「二日酔いなんだからしょうがないでしょ。しかしタツキはザルね、いくらのんでも酔わない」

「ま、精霊ですしニャ」


 ぽん! と自慢のおなかを叩いてそう豪語するタツキ。

 ザル精霊はおいておいて、制作を始めましょう。


 まずは革に魔力を乗せて柔軟にします。細かく魔導回路を刻んだこともあり、強靱さも付与されてとっても良い仕上がりになったよん。これなら良いポーチを作れそうだ。


 そう、今回は大口のポーチを作ることにしました。まだ大きな荷物が必要じゃないし、寝る道具はタツキに背負わせれば良いしね。

 何でも入れられて、広い口に大きな深さとマチを持っていて出し入れしやすく、それでいてベルトで口を絞れるようにするんだーふんふんふーん。


 それでは内部に空間拡張を施していきましょう。同じように外側だけ加工した布を用意します。

 そしてそれの内側に空間拡張エンチャントを施すんですね。

 綺麗に回路を刻んだらひっくり返して、革のポーチの内側に貼り付けてから魔力を込める。ひっくり返さず先に魔力を込めると空間が拡張して吹っ飛ばされます。あのときは痛かったな。


「とりあえずだけどこんな感じかな。次の報酬で製作器具を更新したいなあ」

「イガグリならいくらでも入りそうな空間だけどニャ。完成祝いにホクホクの焼き栗はいかがですかニャ」

「おほー、食べる食べる」


 試着するまえに焼き栗に顔をほころばせる私であった。

 いや、ちゃんと試着して良い感じにセットしたからねっ!

 これは左側に取り付ける。ボールは右投げリロードは中折れだけど利き腕は左なんだよね。細かいものは左手で操作したい。


「あーあ、家に帰れば最高の制作道具があるんだけどなあ」

「そういえばなんで帰らないのニャ? クラリスとしての役目は終わってるんだよねニャ?」

「アイテムボックスがあれば家に帰れると思う。あれは家宝中の家宝だから持ち帰らずに帰ったら首をはねられると思う。実際に。絶対に。事実として」

「ハニャニャニャニャ……」


 クラリスは名称未確定の新ダンジョンを探索そして討伐している。しかも七〇階層をこえて。

 ゆうがおダンジョン三一階層で難儀している場合じゃないんだよね。

 討伐隊はよ報告はよ。


 討伐隊の報告を待ちながら錬金術の道具でも作ろうかな……大きなポーチも出来たしね。細かいアイテムは錬金術の出番だ。今は魔法でちょちょいのちょいだけど、くそっ。

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