058 フロッゲコ討伐

 現れた四体のフロッゲコのうち、一体はセフィリアが眉間を射抜いたおかげで撃破済み。二足歩行のカエルみたいな魔物であるフロッゲコは食べることが出来る魔物の一種だからできるだけ傷つけずに討伐したいところだ。とはいえ、食べるのは主に脚部と腹のあたりだから、頭部は容赦なく斬りつけるのだが。


「いくぞエリック、まずは一体だ!」


 俺の斬撃で仰け反ったフロッゲコの頭部をエリックがメイスでずどんと叩く。これで二体目!


「せりゃあ!!」


 蹴りから振り上げの二連撃でフロッゲコを浮かせたところに俺が首を切り裂く。倒れたフロッゲコが舌を出して絶命する。フロッゲコは舌に麻痺毒があるので、そこに気を付けなくっちゃならない。


「こっちも終わったわよ」


 最後の一体はセフィリアが魔法で処分していた。風魔法は切断力に優れているから、フロッゲコの舌ごと頭部を斬り落としていた。


「これで全部か」

「レックスさん、エリックさん、お疲れ様です」


 マリーが労いの言葉を掛けてくれる。セフィリアも軽く頷いているし、俺もエリックも特に怪我はしていない。


「いや、本当に助かったよ。いい手際だった」


 スランツさんが馬車から顔を出して言う。護衛の冒険者としては当然の仕事だとは思うが、それでも感謝の言葉をもらえるというのは素直に嬉しいものだな。


「いえいえ、俺たちも勉強になりますから。さて、フロッゲコの解体をするか。マリー、頼めるか?」

「もちろんです。血を洗い流すのでレックスさんの魔法で手伝ってもらえますか? お二人は周囲の警戒をお願いします」

「いいわよ」


 セフィリアがフロッゲコの眉間から引き抜いた矢を矢筒に戻さず、軽く跳躍して太目の枝に飛び移る。おー、身軽ぅとか思ったけど風魔法をうまく併用しているんだろうなぁ。


「まずはフロッゲコの皮を剥ぎます」


 首を落としたフロッゲコの首があった辺りからナイフを添わして皮をはぎ取る。水属性に耐性のある防具の素材になるらしく、これはこれで活用しがいがある。防具にせずとも水に強いのでテントの素材にもなるとか。なるほど、普通の冒険者はこういうのを使って雨をしのぐんだなぁ。


「フロッゲコは肉が美味しいので、なるべく傷付けないように解体します。今回は四体いるので、三体を私が処理しますね」

「じゃあ俺は残りの一体を解体するよ」


 マリーはナイフを使って手際よく皮を剥ぎ、肉を部位ごとに切り分ける。俺もそれに倣ってフロッゲコの解体に勤しむことにした。

 マリーにばかり頼ってはなぁと思い、魔物の解体を習い始めたのだがこれがなかなか難しい。多少失敗しても自分たちで食べる分だからと頑張ってみる。


「もも肉は脚の骨の付き方を想像しながら切り出してください。あ、内臓は捨てて大丈夫です。食べられませんから」


 ホルモンは無理らしい。それもそうか。もも肉は視力の低い人が裸眼で見たらめっちゃデカい鳥の手羽元に見えるかもしれない。形がそれっぽい。


「今回は三体あって、それもみんな同じ大きさだからちょうどいいですね。次に胴体の肉を切り分けます」


 マリーは手際よく皮を剥がしたフロッゲコの腹部を開き、中に入っている内臓を取り出す。俺はそこからちょっと目を逸らしつつ一番大きな骨を取ってナイフを当てる……のだが、なかなか切り込みが入らない。


「骨の付き方を見てください」


 マリーに言われて再度確認すると、確かに大きな骨に繋がる骨にナイフが当たっていた。俺が一体に苦戦しているうちにマリーは三体とも解体してしまった。


「スランツさん、今夜はフロッゲコを焼いて食べましょう。腹の肉の方がいいですね」


 残った血を水魔法で洗い流す。ついでにセフィリアが風魔法で臭いを散らしてくれた。この後ここに血の臭いで魔物が集まることはないだろう。

 取り敢えず俺のストレージに肉を仕舞って、再びピンキッシュホースを歩かせ始めた。

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ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~ 楠富 つかさ @tomitsukasa

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