041 VSクイックリザード

 本来はルーセイドとの中継地点となるサトン村だが、俺たちはマイホームのおかげで拠点いらず。ということは、寄り道だってし放題だ。


「今日こそクイックリザードを倒すぞ」


 フレッサやスタル村を流れる川の別の水系となる川、その一部が池のように広がっている部分がサトン村のちょっと北西にある。というわけでそこに住み着いているクイックリザードを倒すべく、俺たちは進んでいる。もちろん、ファンギーゾルもまだ討伐数が少ないから遭遇し次第狩っている。


「ファンギーゾルはかれこれ八体か。もうちょっとで依頼達成だな」


 ファンギーゾルの討伐証明部位は尻尾だし、クイックリザードも尻尾だという。ギルドで買い取ってもらえるの素材としては、ファンギーゾルは牙でクイックリザードは皮と眼球だという。眼球は錬金術の素材として使えるらしい。


「……なぁ、あれじゃないか?」


 茂みの中で保護色になる濃い緑色の皮に覆われた四足歩行のトカゲっぽい魔物。セフィリアにも確認してもらうが、どうやらあれがクイックリザードらしい。大きさは思っていたより大きくない。ワニくらいを想像していたが、1メートルあるかどうかあやしいくらいのサイズ感だ。皮はウロコ感のあるテクスチャで、ツルツルというよりはザラザラしていそうだ。


「……風の精霊よ、我らに加速の加護をたれさせたまえ――クィックネス!」


 セフィリアに加速の補助魔術をかけてもらって、俺たちは駆け出す。クイックリザードは警戒心が強い魔物らしく、遠距離攻撃で先制すると逃げ出してしまうことが多いらしい。なので今回は先手必勝で一気に距離を詰めて、こちらから仕掛けることにした。

 俺が先行しマリーが続く。皮が買い取り品になるってことは、あまり無暗に斬らない方がいいだろう。そう思って、大上段から突き刺すように頭部を狙う。しかし剣の形状として刺し貫くのはうまくいかず、クイックリザードが身をよじりながらこちらを向く。俺が一旦バックステップで距離を空けたところに、マリーが駆け込んできて剣を振り上げる。クイックリザードの顎から脳天へと刃が滑り、クイックリザードは絶命した。


「マリーの剣、今……光ってなかったか?」

「はい、魔力を込めた剣技ですから。アッパースラストっていいます」


 下から斬り上げることで次の剣技へと繋ぎやすい初級の技らしい。ゲームみたいだなって思わずにはいられないが、いわゆる剣技とか俺も使う盾技みたいな武技は、魔力を放つ都合で出し切った後に身体がつんのめる技後硬直というものがあるようだ。要求される魔力量の少ない初級の技ならほぼないが、大技を使えばその分隙を晒すことになるから、注意して戦わねばならないらしい。


「確か依頼では五体討伐だよな? けっこう時間かかるかもだな」

「そうね、クイックリザードには私の弓もあまり通用しないし、ここはクイックリザードを狙いつつもファンギーゾルをあと二体倒したらサトン村へ行くのがいいかもしれないわね」

「なるほど、取り敢えずそうするか」


 森での狩りはもう少しだけ続きそうだ。まぁ、ほどほどのタイミングでお昼休憩は取るだろうけど。それまでにレベルも上がっているといいのだがなぁ。

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