039 サトン村へ

 フレッサを出発した俺たち。時折襲ってくるフォークバードを撃破しつつ、狙うはファンギーゾルだ。イタチのような細長いボディは短足ということもあって、草むらでは見つけるのが難しい。ファンギーゾルが潜んでいそうな場所を重点的に探しながら、街道を進む。


「レックスさんももちろんそうなんですけど、セフィリアさんのおかげで、視野が広がった気がするんですよね」


 先頭に俺、真ん中にセフィリア、そして後ろにマリーという並びで進む中、マリーがそんなことを言いだした。


「両親の様子を誰かに頼んでみてもらうとか、全然考えになかったですし、それに……私自身の将来のことも。とにかく両親のためにお金をっていうのが先にあったので、お二人と旅をするのがすごく嬉しいです」

「ふふ、マリーは本当に素直で可愛いわね。私はただ、年長者として言うべきことを言っただけよ」


 セフィリアの視線は前方の俺に注がれている。……いつかはマリーと深い仲になりたいとは思っているけど、取り敢えずそれはまだだ。マリーは分かってくれているが、セフィリアはどうだろうか。

 とはいえ、そんなことを悠長に考えている場合でもないのだが。


「ファンギーゾル3体発見、構えて」


 こちらに気付いたファンギーゾルは、一直線に突進してくる。前方の敵に対しては俺を正面に左後ろにマリー、右後ろにセフィリアという三角形のフォーメーションで対応する。セフィリアが矢を射って一匹撃破すると、突進してきた一匹を盾で左方向にいなして、マリーが剣で倒す。そして最後の一匹は俺が剣で倒す。ファンギーゾルは、等級としては六級だが群れで生活する魔物らしく大群となると五級や四級の冒険者で殲滅するらしい。


「囲まれないように気を付けないとな」

「えぇ。それにこの辺りはフォークバードだけでなくてストームイーグルが出没する可能性があるから注意ね。風魔術を使う三級魔物よ」


 あのエッグベアーと同じ等級か。なるほど、今の俺たちじゃ勝ち目はないな。頭上も足元も気を付けつつ進まないとならないな。

 その後、スライムやワイルドボアを撃破しつつ先頭をマリーに交代する。それからまたしばらく進み、茂みに入ると急にマリーが立ち止まった。


「どうした?」


 俺とセフィリアは身構えるが、マリーは音の方に目を向けていた。ガサガサッと音を立てながら、突如そいつは現れた。


「ひぃ!!」


 マリーはその姿を見ると声を上げた。

 現れたのは、体長2メートルはありそうな巨大なフクロウのような魔物だった。だがそいつは翼の代わりにムキムキな腕が生えていたのだ。

 全身が真っ黒な毛で覆われていて、一見するとクマのような獣なのに、口は鳥のくちばし。気持ち悪さに身体が一瞬だけ硬直するが、剣を抜いて集中力を高める。ここは一先ず鑑定だ。


名前:なし

種族:ランドオウル

職業:なし

Lv:13

HP:673/680

MP:120/127

攻撃力:39

防御力:42

素早さ:40

魔法力:28

精神力:31

器用さ:50

アクティブスキル:爪術(下)

パッシブスキル:風耐性(序) 毒耐性(序)


「ランドオウルは正面から戦うと危ないわ! 背後を取るのよ!」


 セフィリアが矢を番えながら叫ぶ。俺はあえて正面で対峙し、マリーに後ろから攻撃するよう伝える。マリーは素早く反応し、ランドオウルの背後に駆け出す。ランドオウルもマリーに狙いを定めたのか、身体をひねろうとするが、俺がそうはさせない。視線が俺から外れた瞬間、全力で斬りつける。

 ゲームで言うところのヘイト管理だが、これがうまくいったようで、ひねった身体を戻す勢いで爪を振るってくる。そこに盾を叩きつけるように合わせる。

 魔力を込めて発動するアクティブスキルの盾技、スマッシュパリィだ。


「今だ!!」


 ランドオウルがつんのめった隙にマリーが勢いよく剣を振り下ろす。さらにセフィリアが二本の矢を放つ。目や喉の近くという急所っぽい場所に矢がヒットし、俺が振り上げた剣でとうとうランドオウルは倒れ伏した。


「それなりに珍しい魔物よ。まだ若い個体だったのかしら、本当はもっと強くて危ないのだけれど。なにはともあれ幸運ね。……少し倒し方が荒っぽいけど、値はつくんじゃないかしら」


 立派だった爪のうち片手分は、俺のスマッシュパリィのせいでボロボロになってしまっている。背中にも正面にも斬撃の痕があって、毛皮に値段がつくかは怪しいようだ。その辺りはまあ、命優先なので仕方ないということにしておこう。


「サトン村まであとどれくらいだ?」

「今日中には着くけど、着いても夜ね。休むなら今からがいいんじゃないかしら。明朝早く出発すれば昼には到着するはずよ」


 セフィリアがそう言うし、夕方ちょっと手前くらいの時間だが今日は休むことにした。


「さて、マイホーム!!」

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