025 フレッサの街に到着
フレッサの街を囲う外壁が見え始めた。異世界ものでよくあるような円形の街っぽい。まぁ。川が流れている関係もあって、完全に囲まれているわけじゃなさそうだが。
「ここがフレッサの街? ……なんか思っていたよりも大きいのね」
セフィリアはどうやらフレッサの街に初めてきたらしい。まぁ、当然俺もなのだが。
「確かに。それに門番がいるな」
「あ、しまった……そうだった……」
「どうしたマリー?」
街に入る人の列に並び始めた途端にマリーががっくりと項垂れ始めた。どうやら冒険者ギルドや商人ギルドに登録していない人、もしくはフレッサの街で生まれた人でない場合、街に入るのに通行税が取られるらしい。その額、大銅貨1枚。今の俺たちにはけっこう重い金額だ。挙句、冒険者の登録にも銅貨1枚が必要らしい。俺としては商人ギルドにも登録したいのだが……そっちはなんと小銀貨1枚かかるらしい。そんなことしたら我々の所持金はなくなってしまう。
「取り敢えず入ったら冒険者ギルドに登録して、今ある素材を売却するとしよう。それなりにお金になるといいのだが……」
「冒険者登録ねぇ……依頼を確か一か月やらないと抹消されるのよね」
セフィリアが冒険者登録に対して渋い反応をする。
「ハーフエルフからすれば一か月なんてあっという間に過ぎてしまうから、十五年くらい前に登録していた頃、すぐに抹消されてしまったわ。正直、都度都度大銅貨1枚は手間なのよね」
セフィリアのハーフエルフらしい感想に俺は笑うばかりだった。そんなことをしているうちに俺たちの順番になり、マリーはギルドカードを提示して、俺とセフィリアは大銅貨1枚を支払った。
「なにはともあれ、無事にフレッサの街に到着だ。ギルドはどこだ?」
「門をくぐってすぐ左です。普通は大型の魔物を討伐してそのまま持ってくることもあるので、門から近くにギルドはあるんです。緊急時に門を守りやすいですし」
なるほど。この国では正規軍人以外に冒険者が魔物の襲撃に備えて控えているってわけか。ちゃんとした門こそあれど、堀とか塀はないし、防衛力はやはり人力なんだなぁ。
「さ、ギルドはここですよ」
マリーに案内されてたどり着いた建物は、木の看板に『フレッサの冒険者ギルド』と書かれただけのシンプルなものだった。
「さっそく中に入りましょう!」
「おう!」
「ええ!」
意気揚々と扉を開けるマリーの後に続く。建物の中は広く、テーブルがいくつか並んでいる。正面奥にあるカウンターは混雑しており、俺たちは素材買い取りの列に並ぶことにした。キョロキョロと周囲を見渡すが、なんというか想像通りの異世界の冒険者ギルドだ。依頼を貼ったボードがあったり、冒険者が昼から酒を飲み交わしていたり、なんというか本当に想像通り過ぎて笑ってしまいそうだった。まぁ、変に笑うとなんか輩に絡まれそうだから我慢したけど。
しばらく並んで待っていると俺たちの番になった。受付嬢は二十歳そこそこの女性だった。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あぁ、素材の買い取りと冒険者としての登録が二人分、いいかな?」
「はい、承っております。まずこちらにお名前をお願いします」
用紙に名前を書く。文字は読めるが、書くのは初めてだ。まぁ、なんとか書けたけど。言語の加護に感謝感謝だ。
「レックスさんは商家出身とのことでしたが、文字の読み書きができるのですね」
「あぁ、一応ね」
俺とセフィリアが書いた紙を手渡すと、
「では登録のカードをおつくりします。少し時間がかかるので、その間に素材の検分をさせていただきます。この木札を持って奥の倉庫へどうぞ。戻りましたらまた受付に声をかけてください」
どうやらちゃんと分業が出来ているらしい。俺たちは受け取った木札を手に、奥の倉庫へと進むことにした。
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