第3話 新事実発覚!!

「何でしょうか?」


 呼び止めた白が口を開く……だが、待てよ……俺は今から白を飯に誘おうと思っている


 だが、俺を怖がらないから仲良くなれそうだなんて理由で評判が悪い俺に誘われたって白からしたら迷惑でしかないか……やっぱりやめておこう



「いや、何でもない」


「そうですか、では」


 白は軽く頭を下げて部室を出る



 俺はその後、行きつけのラーメン屋に寄ってから帰った




 ◆◆


 次の日、俺はゲームセンターに来ていた


 近所にあるこの店では、毎月の第三土曜日にだけ一部の台の設定が甘くなるキャンペーンを開催しているからだ


「あれは……」


 店内を歩いていると見覚えのある背中が見えたため声をかける


「よお」


「先輩、こんにちは」


 まさかゲーセンにいるとは……驚いたな、


 白は休日ということもあり、私服だった寒色系の地味な服だがおとなしめの白によく似合っていた



「お前も一人か?」


「違います」


 白は白髪に赤い目と奇抜な容姿をしているが、顔は整っている


 つまり――


「男か?」


「……はい」


 まさか二度も驚かされるとは思っていなかった


 俺の予想どうり男がいたみたいだが、彼氏なら白のいじめを知らなかったわけじゃないはずだ


 だとすれば知っていて放置していたことになる


 いずれにしても、ろくな奴ではなさそうだな――などと考えていると



「おねいちゃーん!一人でトイレにいってこれたよ!」


「……弟がいたのか」


「はい、弟の彰です」


 何だ、弟と一緒に出かけていた訳か……


 しかし、弟の割には彰は白とは違い髪の色も目の色も普通だった



「彰、あいさつして」


「あきらです!おにいちゃんはだれ?」


「白と同じ学校に通っている半田だ」


「そうなんだー」


 返答する彰の視線は既に近くにある美少女フィギュアが景品のクレームゲームに移っていた


「あれ、欲しい!」


 彰は目を輝かせながら台のガラスに張り付く、


 驚いた……既にこの年で美少女フィギュアに興味があるとは……


「キッズスペースに戻るよ」


 白が強引に併設されているキッズスペースに彰を連れ戻そうと引き離すと、


 ガラスには彰の顔と手の跡がくっきりと付いていた


 無理やり離された彰は下を向いて動かない



「……一回で取れなかった諦めてね」


 しばらくして、折れた白が財布から小銭を取り出して台に向かう


「うん!」


 彰の目に輝きが戻った


 幸いにも今から白がプレイする台はキャンペーンで設定が甘くなっている、一度で取ることも不可能ではない



「おねいちゃーん!がんばってー!!!」


 彰は全身で必死に応援している


 その甲斐あってか、うまくリングに引っ掛かりクレーンが箱を持ち上げる――が


「あっ、、……行こう彰」


 景品は落ちなかった


 白が彰の手を引っ張る、彰も流石に諦めたのか渋々ついて行った



 それにしても、この年で美少女フィギュアか……


「何でそんなに欲しいんだ?」


「……にてるから」


「誰に?」


「おねいちゃんに」


 まあ……言われてみると、髪色こそ違うが赤い目や顔つきはどことなく白に似ていた


 とはいえ、美少女フィギュアなだけあってまあまあエロい……


 幼児が手にしない方が良さそうなのは間違いない


「ひとりでいえにいるの……さみしい」


「一人でって、親はいないのか?」


「……うん、」


「親とは別居していて、二人で住んでいるんです」


 横にいる白はそれが当然のことのように言った


「……そうか」


 つまり、彰は平日にほとんど一人で居る寂しさを紛らわす為に、姉によく似た人形を欲しているということか……


 それにしても――


「ずいぶん仲がいいんだな」


「昔から弟の面倒は私が見ていましたから」


「昔から……そうだったのか……来い」



 俺は財布から小銭を取り出してさっきの台に向かいプレイを始める


「こういう台はリングの後ろに引っ掛かけて取るんだ……ほら、取れた……やるよ」


「ぼくがもらっていいの!?」


「受け取れません……彰、先輩に返して」


「えーやだ」


「我儘言わないの、早く先輩に返して」


「おいおい、譲るとは言ったが……タダでとは言っていないぞ」



 俺は彰と同じ目線までしゃがみ込む


「俺と一つ約束しろ、彰――二人で暮らしているんだろ?白のこと、大切にしろ――約束出来るか?」


「できる!」


 人は支えあわなければ生きていけない


 それが二人だけならなおさらだ



「先輩、本当にいただいてもいいんですか?」


「ああ、」


「ありがとうございます」


「ありがとう!おにいちゃん!」


「おう……またな」



 その日の俺は、佐藤兄弟と別れた後ゲーセンを回って帰る――はずだった

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