萩市立地球防衛軍☆KAC2023その⑥【アンラッキー7編】
暗黒星雲
第1話 七つの不幸と遭遇した黒猫さん【前編】
ここは萩市笠山の地下格納庫である。整備中の人型機動兵器を眺めている一人の男がいた。彼はコウ・エクリプス少尉。通称黒猫である。
「ひでえなあ……」
彼の愛機、純白のゼクローザスは泥とほこりにまみれ、美しい装甲も傷だらけになっていた。
「あのアバズレ……もう少し丁寧に扱えってんだ。こいつは皇室の式典用なんだぞ。いわば陛下の手駒だってのに。少しは遠慮しろよ……」
アバズレとはウーサル・ビアンカ中尉の事だ。彼女は防衛軍にあっては黒猫の上官であり基本的に逆らえない。先日、ビアンカは自身の専用機を全損させた。未確認攻勢生物を倒すために使用した必殺技が災いし、機体がガタガタになったのだ。それ以降、彼女は黒猫の機体を勝手に持ち出して戦闘していた。
「あんなのが上官ってのは不幸だよな……早く寿退官しろって……」
自分は女運が悪い。
自分の人生は色々と不幸が続いている。
黒猫の偽りない心情である。
不幸の始まりはあの子ぎつねと出会った時からだろうか。
黒猫はその子ぎつねとの出会いを思い出した。
故郷のラメル王国と帝国との国境地帯であるオクス山地での出来事だった。そこでは魔物が出現し道行く人を惑わせていた。ラメル王国軍が出動したのだが手を焼き、アルマ帝国より帝都防衛騎士団が派遣された。それは帝都防衛騎士団の筆頭であるハーゲン・クロイツ大尉と新任の黒猫だった。
魔物とクロイツ大尉のゼクローザスが対峙する。その時の魔物はクロイツ大尉のゼクローザスとそっくりそのままの姿で出現したのだが、姿だけを真似した偽物は本物に敵うはずもなく撃破された。
そこで捕まったのはフェイスと名乗る子ぎつねだった。彼は大地の女神クレドの眷属であり聖地を汚す敵を懲らしめていると主張していたのだが。
「馬鹿者!」
クロイツ大尉にゲンコツを貰ったフェイスは泣きながら謝罪をしていた。そして彼は不吉な予言をした。
「大尉はこの先いばらの道を歩まれるでしょう。しかしそれは帝国の危機を救う英雄としての務めです」
子供の戯言とでも思ったのか、クロイツ大尉はその話を笑いながら聞き流していた。そしてフェイスは黒猫に向かって別の予言をした。
「准尉は不幸体質ですね。その不幸から逃れる為には大尉と別れなければいけません」
その言葉にムッとした黒猫はフェイスにゲンコツを食らわせた。
「それはどういう意味だ? このド阿呆。大尉が英雄なら俺は傍で手助けする。それが当然だろうが」
「あなたの希望がどうあれ、女神様からの
二度と悪戯はしないと約束したフェイスは無罪放免となった。そしてこの、女神クレドの予言が黒猫の不幸の始まりとなる。
【続く】
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