第33話 保存食?いえおつまみです

 山菜やキノコが採れると分かって、俺達の食の楽しみが増えてから数日。


 俺達は家で、お酒を飲んでいた。


「うーん! この世界のウイスキーも美味しいのあるんだなぁ」


「このような高価なお酒、私が飲んでもよろしいのでしょうか……」


「イリア、気にしないの。ジョージさん色々やってお金稼いでるんだから、ここは感謝だけしとけば良いのよ」


「ははは、アイギスさんの言う通り! これくらいはなんて事ないさぁ!」


「あ、ありがとうございます」


「しかし、あれだな……おつまみが欲しい!」


「え? 十分過ぎる料理があるけど?」


「確かに! イリアが作る料理はめっちゃ美味しい! でも、ジャンクなおつまみも欲しいのよ!」


「ありがとうございます。その、じゃんくな?おつまみとは何でしょうか?」


「ずばり……燻製だな!」


「燻製って?」


「うーん、干し肉とかを燻すんだよ。何だっけな……ナラ、桜、くるみ、リンゴとかのチップ……あー、木のカケラで燻すと、香りがついてお酒に合うんだよ」


「へぇ……面倒ね。干し肉でいいじゃない」


「確かに、干し肉も良いおつまみだけどね? あれはかなりしょっぱいじゃん? 塩じゃなくてタレに漬けてから乾燥させて、チップで燻すと……お酒が進んじゃうおつまみが出来るんだよ。ま、長期保存は出来ないと思うけどさ」


 各種お肉、ゆで卵、チーズ、ウインナー……あぁ、考えるだけで涎がッ。


「ご主人様、それは煙臭いだけなのでは?」


「あー、鼻の良いイリアには、合わないかも? うーん、燻す時間を短くしてやればいけるかな……ま、やってみないと何とも言えないな」


「そうでございますか……」


「煙の臭いに気をつけて外でやるから、そこは安心してね」


「もうやる気なのね。なら、明日商業ギルドに木の事を聞きに行ったら?」


「え? あるの?」


「あるんじゃない? 木材関係も商業ギルドでしょうし」


「そっか。なら明日行ってくるよ!」



 そして次の日、俺は商業ギルドへ向かった。

 受付で、燻製の話をすると、個室へ案内され、詳細を話すことになった。

 色んな木が燻製に使える可能性があること、また色々な木のチップをブレンドしてもよいこと、塩やタレに長時間漬け込んで、塩抜きして味を調整し乾燥させ燻製すること、香りが落ち着くまで時間が必要で氷魔法が必要かもしれないこと、長期保存には向かない可能性があること、燻製に必要な器具などの話した。

 商業ギルドでも、燻製を研究してみたいという話になった。

 もし上手くいけば、燻製商品の売上の1%を俺に支払ってくれるようだ。

 

 おぉ! ぜひ上手く行って色々な燻製商品が出来ることを期待だな!


 こうしてワクワクウキウキの俺は、桜の木材を購入して帰宅した。




 そう帰宅してしまった……器具も食材もないじゃん!


 帰宅してすぐに出かける俺を、2人は首を傾げながら見送ってくれました。


 商店街などを回って、牛のような赤み肉(レッドブルって魔物らしい)と調味料、木の板や防錆加工(付与魔法らしい)がされた網、小さなフライパン、蝶番、釘、太めのハリガネなどを購入して、再度帰宅。


 木の板で底が無い箱を作って、前面は下が30センチほどすきまが出来るように板を短くして、蝶番で開くようにした。中は、網が2段に入るように板を細く切って両サイドが凸になるように打ち付けた。

 ハリガネで、小さなフライパンを乗せて、下から炙れるような物を作成し簡易燻製器完成。

 

 タレを作り、買ってきた肉を薄切りにして、漬け込む。

 冷蔵庫なんて無いから、なんとなく涼しい所で、2時間くらい放置。

 その間に、桜の木材をナイフで削って、せっせとチップ作り。

 2時間漬け込んだ肉を取り出して、生活魔法の乾燥とついでに浄化をかける。

 簡易燻製器を畑の隅へ持って行き、乾燥させた物を網に並べて、簡易燻製器の中へ。

 下部のフライパンにチップを入れて、小さなファイアボールでフライパンを熱するように魔法を発動させる。目指せ弱火!

 最初は前面を開けて、煙が出ているか確認。

 煙が出てきたら前面を閉めて、15分から20分燻製する。


 おぉぉぉ!

 訓練じゃぁぁぁ!

 魔法を維持してぇぇ安定させてぇぇ……

 

「ねぇジョージさん、魔道具のコンロ使わないの?」


 魔道具のコンロ……カセットコンロみたいなやつだね。

 丁度、この簡易燻製器の下の部分に入りそうですね。


 でもねアイギスさん……。


「それは15分前に聞きたかったなぁ……」


 

 何はともあれ完成!


 今回は香りが強いとイリアがダメかもしれないから、前面を開けて、香りが落ち着くまで放置。


 しばらく経った後、ジャーキーを取り出して確認する。


「うーん! 良い感じ! そこまで香りが強いわけじゃなく、ほのかに桜チップの甘い香りがついてるな。味は……うん、まぁまぁかな。タレを研究する必要ありだな」


 アイギスさんにも渡して試食してもらう。


「ふーん、コレが燻製……あ、良い香りする。味は……うん!十分美味しいよ!」


「それなら良かった。燻製奥が深くてさ、チップやタレで、変わるんだよ。だから、これから色々試して美味しいの探していこうか」


「それいいわね! 私たちが好きな燻製探しましょ!」



 今回出来たジャーキーは、イリアとテマリも美味しいそうに食べてくれた。

 

 こうして、俺達は休日や暇な時に色々な食べ物を燻製にする趣味が出来た。

 イリアは燻製する時に辛そうにしていたので、俺かアイギスさんがするようになった。

 イリアは、そのことに申し訳なさそうにしていたが、種族的なことはしょうがないと俺とアイギスさんは笑顔で答えた。


 色々試して食べていくうちに、ゆで卵、ジャーキー、ベーコン、チーズ、サーモンのような魚の燻製が、俺達の燻製おつまみのお気に入りとなった。





————————————

燻製は奥が深いですね。

このお話では、良い感じに加熱されていて、良い感じに香り付けがされたと思っていただければと思います。m(_ _)m

ソミュール液や塩抜き、熱燻や冷燻、漬け込み時間など、色々省略しております。

魔法で乾燥ってチートですよね……。

冬場に色々試して上手くいかずに、食材乾燥器買ったら、理想のジャーキー1回で出来て、心が折れた記憶が蘇ります。


今回も、お読みいただきありがとうございます!


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