第30話 植物の栄養剤という名の肥料

 帰宅した後、アイギスさんは買ってきた苗や種を持って畑へ向かった。

 畝を作って買って来たモノを植えるようだ。

 俺は、植物の栄養剤なるものを錬金術で作れるように研究する事にした。


 まずは店舗にいるイリアに声をかけ、お客さんが来たか確認すると、まったく来ていないことが分かった。

 それなら今日は閉めちゃってもいいかなと思い、イリアに、錬金術の研究するから閉店にして良いよと伝えた。

 イリアは表の看板をクローズにしてから、家事や掃除が残っていたので早めの閉店は助かりますと言って、尻尾をゆらゆら揺らしながら2階へ上がっていった。


 そうだよな。

 イリアに家のことお願いしてるから、ずっと店番してもらうと、負担になっちゃうよな。

 うーん、お客さんあまり来ないなら、朝の数時間だけ開店して、緊急の場合のみ対応する形にしたほうが負担が少ないかもな。

 それに、ギルドに卸してるから、お金の心配もないからね。

 営業時間の看板作成の件とあわせて、夕飯の時にでも、話をしておこう。


 俺は錬金部屋に入り、植物の栄養剤について研究する。

 まずは、マジックポーチから、購入してきたモノを取り出して考える。 

【調べる】の結果を信じるならば、この植物の栄養剤っていうのは肥料ってことになるよな。

 あとは買って来たチッソ、リンサン、カリウムって商品が本当に単体の肥料かを調べて、比率を考えて配合すればいいと思うんだけどな。


 それぞれの肥料に【調べる】を使ってみると、本当に単体の肥料だった。

 単体にする方が難しいんじゃね?って思ったけど、この世界、魔道具や魔法などがあるからな……ヒノモトには、勇者が居たってこともあるし、何かしらの科学的なものもあるのかもしれない。

 ま、今はあるものはありがたく使わせてもらおう。


 単体の商品は、大きな麻袋に入っていて、内側は何かで加工されており、空気を通さない様になっていた。

 もしこれらを植物の栄養剤にした場合、何十袋も作ることが出来そうだ。

 あとは、配合比率だけど……分からんな。

 まぁ、1:1:1でやってみるか。

 でも、効果を確かめるのに2・3日かかるのはなぁ……。

 ん? 待てよ、液体肥料なら効果は早いかも?


 早速、1:1:1で配合して、飲み水生成で水を出して、混ぜてみた。

 作ったものを持って畑へ。


 畑に来てみると、アイギスさんは畝を作り終え、苗や種を植えているところだった。


「アイギスさん、早いね! もうすぐ終わりそうじゃん」


「えぇ……ジョージさん何持ってきたの?」


「これ? これは試作品の植物の栄養剤だね。何か実験に使っても大丈夫な植物無い?」


「うーん、それなら、薬草とか生えるから、それに使ってみれば?」


「え、薬草生えてんの?」


「ほらそこ」


 そう言ってアイギスさんは、雑草が生い茂る畑を指差した。


「……あ、確かにあるね」


「でしょ? まぁ少し草取りしなきゃだけどね。私も作業が終わったら手伝うよ」


「お! ありがと! なら少しでも進めとく」


 俺は、草取りの準備をして、草取りを開始した。

 しばらくすると、アイギスさんの作業も終わり、手伝ってくれた。

 そこからは、あっという間に終わった。

 雑草以外にも、毒消し草とシソがあったので、それは残しておいた。


 アイギスさんにお礼を言って、早速作ってきた液体肥料(仮)を薬草にあたえてみた。


「え!? ジョージさん、これって……」


「……いや、俺もビックリだわ。って、あぁ〜」


 効果は、物凄かった。

 液体肥料(仮)をあたえると、みるみるうちに薬草が大きく茂っていき花が咲き……そして枯れた。


「……枯れちゃったよ?」


「そうだね……」


 うーん、効果が強過ぎたのか?

 確か肥料のあげ過ぎも良くなかったような気がする。

 もっと薄めてみる必要があるのかも。

 もしくは……ポーションで薄めてみるか?


 その後、数日に渡り色々試してみたが、液体肥料(仮)を少量、その量の10倍ほどの水で薄めて、ポーションを少し加えた物が、植物が元気になるが育ってしまわない丁度良い分量だということが分かった。与える量としては、ポーションの小瓶と同じ量で良さそうだ。


 完成した液体肥料をポーションの小瓶に入れて、商業ギルドへ登録し、種苗店へ向かい、液体肥料の効果の実演や説明をして、定期的な単体肥料の購入と液体肥料の売却の契約を結んだ。

 効果をみた店員さんは、驚き、そして、これであの商会に……と呟きニヤッとしていたのが印象に残った。

 

 その後、家に戻り、みんなで畑を眺めがらお茶にした。

 この数日のうちに畑は整えられており、俺の方の畑には、薬草、毒消し草、シソ、各種ハーブ、ヤマイモ、ジャガイモ、サツマイモなどを植えてある。

 

 畑の奥には民家が建っているが、木の柵で区切られている。

 その木の柵の内側には、何本かの樹木が植えられており、そのうち何本かの樹木は花が咲いている。

 

 長閑な風景を、空いている木箱を持ってきて腰掛け、イリアに入れてもらった紅茶を飲みながら、俺達はゆっくりした時間を過ごした。

 テマリはアイギスさんの膝の上で、すやすやと眠っていた。







———————————

※肥料の配合比率は適当です。

異世界ご都合主義ということで、魔力的な何かということでよろしくお願い致します。

m(_ _)m

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