第22話 クラン対抗戦で勝つには:いざ中級ゾーンへ

 クラン対抗戦まで1ヶ月。


 今日から新宿ダンジョン中級ゾーンに挑む。


 中級ゾーンは第8階層からで魔物の平均レベルは18〜40と幅が大きい。


 また、魔物の種類も多種多様だ。


 地形も変化する。


 平地、沼地、湿地など土地によって異なる魔物や素材が採れたりする。


 8階層は平地で魔物は『アルミラージ』と呼ばれるウサギだ。


 しかもこれが可愛いのだ。


 一部のモフラーが熱狂するのも頷ける。


 角があるのが特徴で、突進と跳躍スキルを駆使して攻撃してくる。


 俺らのパーティーには盾役タンクが居ないため、かなり対処が難しい。


 現状、1番楽に倒すにはゴブメジによる魔法での戦闘方法であろう。


 しかし、それでは意味がない。


 未知なる相手に立ち向かう力を育むため、戦闘方法を模索させる。


 美咲は、『付与』で身体能力を向上させ、突進に耐えた所を倒すという意見。


 穂乃果は新たに手に入れた『召喚』でバット蝙蝠を召喚し、スキル『超音波』で動きを止める方法。


 友美も新たに手に入れた『投擲』で突進に合わせて石を投げ、角を粉砕する方法。


 今持っている自分の力を最大限活用して倒す方法を模索していた。


 「美咲の案は、悪くはないが危険だし今回はなしだな」


 「……はい」


 「落ち込む必要はないぞ。付与は強力なスキルだからな」


 『付与』の秘めている力は凄まじい。


 非戦闘スキルは大器晩成型が多く、初めは苦戦するのが一般的だ。


 上位スキルになる頃には戦闘狂になっている可能性も十分にある。


 美咲に限ってそうなって欲しくはないが……。


 「穂乃果と友美の案はどちらでも可能だな。ただ、バットの超音波が通じるかわからない以上、今回は友美の案でいこう」


 ちなみにバット蝙蝠のステータスは以下の通りだ。


 ――――――――――――――――――


【名前】コモリ(召喚獣)


【種族】バット


【レベル】1


【HP】10/10


【MP】12/12


【固有スキル】−


【スキル】

・超音波Lv.1

     

――――――――――――――――――


 弱い。


 召喚スキルを手に入れた人は最初にこの子を駆使してダンジョンに潜る必要がある。


 レベルが上がればある程度戦えるようになるが、召喚獣のレベル上げには魔石が必要になる。


 その為、寄生必須スキルとして敬遠されているのも事実だ。


 このことから、レベル1のバットの超音波がレベル18以上の魔物に通用するとも考えにくいので、美咲が『付与』魔法をかけ、友美が『投擲』、一応『超音波』をかけつつ、倒していくという結果になった。


 このように、自分達で戦闘方法を考え、自分達で決めるという工程はクラン対抗戦でとても大切になってくる。


 美咲と友美は来週、高校を卒業し、冒険者1本で生きていくこととなっている。


 お金は動画配信や生配信でいわゆる“スパチャ”である程度稼げるようになってきている。


 非戦闘スキルが日の目を浴びる日も近づいてきたのではないか……。


 メンバーの様子を見ながら、嬉しい気持ちが溢れ出てきた。

 

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