B級映画の社会学(大阪 新世界国際劇場で知る激情)V.2.1

@MasatoHiraguri

第1話 はじめに

  大阪・通天閣の近くにある「新世界国際劇場」とは、B級映画専門の映画館。

  それはステレオタイプ(紋切り型)のA級映画では語れない真実を映し出す鏡。

  それも、ドキュメンタリーという生々しい手法ではなく、面白おかしい・時には狂気とも見えるバカバカしいストーリー仕立てで、社会や歴史の真実を語ろうとする。

  「柔らかな大阪弁という衣に包んで、真実をずけずけ言う大阪人」というイメージそのままの映画が「B級映画」なのです。


  訳のわからないストーリー、チャチなホラー映像、下手くそな演技という衣の下には、痛烈な社会批判・これまで語られてきた偽の歴史観への激情強固な批判精神が隠されている。

  新聞やテレビというマスメディアによって信じ込まされてきた、ありきたりで通り一遍の社会常識や歴史観をベースにして作られた映画が「A級」ならば、そういった既存の常識をぶち壊さんとする激しい問題意識(激情)を元に作られるのがB級映画なのです。

  2023年2月現在の日本、「A級」の新聞・テレビでは、いまだに「超危険な伝染病」というステレオタイプの情報をベースにしたコロナ関係の記事やニュースを牛の涎(よだれ)の如くにダラダラと垂れ流していますが、週刊大衆や週刊ポスト・女性○○といった幾つかの週刊誌では「コロナ・ワクチンの弊害」「政治家や医療関係者の利権の塊」といった、A級では決して触れることのない、もう一つの真実に果敢に光を当てています。

「BはAの下・劣る」という意味ではなく、Aという地点からは見えない重要な真実を、Bという異なる地点(視点)から論じているのですが、これこそジャーナリズムの原点・役割といえるでしょう。

  それと同じスタンス(姿勢)で、社会における様々な問題に(文字ではなく映画という物語・娯楽によって)光を当てよう(世に知らしめよう)というのがB級映画なのです。

  B級映画の制作費とは、一般的なA級映画の10~100分の1程度ですが(中国やインド映画の中には百数十億円の制作費、といった作品もある)、面白おかしい・バカバカしいストーリーの中に真実を追究しようという制作者たちの強い意気込み・激情は、A級映画の資本力を凌駕しています。

  「世界で一番美しいのはシンデレラ」と、ハッキリもの申す鏡の如く、「Aクラス」では俎上に載せられないような社会問題をバンバン取り上げ、大国(強国)の都合のいいようにねつ造された歴史認識を粉々に打ち砕く(中国映画「1950 鋼の第7中隊」、インド映画「RRR」)。私のような「B級人間」にしてみれば「世の中にはまともな見方をする情熱的な人(映画人)が、まだまだ存在するのだ」と、勇気づけられます。


  もちろん、商業映画として成立させる為に、様々な偽装脚本・迷彩演出によって映画制作者の真意を気づかれないようにしているので、映画に描かれた狂気と正気の境目を、自分自身の理性と感性で見つけ出して楽しむ必要があります。

  しかし、それはまた、映画評論家や有名人から与えられたステレオタイプの価値観という色眼鏡で満足するA級映画にはない、手作りの映画鑑賞ができるということでもあるのです。


  まあ、社会問題云々というよりも、その映画を作った監督やプロデューサーのオツムに問題があるのではないかという「超」問題作も3本立てのなかには多々ありますが(3本全部はずれ、ということも)、そこは「3本1,000円」という超良心的な拝観料と、オカマさんをガールハントするオッサンたちという、劇場(激情)番外編なるサプライズ(おまけ)も時折ありますので、映画館を出る時に「損をした」という気持ちになったことは一度もありません。

  このB級映画を、私というB級人間がいかに味わったかを述べようというのがこの本の趣旨なのですが、それがB級映画の狂気なのかB級人間の妄想なのかを判断するのは、あなた自身なのです。

2023年2月22日

V.2.1

平栗雅人




  








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