第31話 両津柑橘の異予感

塵芥の中で五文字の詠唱

好敵手:芥川雷蔵と言う超短編小説家。

一般的な短編小説の規定は

「下限4,000文字」「上限40,000文字」と見聞きしたが

雷蔵さんのそれは表題8文字、本文5文字だったりする。

「表題:」今夜の月のように「本文:」夜だね。

非常に潔し、これでお終い。

おそらく、カクヨムには籍を置いていないのだろう。

某投稿サイトで激突してしまった二人。

 僕はそれ程因縁を持っていなかったが、

彼の敵意は見上げたものだった。敵ながら天晴だ!


 雷蔵さんは面白い作品を書く作家さんだ。

令嬢にストーカー扮する雷蔵さんがラヴレターを送るのだが

令嬢が蕩ける程に甘美で熱い文面になっている設定。

令嬢の親父さんは怒ってその手紙を破ろうとするも

端々に見える文章を見て「こやつは天才か?」と。


 ストーカー気取ってるけど、文才は神域と言う

新しいタイプのアンチヒーローを生み出した

新進気鋭の天才作家。その飛ぶ鳥を落とす勢いの雷蔵さんが

何故、5文字作文を?

 予測し得る大きな二つの理由としては、

一.某投稿サイトのシステムの網の目を不正に潜ろうとしたから。

二.天才ストーカーみたいな名文は二度と書けないと腐ったから。

 終わったことを蒸し返して莫迦みたいだが

コンビニエンスストアで飲み物買っている時に、

ふと「芥川雷蔵」の名前が脳裏に過ぎった。

ドリンクコーナー左手側の雑誌類に「雷」の刻印があったような。

 雷蔵さんは頭ごなしに、僕の作品はつまらないとけなして来た。

どの作品のどの描き方が気に喰わなかったか

克明に綴ってくれたら、僕達に友情は芽生えたかも知れない。

少なくとも僕は、天才ストーカーを先だって読んでいたから

超短編小説家の彼に一目置いていた。

 エゴサーチは甘美だが、危険な行為。心を喰われるな!

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