第5話 マグマ魔人を凍らせろ!

「姫さま!凄い!お見事でした」


 死力を尽くしていただけに立ってられなくなってしまい、倒れそうになったところをひょうが駆け寄ってきてくれ支えてくれた。


「ひょう、そっちは大丈夫だったの?」


 私の問いかけにひょうはある方向を指差した。


 指差した方向に目を向けると、そこには氷の像と化したステゴサウルス姿のカークスの姿があった。


「流石ね。ひょう、一つお願い聞いてくれる?」


 私は赤く染まった弾丸を回収してくるようお願いした。


「どうするんですか?」


「少しでも血液取り戻しておかないと私死んじゃうわ」


「OKです。任せて下さい」


 そう言うとひょうは異空間の扉を開き、赤い弾丸が転がっている場所と目の前の場所を繋げどんどん回収し始める。


「そんなことできるの!」


 無数に転がっている弾丸を拾って回らせることに少し抵抗を感じながらお願いしたのだが、まさかそんな方法を使って瞬時に回収をすることができるとは。


 回収してもらった血液を使い自分の体を回復させる。


「さっきより顔色良くなりましたね」


「ありがとう、あなたのお陰よ」


「!!」


 その時、カークスの氷にヒビが入った!





 姫さま達と別れた私は移動魔法を使い支柱の上空に到着すると、支柱の下から絶え間なくマグマが噴き出している状態だった。


「凍結魔法!」


 凍結魔法を使い支柱周辺のマグマを一気に薙ぎ払う。


 薙ぎ払い支柱に近寄りオーラを込めようと思い、手を差し向けた瞬間、急に異質なオーラが立ち上った。


『我、この支柱を破壊するものなり、我の謀を邪魔する貴様は何者か?我の謀を妨害する邪悪なるものよ、我の高熱により溶解せよ!』


『ディザーブ!』


 マグマが竜巻のような形になり襲いかかってくる!


 真っ赤に染め上がった旋風のような、火災旋風のようなものが襲いかかってくる!


 とてつもないレベルのオーラが感じられる。あんなのに巻き込まれたら私の体なんて一瞬で蒸発させられてしまうことだろう。


 移動魔法を使い交わすと、また同じくディザーブを放ってきた!


 移動魔法を使い再び交わすとまたディザーブを放ってくる。このままではいつかあのマグマ旋風の餌食になってしまう。


 私は覚悟を決めディザーブに向かい凍結魔法を放った。


「!!」


 ダメだった。私の凍結魔法なんて一瞬で消滅させられてしまった。


 あの魔法を封じなくては私に勝ち目はないだろう。


 この場にはマグマは無限にある。封じなければ際限なく放ってこれることだろう。


 私の凍結魔法は瞬時に消滅させられてしまうのに、凍らせて封じる方法なんてあるのだろうか?



「サディ、じゃあ異空間に行って凍結魔法の練習してみようか」


 あれは私がひょうに凍結魔法の使い方をレクチャーしてもらっている時だった。うまく凍結魔法を使いこなすことができない私に、いきなりそんなことを言ってきた。


「異空間?異空間に行くと凍結魔法を使えるようになるの?」


「使えるようになる訳ではないけど、使いやすくなるのは確か」


 ??


 何でもひょうの話では異空間には空気が存在しないので、水などの物質は凍結しやすいのだとか。


 普段私達は空気のある空間で生活している。


 そのため空気の存在なんて意識して生活なんてしてないが、空気がある空間には空気圧というものがあるということになるのだとか。


 空気により圧力がかかっているため水は蒸発しにくくなっているが、圧力が低い状態では蒸発しやすくなり、蒸発する時に熱を奪うのでより低い温度で凍結するようになるのだとか。


 なので空気が存在する空間より、空気の無い異空間の方が少しのオーラで物質は凍結するようになり、そこで凍結魔法のコツを掴めば習得しやすいのではと提案してきていたのだった。


 お陰で私は凍結魔法を習得することができたのだ。


 それにひょうはウラガーンの暴風魔法を消し去った時、暴風魔法が海からエネルギーを補給できないようにするために海の表面を氷で覆った。


 覆うことにより上昇する気流の流れが抑えられ、暴風魔法は威力を弱めることとなった。


 この場はマグマに覆われている。マグマの高熱により、空気は温められ上昇する気流が生み出されている。


 旋風のように渦を巻き上げ襲ってくるマグマ魔人の使うディザーブも、似たような原理からきているものなのかもしれないと思った。


 考えていても仕方がない。とりあえずやってみよう。


 この周辺一帯を氷で覆い、上昇する気流の流れを止め、マグマ魔人を氷の壁で囲って空気を抜いて空気圧の無い状態にすれば、私でもアイツを凍結させることができるかもしれない。


『ディザーブ』


 マグマ魔人はバカの一つ覚えのようにマグマ旋風を放ってくる。私は移動魔法を使って交わしながらマグマ魔人の足元に向かって凍結魔法を放つ。


 マグマ地帯と化しているため当然1回放ったくらいでは氷は広がらない。何度も放ってやった。何度も何度も放ってやった。


 私が近づいて凍結魔法を放つたびにディザーブを放たれたが、交わし続け、集中力を切らさないようにしながら凍結魔法を繰り返す。


「!!」


 なんかディザーブの威力が弱くなっている気がする!


 やはり足元を氷で覆っていっているためマグマからエネルギーを得られなくなってきているのだろうか?


 今しかないと思った。


「氷壁魔法!」


 氷の壁で四方八方を覆うと風魔法を使い、空気をこの場から消し去った。


「喰らえー!とーけつー、ま、ほー!」

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