第14話 再起
虚な目をした人々が沙漠に立てられたぞんざいな柵の中を蠢いている。
人々の腕や額には刺青があった。
社会の崩壊に従って罪を得るものが増え、通常の牢獄では捌き切れなくなっていた。
良民に対してさえまともな対応がなされないのだから、罪人に対しては推して知るべしである。
雑に立てた露天の牢獄に放り込み、飯もそれでもはじめは日に一回は来ていたのがもう来ない。
この中の罪人達は先に斃れた罪人の骸を食べて命をつないでいるのだ。
一人の罪人がいつもと変わらない絶望の景色を眺めていると、地平線の彼方にぽつりと煙が巻き起こった。
砂塵を巻き上げて近づいてきたのは、馬に乗った一団だった。
「俺の名は
罪人たちの目に光が宿り、柵に向かって殺到した。
石勒が
「よし、この調子でサクサク行くぞ。
ことの起こりは数日前に遡る。
◇
「もうお終いだ。店仕舞いだよ」
石勒は汲桑の肩をぐいぐい押しながら言う。
「なぁにしょぼくれてやがるんだよ、お頭!これは天の配剤?采配?えっと、とにかく良い機会なんだよ」
「何がいい機会なもんか。散々に負ける、
言い返す汲桑に石勒は譲らない。
「公師藩の何がそんなに重要なんだ」
「俺たちの頭領だ。それが死んだんだぞ!」
石勒は笑い出した。
「そうさ!公師藩は死んだ!他の幹部連中も行方が知れねぇ!だから……あんたが公師藩軍の頭だ!」
汲桑は目を見開いた。
「それは……そうか。そうなのか。いや、しかし、司馬穎様が亡くなっているのに、どうやって軍を立て直す」
石勒はとぼけた顔をして、淡々と語る。
「俺は薄情な蛮族の出だからわかんねぇけどよ。お偉い漢人様は、仇討ちとかしないと面目が立たねぇもんなんじゃないの」
◇
「そこでこの棺というわけか……しかし、棺を盗み出すなど、いつか仏罰がくだりますぞ」
「おい、いつまでも手合わせてないで手伝ってくれや」
月明かりに照らされた墓地の中に声が響く。
墓掘りにも使う道具だけあってか、進みが早い。
桃豹も負けじと土を掻き出す。
しばらくすると目的の物が土中から現れた。
「出たっ!よっしゃあ」
「かつては王として勢威を奮った者の……末路がこれか。諸行無常。南無三」
とても王のものとは思われない粗末な木の棺であった。
念のため桃豹が中身を改める。
「俺はこいつの巡幸に出くわして、銭を投げてもらったことがある。間違いない。気前のいいあんちゃんだったが、可哀想にな」
棺を車に乗せた二人は石勒の下へと急いだ。
石勒の働きによって
各地で解放した囚人たちを合わせると、その規模はかつての公師藩軍を超える規模となっていた。
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