第5話 九州国立博物館へ
九州国立博物館は太宰府天満宮の隣にあり「アクセストンネル」でつながっている。
そこまで歩いてゆく間にも素敵な所がたくさん。
6月下旬、花ざかりの菖蒲池が目を引く。
あちこちの水面から茎を伸ばして花咲く姿は、そういうものだと知っていても、美しくも不思議な感じがする。
周りを歩くのも良いし、池の内側へ迫り出した桟橋のようなものの上に立つと、菖蒲の花に囲まれて楽しい。
「如水の井戸」は、黒田官兵衛が滞在していた時に使っていた井戸。日本の戦国時代に軍師というものは存在しなかった説もあるけれど、いまでもイメージ的には天才軍師だ。
この福岡の礎を築いた人物のひとり。
ここはもしかして頭良い人が集まる所?!
私が平均点をガクっと下げに来ましたよ。
翌々年(2017年)に見に行きたい刀、へし切長谷部の歴史上の持ち主でもある。
「来年貴方の愛刀を観に行きます」
と決意を新たにした。
曲水の庭は平安時代に梅花宴が催され、いまの元号「令和」のゆかりの場所。
この元号のはじまりの頃ニュースで太宰府天満宮のことが話題になるたびに、楽しい旅行のことを思い出していた。
唯一ザンネンなのは、なぜか「宝物殿」の中を拝見しなかったこと。
なぜ入場しなかったのか思い出せない。
やがてトンネルが見えてくる。内部はタイムマシンを思わせるSFめいた雰囲気。
上りエスカレーターでトンネルを抜けたらそこは……右に近未来的な巨大建造物、左に山の緑がいっぺんに視界に入る、非日常の世界。あれが九州国立博物館だ。
私が歩いている地面は広々としたテラスのようになっている。左は崖、こちら側には崖に面した手すりに沿って、蓮の植えられたプランターがずっと向こうの方まで並んでいる。
しばらくベンチに腰掛け、水を飲みながら景色を眺めていた。
崖の下から山のふもとの間には草木が生い茂る盆地。
まるで、舗装されたこちら側は現代、崖の向こう側は古代のような趣きがある。
今にもどこかの竪穴式住居から竈の煙が立ちのぼって来そうだ(竪穴式住居はありません)。
この光景を後から思い出そうとすると、なぜか「崖下にも蓮が群生していた」と錯覚してしまう。
実際には蓮は地上のプランターに植えてあるので、大ぶりの花を真近に見ることができ、極楽浄土にいるような気分だった。
崖下の盆地は遊歩道に囲まれている。
後で歩いてみようかな。
さあ、九州国立博物館に入ろう。
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