✪ ストーリーライン ✪

▪ プロローグ。母を喪い、引き取られた祖父の家。

 少年は与えられた部屋に戻る途中、祖父が『年に三万ポンドかけての厄介払い』をしようとしていると誰かが話しているのを聞いてしまう。

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▪ ロンドンのとある寮制学校ボーディング スクール。ウィロウズハウスの二人部屋をひとりで使っていたルーカス・ダミアン・ルイス・ブランデンブルク(ルカ)は、今日から君のルームメイトだと編入生のセオドア・ルシアン・レオン・ヴァレンタイン(テディ)を紹介される。

 季節外れなものまで詰めこんだ大荷物を持ってやってきたその編入生は、人見知りが酷い、無口でおとなしそうな美少年だった。

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▪ 学校案内をしたあと一緒に食堂へ行くと、ヴァレンタインはルカから離れ、ぽつりとひとりで隅のテーブルに着く。

 すると良家の御曹司が多いオークスハウスの生徒がトレーを持って移動し、ヴァレンタインを取り囲んだ。にやにやと厭な笑みを浮かべているコネリーとマコーミックがヴァレンタインの髪を引っ張るのを見て、思わず声をあげるルカ。

 隙を見て同じテーブルにやってきたヴァレンタインに、ルカは同じ寮の同級生、トビーとデックスを紹介する。

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▪ 親がおらず、フルネームのなかに中国人の姓のスペルがあるという理由で、ヴァレンタインが苛めのターゲットにされるかもと、ルカは上級生シックスフォーマー監督生プリフェクトのミルズと、同じく監督生で寮長ハウスリーダーのルーカスに忠告を受ける。

 ルカが既にそういうことがあったと云うと、問題はそれだけではなく祖父や使用人、出生にもあるようだという話に。

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▪ ミルズの部屋から戻ると、ヴァレンタインがルカのデスクの傍にいた。ルカは思わず文句を云おうとしたが、CDが気になったとわかり音楽の話に。

 やっとまともに口を利いたルームメイト、テディが自分と音楽の趣味がほぼ同じと知り、ルカはすっかり上機嫌になる。

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▪ ハーフターム休暇ホリデイ中、従叔母いとこおばにあたるクレアの家で世話になるテディ。ホストファミリーであるラングフォード家にはテディより四歳下の息子ダニーと、夫のデニスが住んでいた。

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▪ ミルズとルーカスが云っていたとおり、テディは体育でのバスケットボールの最中、酷いラフプレーや嫌がらせを受ける。が、自分よりも躰が大きいマコーミックに向かっていくテディを見て、ルカは驚く。

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▪ ゾンビーズのアルバムを聴きながら、ルカはテディからこれまでにも何度も転校し、そのたびに苛められたことや、親はいないという話を聞く。

 祖父や使用人にも疎まれているようだという話をミルズたちから聞いていたルカは、たったひとりのテディにシンパシーを感じ「これから、もしなにか困ったことがあったら俺を頼ってくれ。俺は、おまえがなにか困ってたら必ずたすける」という言葉をかける。

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▪ テディは偽の呼びだしに騙され、コネリーとマコーミックから報復されそうに。が、ルカが気づいてトビーとデックスも一緒に駆けつける。

 テディは何故かバスケットのときにやり返した気概もなく、すっかりおびえきっていた。

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▪ 夜中に魘されていたテディ。ルカはこっそりと寮を抜けだし、散歩に行こうとテディを誘う。

 するとちょうどミルズが外から戻ってきて、ふたりは咄嗟に物陰に隠れる。誰かとキスしているところを目撃して驚くふたり。

 その夜、ルカはテディにキスをする夢をみる。激しく動揺しつつも、恋を自覚するルカ。

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▪ 外出日に連れだってロンドンの繁華街へ出かけるルカたち。途中でテディがはぐれ、ルカはきっと中華街チャイナタウンへ行ったんだと捜しに行く。

 無事にテディをみつけたルカ。だが泣いていたテディに顔を隠すように寄りかかられ、ルカは動揺し思わず突き放してしまう。

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▪ テディはすっかり自分を避けるようになり、ルカはそのことをミルズに相談に行く。ルカがルームメイトに恋していることを見抜いたミルズは、暇潰し半分に云うべきことを云えとけしかける。

 一緒に行ってやると楽しげに云うミルズとルカが部屋に戻ると、テディが鎮痛剤を乱用して眠りこんでいた。急いで水を飲ませて吐かせ、ミルズは死んでいたかもしれないぞとテディに説教し、残りの薬も取りあげる。

 が、テディは死んだって悲しむ者など誰もいないと云う。その言葉にショックを受けたルカは、突き放したことを謝り、想いを告白する。

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▪ マナーハウスを利用した人気のサマースクールに参加したルカとテディ。

 学校にはいない女の子たちに群がられ、なにやら浮かれている様子のルカに、テディは苛つく。それがヤキモチだと気づいたルカは、友達以上になれるのかと確かめるように、テディにキスをする。

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▪ 想いが届いたと、初めての恋に舞いあがっているルカ。ふたりきりになるたびチャンスだとキスを繰り返し、部屋に戻ると浮かれて踊りだす始末。

 若さゆえ、反応を示した自身を恥じて隠そうとするルカ。先にシャワーを浴びるとごまかしてバスルームに逃げこむが、テディは一緒に入ろうと思って、と裸でバスルームに現れる。

 自分の前に跪くテディがなにをしようとしているのか気づき、ルカは驚いてテディを突き飛ばす。よろこんでくれると思ったと云うテディに、ルカはそんな経験があったんだとショックを受け、バスルームを飛びだす。

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▪ もやもやした気分で屋敷内を彷徨うルカ。するといつも群がっている女の子たちのひとり、マーシャがついてきた。ルカはテディのことで頭をいっぱいにしたまま、代用するようにマーシャと初体験をする。

 サマースクールが終わり、バスに乗りこむ前。連絡先のメモを渡そうとするマーシャに、連絡する気はないから要らないと云うルカ。ショックを受けたマーシャにルカは最低と罵られ、頬をひっぱたかれる。

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▪ 夏の休暇の残りをラングフォード家で過ごすテディ。勧められるままシードルを飲んだテディは酔いつぶれて眠ってしまう。

 なにかが触れたような擽ったさに、ソファで目を覚ましたテディ。起こしてしまったか、と謝るデニスに付き添われ、テディはファーストフロア二階の部屋に戻る。

 鏡を見ると、シャツが大きくはだけられていてぎょっとする。その瞬間、テディは目が覚める直前、胸許を這っていた手の感触を思いだしたのだった。

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▪ 新年度。ルカとテディはY1010年生、寮には新入生が入ってきていた。

 ルカは叔母のイヴリンに焼いてもらったケーキを土産に、テディに謝ろうと考えていた。眠っていたテディを起こそうとしていたところ、部屋を間違えてドアを開けた新入生に見られる。

 テディとは無事に仲直りし、ほっとするルカ。

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▪ 「怖そうな先輩カップル」の噂を聞いた新入生、ジェシ。ジェシは、それが入寮した日に見たふたりのことだと気づき、興味を惹かれる。

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▪ 試験を控え、進路の話をしたルカとテディ。

 ルカはテディに、同じ大学へ進んで一緒に暮らそうと、あらためてプロポーズのような言葉を伝える。

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▪ ハーフターム休暇。ダニーのあとからバスルームを使っていたテディ。シャワーを浴びている最中、いきなりドアを開けてデニスが顔をだす。

 硬直してしまったテディに、ボディソープがもうなかったのを思いだしたとボトルを差しだすデニス。テディは裸を隠すこともできず手を伸ばしてそれを受け取り、デニスのねっとりとした視線を感じ、先日の手の感触も気の所為などではなかったのだと確信する。

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▪ 朝まったく起きられないテディ。朝の点呼で監督生のミルズに寝坊の原因を訊かれ、テディはなかなか眠れないのだと答える。

 以前取りあげた薬のなかから、睡眠薬だけでも返してほしいとテディに頼まれ、ミルズは習慣にならないよう、一錠ずつわたすことに。

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▪ 忘れ物をして寮に戻ったミルズ。階段から下りてきたテディとすれ違う。

 だが部屋のある階より上から現れたテディを不審に思い、捕まえるとポケットから取りあげた薬の束が。

 呆れたミルズは説教をしなければと、自室にテディを引っ張り込む。

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▪ ふてぶてしい態度のテディに罰を与えようと、ミルズは部屋にあったケインを手に取る。尻を何度か打っているうちに加虐心が煽られ、ミルズはテディの腕を引き、続きはあっちでとベッドを指す。

 いやだと必死に抵抗しながら、口でするからゆるしてと云ってくるテディに眉をひそめるミルズ。

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▪ 教室に現れないテディのことが妙に気にかかるルカ。授業もまったく頭に入らず、教室を飛びだしてテディを捜しにいく。

 寮に戻ってみると上から物音がし、駆けつけるとミルズがテディを襲おうとしていた。ルカは思わず拳を固めてミルズを吹っ飛ばし、滅茶苦茶に殴る。

 半狂乱状態で自分を殴るルカに憐れみを感じるミルズ。

 ルカが純な想いを捧げるほどの相手じゃない、テディは見かけどおりの可哀想なみなしごなんかじゃない。そしてなにより、テディはルカに惚れてはいない。ミルズはそれをルカに伝えてやろうと思ったが、できないまま絶交される。

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▪ クリスマス休暇。テディはクレアの買い物に付き合ったあと、ルカと自分のために、色違いのマグを買う。

 クリスマスディナーのあと、ダニーとふたりでクレアが泊まりがけで実家へ。デニスとふたり残され、部屋に籠もるテディ。だがノックの音に驚き、持っていたプレゼントの紙袋を落としたテディは動揺し、巧く言い包めようとしながら迫るデニスにベッドに押し倒されてしまう。

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▪ 鎮痛剤を乱用し、ぼうっとしていたテディは教室から追いだされ、ふらふらと校庭を歩いていた。そして偶々みつけた外への脱出手段となっている樹を登り、外へ出る。

 そこには先に外に出ていたオークス寮の上級生、ジェレミーとロブがいた。煙草を買いに出ていたというふたりはテディに声をかけ、ひとつ違うものが混じっていたと煙草をくれる。

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▪ 『ハムレット』の劇のため、オフィーリア役を投票で決めることに。

 三人の候補のなか、テディはほぼ全員一致で票を集めるが、もっとも美しいのは誰かというコンテストではないと指摘した教師によって役を免れる。

 マコーミックはこのとき、女装姿のテディに恋をしてしまう。

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▪ 誕生日の夜。テディはルカからイニシャル入りのチャームと十字架クロスがついたペンダントをプレゼントされる。そして約束したからと初めて躰を重ねようとするが、テディは襲われたときの記憶がフラッシュバックして、ルカの愛情に応えられない。

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▪ 噂の先輩が今いるとわかり、ジェシは音楽室を覗く。そこにいたルカもテディも、噂のように怖くなどなく、気さくに話をし、ピアノも聴かせてくれる。

 ルカが弾いた、クラシックではない知らない曲に衝撃を受けるジェシ。

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▪ 休暇中はもはやお決まりのようにデニスに性行為を強要され、テディは次第に薬物に依存していく。ジェレミーたちと一緒に過ごす時間も増え、授業はさぼりがち、勉強にも身が入らないテディに、ルカはとうとう怒りを露わにする。

 ちょっときつく云いすぎたかとルカが気にしていると、テディが謝ってくる。そして、見棄てないでと縋るテディが自分をルカのものにしてと云い、ルカはやっと愛する者と結ばれた歓びのなかで朝を迎える。

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▪ テディはジェレミーのところへ行かなくなり、ルカと仲睦まじく過ごしていた。

 イースター休暇が始まり、ルカは次の夏はうちでホームステイできるように頼んでみると云う。迎えが来てルカと別れたあと、テディは近づいてくるデニスの車を見て表情を失う。

 デニスは立ち寄ったホテルに部屋をとり、抵抗するテディをまたも暴行。ルカからもらったペンダントの鎖も切れてしまう。

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▪ またジェレミーの部屋に入り浸るようになったテディ。咳止めシロップとウイスキーを炭酸飲料で割った特製ドリンクに酔い、授業をすっぽかすテディにルカはもうじき試験なんだぞと注意をする。が、謝りもせずふてぶてしい態度をとるテディに、ルカは呆れかえる。

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▪ 劇の当日。『ハムレット』でクローディアスを演じたマコーミックは出番を終えたあと、劇を観に来なかったテディの姿をみかけて跡を尾ける。

 草の上に寝転がっていたテディが蛇に噛まれたのかと勘違いして近づく。するとテディはマコーミックの恋心を見抜き、自分を抱きたくないかと誘いをかける。

 その言い種にマコーミックは幻滅し、その場を去る。

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▪ テディと仲直りしないまま、休暇でブリストルの家に帰ってきたルカ。叔母のイヴリンに話を聞いてもらっているうち、テディがなにか悩んでいるとしたら頼れるのは自分しかいない、助けてやらなければとあらためて考える。

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▪ 寮の部屋に戻り、またもや薬を飲んでいるテディを介抱して話をするルカ。もう一緒の大学に進むのは諦めたように話すテディに、ルカは学校をやめてでも一緒にいると云う。が、テディはジェレミーのことが好きになったのだ、だからもう一緒にはいられないとルカを突き放そうとする。

 だが革紐に付け替えられたペンダントトップを見て、ルカはそれが嘘だと見抜く。泣きじゃくるテディを抱きしめ、ルカはもう今度こそ大丈夫だ、これでふたりの仲が揺らぐことはないと信じる。

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▪ 試験も終わり、夏の休暇を過ごすためルカと一緒にブリストルの家にやってきたテディ。ルカの双子の妹たちと、たくさんいる犬や猫たち、そして気さくな家族のいる明るい家庭に、テディは自分の育ちとの違いを強く感じる。

 ルカの母、アドリアーナの意向でフィリップという家庭教師が呼ばれ、ふたりは朝、一緒に勉強することに。だがテディは、フィリップが不自然な立ち位置でルカに触れていることに気づく。

 フィリップは自分には目もくれず、ルカを狙っているのだと確信したテディ。そんなテディの様子がおかしいと気づき、イヴリンは話を聞きだす。

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▪ 来てもらう先生を変えたから、今日はお勉強はお休みだと伝えにきたアドリアーナ。テディは驚き、話を聞くが「親が子供を信じるのも、危険から護るのも当然のこと」という言葉にショックを受ける。

 自分の母とはぜんぜん違うと、昔のことを思いだしていたテディは熱をだし、ふらついて階段から落ちてしまう。

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▪ 寮に戻ってくると、試験結果がよくなかったこともありテディはますます情緒不安定気味に。ふらりと姿を消したテディを、ルカはまたジェレミーのところかと捜しに行くことに。

 オークス寮に入れないかもとマコーミックが一緒に来てくれ、ジェレミーと言い争いかけながらもテディを連れ戻したルカ。自分を困らせ、心配をかけ、怒ると謝ってきて縋るというパターンを繰り返すテディに、ルカは初めてふたりの付き合いに不安を感じる。

 だがその夜、テディはルカのベッドに忍んでくると自分のほうからキスや愛撫を仕掛けてきた。互いに求め合い、ゆっくりと時間をかけてふたりは愛しあう。

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▪ 以前にも増して仲睦まじく過ごすふたりは、校内一の美形カップルと評判になっていた。常にルカと一緒にいるおかげで、勉強も息抜きも問題なく、テディは落ち着いた様子で過ごしていた。

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▪ ハーフターム休暇。常にクレアかダニーと一緒にいて、デニスに隙を与えなければいいのだと考えたテディ。夜もさっとシャワーを済ませ、ダニーの部屋で一緒に眠ることに。

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▪ 策が功を奏し、休暇のあいだ何事もなく学校へ戻れるとほっとしていたテディ。だが用があったクレアの代わりに、デニスがテディを学校まで送ってくれることに。

 デニスは真っ直ぐに学校へは向かわず、雨のなかバタシーパーク内の駐車場に車を駐め、テディをリアシートに押し込み伸し掛かる。

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▪ ジェレミーの部屋で咳止めシロップ入りのカクテルを飲むテディ。投げやりな態度で飲み続け、煙草を吸うテディにジェレミーがほどほどにしろと注意する。

 テディはそんなジェレミーを誘惑、ジェレミーは抗えずにテディを抱く。

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▪ 授業に現れないテディを捜し、ルカはジェレミーの部屋に踏みこむ。ベッドから起きあがったテディと、その背後にいるジェレミーを見て、ルカは信じられないとその場から去る。

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▪ 休暇明け。ルカが寮に戻ると、テディは服を着たまま冷たいシャワーの雨に打たれていた。驚いて躰を温め、着替えを渡すルカ。

 泣いて赦しを乞うテディに、いったんは赦せるわけがないと突き放すルカ。だがふとサマースクールで女の子と初体験したことを思いだし、自分にはテディを責める資格などないのでは、という思いが過る。

 自分の過ちについては話さないまま、ルカはテディを赦し、自己嫌悪に陥る。

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▪ それぞれに抱えるものがありながらも、ジェシの存在もあって楽しく過ごせているルカとテディ。試験も近づいてきた頃のイースター休暇には、またもやデニスが学校まで迎えに来る。

 またホテルに連れこまれたくはないと、テディはデニスが真っ直ぐ家に向かうよう、勉強を盾にする。ファストフードだけ買って家に着くと、デニスは部屋にやってきて、いつものようにテディを弄び始める。

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▪ そこへ忘れ物を取りに戻ったクレアが現れる。デニスは必死に言い訳をし、テディは二年前、同じように母に見られたときのことを思いだす。

 クレアが死んでしまう。テディはそんな観念に突き動かされ、部屋を出たクレアを追う。だがクレアはそこに留まっていて、テディに合意じゃないのではと問い質す。

 自分の身を案じてくれているクレアに、テディの心が解ける。そして、テディは自分が誘ったのだと、デニスを庇う。

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▪ ラングフォード家を抜けだし、雨のなか繁華街を歩くテディ。持ち合わせもないが戻る気もせず、テディは偶々声をかけてきた男に、朝食付きのホテルなら煙草代と帰りの電車賃くらいでいいよと、躰を売る。

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▪ いよいよGCSE試験を控え、テディもやっと真剣に勉強する気になってくれたと安堵するルカ。ときには自分よりも早起きをして、朝からしゃんとしているテディに、ルカはふたりの未来が明るいと心底ほっとしていた。

 その矢先、またテディが授業をすっぽかす。このところがんばっていたし、たんなる息抜きだろうと、ルカは一瞬過った厭な予感を頭から追いだし、寮の部屋でテディの帰りを待つ。

 しかし消灯時間ぎりぎりに部屋にテディを送ってきたのは、誰あろうジェレミーだった。酔っ払い、ベッドに寝かされるテディを見て、自分は信じようとしていたのに裏切られたと悩むルカ。

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▪ 自分のテディに対する想いの深さと、テディが自分に向ける気持ちが釣り合っていないのだとルカは気づく。疲れきり、もうこれ以上は無理だとテディに終わりを告げるルカ。

 だがテディは、自分にはルカしかいない、ルカと離れたらもう生きていく理由がないと泣いて縋りつく。ルカはそんなテディを突き放せず、またしても絆されてしまう。

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▪ 試験期間の途中、アッパースクールでの最後のハーフターム休暇。ルカとテディは寮に残り、試験勉強をして過ごしていた。

 ルカが気分転換に夜の散歩に出ようと云い、テディは喜ぶ。だが勉強疲れからかルカはつい眠ってしまい、ふと夜中に目を覚ますとテディは部屋にいなかった。

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▪ 散歩の計画は立ち消えになってしまったが、その次の日もルカは同じ頃に目を覚ましてしまう。心配と不安のなか、待っているつもりがうとうとしてしまうルカ。朝、目を覚ましたときテディはベッドで眠っていた。脱ぎ散らかされた服を椅子に掛けておこうとし、ルカはジーンズのポケットに大金が入っているのをみつける。

 問い質すと、あっさり相手の男がくれたのだと云うテディ。テディはおかしい、まともではない、今からでも遅くはない、もう離れるべきだ――ルカの頭のなかで警鐘が鳴る。テディは不安げにじっとルカを見つめている。ルカは錯乱気味に泣き崩れながら、今回もまた縋るテディの手を振り解くことはできなかった。

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▪ ようやく試験も終わった夏の休暇。テディはデニスやクレアたちと一緒に温泉保養地、バースへ。夫婦としてやり直すためのリセット旅行に付き合ってほしいと電話で頼まれてのことだった。

 皆が寝静まったあと、庭に出て話すテディとデニス。謝罪するデニスにテディは謝ってくれなくていいし、思いだしたくもないと答える。

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▪ 無事に試験で良い成績をとり、シックスフォームに進んだルカとテディ。だが一人部屋に移り、選択した科目が違うため一緒に過ごす時間が激減する。

 音楽室も使えなくなり、テディはまた授業をさぼってふらふらするように。そんなとき、声をかけてきた同じ寮の上級生、マシューが思わせぶりに誘ってくる。

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▪ 授業に出ていないと聞き、テディの部屋で戻ってくるのを待つルカ。

 物音がして廊下に出ると、テディが誰かとキスをしていた。激昂し、ルカはテディをつ。

 頭が冷え、撲ったことを謝るためにテディの部屋に行くと先にマシューがいた。マシューはルカを元彼呼ばわりするが、顔をだしたテディに勘違いするなと云われて怒り、去る。

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▪ テディはもう、自分が恋したあの頃のテディではないと感じながらも、自分から関係を終わらせることはできないルカ。いつものとおり、テディは泣いて謝っていたにも拘らず、またすぐに授業をすっぽかすように。

 落第しようが退学になろうが、テディの好きにさせておけばいいと、ほとんど諦めている状態のルカ。自分たちの仲も、もうなるようにしかならない。何度も感じているように、もうだめかもしれないと思いつつ、自分からはピリオドを打てないルカ。この恋の終わりを見届ける義務があるかのように。

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【作品ページへGO!】

 THE LAST TIME

https://kakuyomu.jp/works/1177354054892121741

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  ⚠  以下、ネタバレ注意!  ⚠

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舎監教師ハウスマスターのハーグリーヴスと関係を持ったテディ。だがハーグリーヴスが熱心になりすぎ、テディは教室を逃げ場に選び、ルカが授業があるときを狙って遊んでやることに。

 そんなこととは露知らず、きちんと授業に出席し、とっている科目のないときも友人と図書室で勉強するテディを見て、喜ぶルカ。

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▪ 授業が自習になり、ルカはテディと過ごそうと思い図書室に。テディは煙草を買いに行ったと聞き、構内を少し捜しながら寮へと向かう。

 部屋で物音を聞き、ドアを開けて目にしたのは、何者かがテディの両手を縛り、テーブルに組み伏せているところだった。ルカは手近にあった椅子をその男の頭めがけて振り下ろし、半狂乱になって何度も殴る。

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▪ しかしテディがルカを止めた。襲われていると思ったのは誤解で、相手の男はハーグリーヴスだとようやく気づく。ぴくりとも動かないハーグリーヴスと血溜まりを見て、殺してしまったかと茫然とするルカ。

 大丈夫、生きているとテディに促され、ルカはようやく我に返り、窓から助けを求める。

 忽ち学校中に知れ渡り、大騒ぎに。

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▪ ルカの父、クリスティアンが飛んできてくれ、味方になってくれたはいいが、結局ルカとテディのふたりは放校処分に。

 もう終わりにしようという話になるたび泣いて縋りついてきたテディが、これまでのことも含めて真摯に詫び、もうこれで最後だと別れの言葉を口にする。

 つい引き留めようと手を伸ばすが、ルカはふたりの仲はもうなるようにしかならないと諦観していたはず、と部屋に残る。

 そこへジェシがやってきて背中を押され、ルカはテディを追いかける。

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▪ 寮を飛びだすとそこには車を駐めて待っていた父がいた。なにもかもお見通しなクリスティアンは、ルカを乗せテディの乗ったベントレーを追って車を走らせる。

 車のなかでルカは母に電話をかけるが、母アドリアーナはショックからルカに勘当を言い渡す。もう家に帰れない、学歴もなにもない自分は無力だと落ちこむルカ。そんなルカにクリスティアンは銀行のキャッシュカードを渡し、這い上がって道をみつけるか、バカになるかはおまえ次第だと自立を促す。

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▪ バーミンガムのテディの祖父の家の前で、父は去っていきルカはひとり残される。なんとかしてテディとだけコンタクトをとれないかと悩んだルカは、偶々通りかかったバンド少年たちにギターを借り、弾き語りを始める。

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▪ 顔も合わせてくれない祖父に、やはり世話になどなれないとテディは家を出ていこうとする。すると外からたどたどしいギターの音と、ルカに似た歌声が聴こえてきた。

 まさかと思いながら外に出ると、そこには本当にルカの姿が。

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▪ 特別な言葉もなにもなく、ルカはテディに笑いかけた。数えきれないほどルカに迷惑をかけた自分はもう一緒にいてはいけないと考えていたはずなのに、テディはルカの顔を見るなりその胸に飛びこんだ。

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▪ エピローグ。

 バスに乗り、これからのふたりの生活について夢を語るルカ。浮世離れしたルカの話に苦笑しながら、テディは本当にいいのか、自分はまたルカを困らせるかもと不安を口にする。

 ルカは、翳りの欠片もない顔ではっきりと、俺たちはずっと一緒だと云ったろう、もうこれが最後だからなと答える。

 バスを降り、これから冬を迎える寒空の下。なにも持たない、互い以外にはなにもないふたりは、軽やかに肩を並べて歩きだした。





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❐ THE LAST TIME ≫ https://kakuyomu.jp/works/1177354054892121741

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