カオスな奴ら

ハッピーディストピア!

第1話 どうしてこうなった…

 今、世界はカオスと化している。嘆き、絶叫、泣き声そんな阿鼻叫喚は死よりも恐ろしい『恐怖』が、人間という楽器で残酷に奏でている。


 人類は必死にその『恐怖』から逃げていた。大陸を中を歩き、追い続けるそれから何とか回避していた。あるいは陸を超え、別の地まで逃げるものもいた。


 けれどそんなものは、ただの時間稼ぎにしかならなかった。日に日に、無事な人間は減っている。十万、二十万と犠牲者は増え続け、いつしかそれすらもわからなくなってしまった。


 そして今日も、その犠牲者が目の前で増えようとしていた。


 「君たち遅っそいねぇぇえ、そんなチンタラしてたら死んじまうよ!にょははは!!」


 人が2人、建物から慌てて飛び出した。まだ逃げれると思っているようだが、残念ながら無理だ。


 走る2人に黒い糸のようなものが伸びてそのまま拘束する。


 『ネコノミクス、こやつら…。』


 その糸の主である黒いボールが、どこからともなく出したボードを見せ、緑の鳥に伝える。


 「うむ、コイツらリア充の様だな!ムカつくよな!許せんよな!あれしか無いよな!」


 「はっ?!リア充?!まさかコイツと恋仲とでも勘違いしてのか?!ふざけんなよ!別にコイツ好きじゃねぇし!こんな女、微塵も興味ねぇし!」


 突然、男は顔を赤くして叫ぶ。


 「そっそうよ!何でコイツとそんな関係になんなくちゃいけないんだ!コイツとはただ幼馴染なだけだし!別にコイツなんて、すっ好きじゃ無いし!!」


 女も同様に顔を赤くして叫ぶ。


 そんな様子の2人に鳥は緑だった顔を2人同様赤く染め上げていた。ただし、青筋を顔中に立てて。


 「…何故目の前でいちゃつく?完全に頭にきちゃったもんね。トリノボックスリア充絶許の刑に変更だ。」


 イラつきで歪み散らかした顔はそれはまあ随分と酷かったが、その声もかなり震えている。…一度もお付き合いのしたことない童貞なんだなぁ。しかもリア充に相当な増悪を抱いてらっしゃる。しかしボールはというと、


 『?…承知した。』


 仮面で表情はわからないが、意外とどうでも良さそうだ。どうして変更しちゃうのかわからないとでも言いたそうだ。


 「他の異性とくっつけるの刑!!」


 「「えっ…?」」


 2人は青ざめて絶句する。そしな2人を見てニヤニヤし始めるゲス鳥。


 「にょはは!!いい顔するじゃねぇか!!」


 「…先輩、もうそろそろ辞めません?というか本来の目的忘れてますよね?」


 いい加減、人間たちが可哀想だったので助けてあげましょうか。


 『目的?』


 「そんなのあったっけ?」


 何も考えずに勢いだけでやっていたらしい2人に思わず溜め息が出てしまう。けど、初っ端から怪しさ満載だったというのに止めようとしなかった自分も悪いのでしょうけど。


 「はぁ、ただただ楽しんでただけじゃ無いですか。ほら、思い出して下さい。初日の事。」


 『肥えてた老い耄れの人間はジューシーで、それでいて口に入れると溶けてしまう、大変美味。』


 「いえ議員の味ではなく…って食べちゃったんですか?!あの時捨てておく様に言いましたよね?!」


 何という事でしょう。知らない間に、しかも初日からやらかしていたではありませんか!トリノ先輩は何度注意したら止めてくれ…ってそうじゃない!


 「ほら、最初は人間に説教するために始めたんじゃ無いですか!」


 「説教?…っは!そうだ!」


 フリーズしていたネコノ先輩はやっと思い出してくれたのか動いた。人間の元へ行き、胸ぐらを掴むと、


 「プリンとっとと作れやゴラァ!!」


 そう叫びました。…まあ今更って感じですけどね。


 『…時は🐟月👂日、時間は起こった。』


 あっ、わざわざ解説するんですねトリノ先輩。というか日付すら忘れちゃったんですね…。


 『私は人間に変わる、何か美味しいものをすまほで探していた。しかし、何度スクロールするものいいものは見つからなかった。故にまた次の日と思い閉じようとした。しかし、その時に最悪な情報を知ってしまった。


 「プリンの製造全て停止」


 これを見た瞬間、眩暈がした。吐き気も催し立つこともままならなくなってしまった。そんな私を見て鶏肉は激怒した。


 「説教しなくては!!」


 刺身もその案には賛成してくれたのでそのまま我々は議事堂を襲撃した。』


 「それがどうしてこんなことになってしまったのやら…。」


 確実にあの方に説教されてしまう。しょうがないことですが、これでは説教では済まされない…。


 「ん?プリンの製造が中止?」


 人間が何か言いたそうですね。どうしたんでしょうか。


 「それデマってやつなんじゃ無いか?」


 「…デマ?ってなんだ?」


 「デマというのは私もわかりませんねぇ。」


 何でしょうか。初めて聞く単語です。


 「デマっていのは嘘の情報のことだよ。」


 『そんなまさか!その記事にはしっかりとした理由も記載されていたぞ!』


 トリノ先輩は自分の見た情報が嘘であるということを信じれず腹を立てています。多分。


 「何て書いてあった?」


 『卵が作れなくなった。』


 どうやら私の確認不足でしたね。そんなことがあったらプリンだからの話では無いですもんね。


 「…この度は多大なるご迷惑をお掛けしてしまい大変申し訳ございませんでした。」


 「本当だよ!一体どうしてくれんだ!」


 「時間を巻き戻します。」


 「は?」


 次はしっかり2人を止めないといけませんね…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カオスな奴ら ハッピーディストピア! @ataoka881

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ