第1話 運命の女神

 目を開くと、クロエは白い空間の中で立っていた。


「あれ?私、死んだはずじゃ・・・レオン!?」


 クロエの隣には、黒いラブラドール・レトリーバーのレオンが何食わぬ顔で座っていた。


「ワン!」


「良かった!レオンも無事だったのね!」


 思わずレオンに抱きついたクロエだが、背後に誰かいる事に気付いて、慌てて振り返った。


「貴方、誰ですか?」


 クロエの背後に立っていたのは、銀髪の美少女だった。

 まるで女神の様な美しさで、微笑みを浮かべる姿にクロエは息を呑む。


「私は運命を司る女神アテナ、貴方の魂を異世界に導く者です」


 突然の女神の言葉に、クロエは固まる。


(女神!?異世界!?それって、アニメや小説でよくある異世界転生って事?)


 最近、クロエが読んでいる小説と同じ様な王道パターンに、クロエの胸がときめいた。


「異世界に転生させてくれるんですか!?」

「ワン、ワワン!?」


 何故かレオンも同じように吠えているけど、クロエは、目の前の可能性で頭がいっぱいだった。


「はい、選ばれし貴方の魂は、異世界で強力なスキルを持って生まれ変わります」


 女神の言葉を聞いて、クロエは確信した。


(異世界転生のチートスキル無双来たんじゃない!?)


「ワウッ!」


「さあ、貴方はどの様な力を望みますか?」


 女神の問いに、クロエは考え込む。


(スキル選びは、重要よね?どんなスキルを手に入れるかで、異世界でのチート無双ができるか決まるわけだし、慎重に検討する必要があるわ!普通、リストとかくれるもんだと思っていたけど、自分でスキルを考えても良いなんて、新しいわね!成長スキルや即死スキルは定番だけど、色々と欲しいスキルはいっぱいあるのよね、ってか、スキルって一つだけなのかな?)


「あの、スキルって、何個まで・・・」


「ワン!ワンワン!ワオン!ワン!ワワン、ワン!」


 クロエが質問しようとすると、レオンが何かを訴える様に女神に向かって吠えていた。


(このバカ犬、何を騒いで・・・)


「分かりました、貴方の希望を叶えましょう!」


 クロエはまだ何も言っていないのに、何故か女神は、納得したかの様に頷き、話が進んでしまう。


「え?あの、ちょっと?」


「さあ、行きなさい!従魔と共に異世界で貴方の幸せが待っている事を願っています」


 そう言うと、クロエとレオンの身体が白い光に包まれた。


(私、まだスキルの希望言って無いんだけど!?)


 次の瞬間、クロエの視界は白く染まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る