第5話 なんかバズってしまった
『無名Vtuber、3万人の前で
とんでもない挨拶を
披露させられるwwwwwwww』
というタイトルの切り抜き動画は、
翌日の朝には既に15万回再生されていた。
あの後のことを説明すると、
まず『オオカミン』が
トレンド入りした。
星野さんこと星宮さんは
笑い転げて話すことすら
ままならなかった。
あのときはそんなにおかしい
挨拶をしたかなと疑問に思っていたが、
一夜明けた今、とても後悔している。
なんとか一時間ほどの軽い雑談を終え、
コラボ配信を乗り越えたものの、
引退しようか考えていた。
というか、今日学校行きたくなかった。
3万人に見られたのはまだ許せる。
所詮笑われてたのはオオカミン。
俺じゃない。俺はあんな挨拶してない。
けれど、星野さんはあんな挨拶を
したオオカミンの正体が俺であると
知っている。
憧れで、クラスの人気者の
彼女に知られてるとか、
恥ずかしすぎるんだが!?
俺は布団にくるまりながら、
昨日の切り抜き動画を見ていた。
うわ......まじでこのオオカミンってやつ
やばいな。
キモすぎるだろ。
俺なんだけど。
きっとコメント欄も批判的なので集まってるんだろうなぁ......
俺はそう思いながら、
下にスクロールしていった。
『めっちゃ面白かったwww』
あれ?
『爆笑したわ笑』
なんか......
『このオオカミンってVtuberヤバすぎて
好きなった』
『かわいそずきるだろ笑』
『無理矢理黒歴史披露させられてるの草
チャンネル登録しとこw』
『オオカミン×リナいいねぇ~』
『またこのコラボ見たい!』
好印象すぎないか!?
な、なんで!?
てか、結構チャンネル登録したって
コメントあるけど......まさか......
俺は自分のチャンネルを確認しに行った。
オオカミン チャンネル登録者数 10405人
.............................................今日学校行くか!
────────────────────
元々サボるつもりだったから、
学校の教室にたどり着いたのは
一時限目が始まる前の
10分前だった。
別に遅刻ギリギリという訳でもないが、
この時間帯になると生徒たちのほとんどが
教室に到着している。
だから、教室に入ると一斉に生徒たちの視線が自分に向けられるのだ。
俺はそれが嫌いでなるべく
早めに来ている。
まぁこの日はそれも仕方ない。
我慢するかと扉を開いた、その直後だった。
いつものようにクラスの一軍グループの
輪の中心にいた星野さんが、
「あ! やっほー! オオカ......やばっ危な......
健児君おはよー!」
真っ先に駆け寄ってきたのだ。
その一声にクラスの視線が集中する。
「ほ、星野さん!?」
「よかった~
昨日あの後連絡したのに返事来なかったけどどしたん?
来るのも遅いし、休みなんじゃないかって
心配してんだから~」
昨日話したはずなのに、いざ
対面すると緊張しすぎて言葉に詰まる。
「え、あ、ご、ごめん。
昨日あの後直ぐ寝たから......」
嘘です。
配信終わった後、後悔の念に駆られて
目バッキバキでした。
けど、まさか連絡来てたとわ......
コラボの後ってお疲れ様とかお礼の
言葉とか言うものなのかよ......
知らなかった......
だが、星野さんは俺の無礼など全く
気にも止めず、
「なんだよかった~!」
と、優しそうな笑みを浮かべた。
「つ、次はちゃんと確認するよ」
「お、てことはまた
してくれるってことじゃん~
まさか、健児君から誘ってくれるなんて
思ってなかったわ」
流石に星野さんも皆の前でコラボという
単語は口にしなかった。
だが、それが逆効果で
クラスメイトたちは、
「星野さん何のこと話してるの?」
「またするって何を?」
「星野さんって健児くんとあんなに
仲良かったっけ?」
「あの後ってなに!?
健児のやつ星野さんと一体何したんだよ!」
と、ざわついていた。
そんなとき、教師が教室に入ってきた。
た、助かった......
俺は安堵しながら席につき、
教科書を広げた。
「健児くん健児くん。
あたしまた教科書忘れたから
見せてもらってもいい?」
星野さんはモデルの仕事が忙しくて
たびたび学校を休むことがある。
まだ、新学期が始まって間もないし、
教科書を揃えられてないのだろう。
「うん。いいよ」
そう答えると、ごめんね~
と申し訳なさそうに苦笑しながら
机を近づけてきた。
俺は教科書を二人で見れるように机の端に寄せる。
「へぇーこれが新しい教科書なんだ......
なんか難しそうじゃん」
近い......
教科書を読むときは体を寄せないといけないからこうなるのも分かるが、こっちは
いい香りといい香りといい香りで
頭がおかしくなりそうだ。
そんなことを俺が考えていたときだった。
今思えばあのときは教師も
黒板を向いていたし、
誰も俺たちのことを
見ていなかった。
それは一瞬の出来事だった。
星野さんが急に俺の耳元に顔を近づけて
いじるようにこう囁いた。
「......ワンワン」
「ぅわあ!!?」
俺はその甘い吐息にびっくりして
大声を上げてしまった。
教師もびっくりした様子で、
「ど、どうしたんだ? 健児」
「え......あ......えっと......
今日の宿題忘れたことを思い出して......」
本当はちゃんとやってきたのに
咄嗟にそんな嘘をついてしまった。
「......後で職員室に来なさい」
「......はい」
生徒たちの微かな笑い声が聞こえてくる。
俺は顔を真っ赤にしながら
星野さんを睨み付ける。
星野さんは肩を震わしながら
笑いをこらえていた。
俺は確信した。
次郎と話していたときも
そう思っていたのだ。
このモデルで人気Vtuberの星宮リナこと
星野凛は間違いなく............Sである。
────────────────────
ここまで読んでくださり、
ありがとうございます!
作者のモチベーションに繋がりますので、
面白いと思ってくれた方は、
是非とも【レビュー】【スター】【いいね】
の方をよろしくお願いします。
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