隣の席のモデルは超人気Vtuber~まさかのその子の推しが俺だった件~
I.G
第1話 プロローグ
同接人数 2人
「い、いらっしゃい!
初見さん! えっと.....ヨモギさんね!
つまらない配信だけど
ゆっくりしていって! 」
き、きたぁ!!!
ひっさびさの初見さん!
これは逃がせない!
「俺! よくのんびり系のシュミレーションゲームを実況してます!
狼Vtuberのオオカミンです!」
よし! まずは簡単に自己紹介をして、
次はこの初見さんとコミュニケーションを
取らないと!
「えっとヨモギさんってどういった
ゲームが好」
同接人数 1人
んなぁああああああああ!!!!??
三ヶ月ぶりの初見さんが.........
な、なんでぇ......?
『wwwwwwww』
「笑うな.......次郎」
『だってwwwwwwww
今のヤバすぎたwwwwwwww
爆笑wwwww』
こいつほんと腹立つわ。
「お前は本当にいい性格してるよ」
『あざす。よく言われるー』
ちなみにこんな砕けた会話を
しているが、リア友ではない。
この野球のバットのアイコンをした
次郎というリスナーは二年ほど前にふらっと
やって来て、ここに居座るようになった。
いわゆる、常連だ。
登録者1人の底辺Vtuberにとって、
毎日配信に来てくれる貴重なリスナーだ。
「くそぉ......久々に同接2人になったのに......」
『オオカミンはさーやっぱ
有名Vtuberとかになりたいの?』
「そりゃな! 登録者100万になって、
お金もがっぽがっぽ稼ぎまくる!
そして! バイト辞めたい......」
『本音それ?wwwww
正直でよろしい』
それから五分ぐらい次郎からのチャットは
送られて来なかった。
『ねぇやっぱコラボしよーよ』
不意にそんなチャットが送られてくる。
「いや......前にも言ったけど俺はあんまり
コラボとかは得意じゃないんだよ。
トラウマもあるし」
『トラウマ?』
「なんか俺みたいな底辺の
Vtuberが集まってやる人狼ゲームにさ、
勇気出して参加してみたんだよ。有名になるためにはVtuberの界隈の人たちと関係作ってた方がいいと思って」
『確かにそれは重要だよね~』
「けど、参加してみたら
緊張しすぎて何も話せなかった」
『なんか想像できちゃうわw
オオカミンってマジ人見知りだもんね』
「......まぁな。そしたら、配信歴が
一番長いくせに登録者1人って
ありえないだろって男子Vtuberたちに
馬鹿にされて、女性Vtuberたちには
笑われたんだよ。
もしかしてその登録者の一人って
自分ですかって」
『うわ......そいつらマジサイテーじゃん』
「だから......もうコラボとかは
しないようにした。しても本当に
信頼できる人とする」
『なら俺とすればいいじゃん!!』
「俺的に本当に信頼できる人は
リア友のことを示します。
最低でも顔ぐらいは知ってないとな」
『えーじゃあ俺はいつオオカミンと
コラボできんのー?』
「そんなに俺とコラボしたいのかよ。
してもたぶん俺とお前じゃやってる
ゲームも被ってないだろうし。
次郎は野球ゲームとか好きだろ?」
『そんなの俺が合わせれば解決じゃん』
そんなことをさらって言ってのける
次郎を、俺は尊敬していた。
何度このポジティブな彼のコメントに
救われたことか。
本人には絶対に言わないけど。
「まぁでも、俺たちは
リア友じゃないから
コラボできません」
『ぴえん』
────────────────────
翌日、高校で席替えが行われた。
「いいなぁ......健児。
そこの席変わってくれよ」
佐藤健児。
現世ではそう名乗っている。
本名はオオカミンだ。
嘘です。逆です。
そんなつまらないボケと突っ込みを
脳内で今まで何回してきたことか。
ちなみに俺に嫉妬しているのが
小学校からの友人である山田。
「変われるものなら変わっててやりたいよ」
「くっそぉ......お前クラスの男子に恨まれるぞ?」
まぁそれは仕方がない。
だって、今日から俺の隣の席に座るのが、
読書モデルで学校中から注目されている
あの星野凛なのだから。
「あ! 凛ちゃん!」
すると、ちょうどその本人が教室に到着した。
「やっほー!」
透き通るような真っ白な肌に、
銀色に染めた長髪。
耳にはピアスをして、細く綺麗な指先にはオシャレなネイルがされている。
メイクは整った顔を崩さないように
ほどよく施されており、
その意気揚々とした彼女が教室に足を踏み入れた途端に空気が一変した。
クラスの女子たちが直ぐさま
星野さんのことを囲って、
「雑誌見たよ! めっちゃかっこよかった!」
「うっそまじぃ? ありがとぉ~
照れる」
「snsでも反響すごかったよ!
もう立派なインフルエンサーじゃん!」
「そんなことないない!
お世辞はよしなぁー」
「本当のことだよ!」
凛を中心にクラスの雰囲気が動いていく。
同い年ながら、彼女は他の生徒たちと
オーラが違った。
「てか、席替えしてんじゃん!
あたし後ろがいいんだけどぉ......お!
やったぁ! 一番後ろじゃん!」
ドキリと俺の胸が高鳴った。
冷静に考えてみれば、これってヤバイ
ことなんじゃないか?
だって、あの人が俺の隣に座るわけだろ?
しかも、星野さんは窓側だし、
隣に座ってるの俺だけじゃん。
こつこつと彼女が
足音を立てながら近付いてくるたびに
動悸が激しくなる。
落ち着け。
俺なんか相手にされないし、きっと
1ヶ月間話すこともない。
大丈夫。
いつも通りでいい。
次郎が言っていたじゃないか。
『オオカミンは緊張せずに話せれば
面白いって!』
そうだ。冷静に冷静に。
「お? 隣、健児君じゃん」
ええええええええ?
覚えられてたぁ!??
「あ、え、あ、よ、よろしく!!!!」
やっべ! 緊張しすぎて大声出してしまった。
「うぉ! 元気いいね!
よろしくねぇ~」
正直に言うと死にたかった。
────────────────────
星野さんが隣の席にいると、
全く落ち着かなかった。
「ねぇ健児君!
あたし教科書忘れたから見せてくんない?」
「どぅえ!? あ、あ、いいよ」
こんな感じでこの人は急に話しかけて
来るのだ。
「ごめんね~助かる~」
なんの躊躇いもなく体を近付けて
俺の教科書を覗き込む。
あ、いい匂いがする。
わぁ! 男子が俺のこと睨んでる!
あ、めっちゃいい匂いする。
俺の鼓動は常にばくばくだった。
ようやく昼休みになり、
俺は昼食を食べ始める。
皆は友達とグループを作って
食べている、俺はいつも一人だ。
別に浮いているわけではない。
好きで一人になっているのだ。
この方が楽だし、それに
昼休みは人目を盗んでスマホをいじれる。
つまり、配信サイトに行って自分の
投稿した動画やアーカイブの視聴数が延びていないかを確認できるのだ。
どれどれ......うん! 全く増えてない!
いつものことではあるが、
この増えてるんじゃないかというドキドキがたまらない。
たとえ変わっていなくても昼休みに数秒の間だけ覗きに来るのが日課になっている。
その日もほんの数秒だけだった。
確かに、普段は誰も話しかけて来ないから
あのときは油断していた。けど、まさか
見られているなんて思ってなかった。
急に隣で女子と談笑していた
星野さんが立ち上がって、
「はぁ!!!??」
聞いたこともないほど大きな声を上げた。
ビックリして彼女の方を向くと、
直ぐ横には俺のスマホを覗きこんで
目を丸くする星野さんがいた。
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