93話 十字架の白騎士
「あっ、どうもどうもー。中にお入りください、どうぞどうぞー」
俺とウタが作戦会議の場である鈴木さんちにつくと、30代の中年男性がにこやかに出迎えてくれた。鈴木さんご本人だ。
彼は自分の家の庭に地下型ダンジョンが出現してからというもの、このダンジョンの探索権を売り出すことで生計を立てている。さらに彼自身もトップクラスの冒険者であり、自分の庭のダンジョンからモンスターなどの素材を売って切り盛りしているようだ。
彼に案内された部屋には、今回のレイドクエストに関わる冒険者たちがズラリと席についていた。普通の一軒家のリビングでは、かなり手狭な印象を受ける。
「あっ、こちら【にじらいぶ】のお二人が到着しましたー。あ、粗茶ですがどうぞどうぞー」
鈴木さんはのほほんとした口調で他の冒険者たちに紹介してくれる。
人数は……斥候のためのレイドパーティーとして招集された割には大人数だ。
その中でも一際目立つのは立派な甲冑に身を包んだ女性だった。彼女は俺たちが入室するとツカツカと寄ってきて、いの一番に挨拶をしてくれた。
「一応、【神殿】に所属している
「あっ、いえいえ」
「ならよかったのですが……【神殿】は貴方がたに大きな借りがありますので、何かお困りの際は力になります」
あまりの大物が開口一番に謝罪をしてきたので、多少なりともビックリしてしまった。
彼女が
ゲーム時代も今も有名な彼女に、こうも仰々しく接してもらうと少しだけ居心地が悪い。
冒険者なら誰でも知っている【聖炎の白騎士】、【十字架の白騎士】とも呼ばれる人物。
ゲーム時代は最強パーティーとして名高い【六芒星】の元メンバーであり、現在はいくつかのスタンピードに対し、単独で数十名の冒険者の命を救った実績を持つ。
だから冒険者界隈では彼女を英雄視している者も少なくない。そして、【神殿】の名誉トップとしても君臨している。
これは経緯がやや複雑だが、簡単に言えば【神殿】に名前を貸しているソロ冒険者、それが【
実は俺、ゲーム時代は【六芒星】のちょっとしたファンでもあったため、彼女とこんな所で会えたのは嬉しかった。
噂以上に綺麗な顔立ちだし、ポニーテールで髪を清潔にまとめたお姉さんな雰囲気がとっても似合っている。これでいて、武骨なハルバートを振り回す一騎当千なのだから、冒険者として少しだけ憧れてしまう。
「ほれ、【神殿】の白騎士殿の挨拶は終わったかの? じゃあ、次は知人であるわしらの番っちゅうもんじゃな」
赤ら顔でモジャモジャの髭を蓄えた集団が、
彼らは一様にして背が低いが、代わりにガッシリと筋肉が詰まった体格をしている。そんな彼らが一体誰なのかとわかれば、俺は自然と顔がほころんでしまった。
「あっ、お久しぶりです。【夕闇
「ナナシ殿とまた相まみえようとは、こりゃ今回のレイドクエストは楽しみじゃ」
「ほれナナシ殿。ドワーフ謹製の火酒じゃ。クエスト終わりに持ってゆけい」
「いやいやナナシ殿と共に飲むのがよいじゃろうて」
「おまえはッ! またナナシ殿の飯にありつこうとしてるだけじゃろ! 酒の肴を恩人に作らせるなんて……なんて……ゴクリ……ナナシ殿、ちょっと相談なんじゃが……」
【天空城オアシス】のスタンピード防衛戦を共に駆け抜けた戦友たちは、相変わらずの酒好きだった。
これから最難関ダンジョンに入る前だというのに————
俺は妙に
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