82話 推したこ焼きパーティー!(死海)
「この食材は————」
俺が
「きるるん! 執事くんが取り出したこれはね……あたしがこの前、釣った【
物騒な名前の通り、【
宝石魚からとれた金剛石を加工し、強力な酸でも溶けない釣り糸を用いて釣り上げた巨大タコ。確かに見た目は吸盤だらけでグロテスクだし、通常の赤いタコと違ってどす黒いのも気になる。
だが俺の身立てでは、こいつが【宝石魚のカルパッチョ】や【
「そしてこちらが————」
俺がさらなる食材を取り出そうとすると、次は
いや、彼女の肩や頭の上に乗った
「プルルゥゥゥ! プル!」
「クク! ククゥゥゥー!」
「ガルガルウガルウウ!」
「うんうん、プルちゃんの
プルはぷるぷるぜりーっぽい形のひよこだ。変幻自在な軟体性に富んだ見た目は、きゅーの変身特性をよく受け継いでいる。
ククは逆に羽毛の一枚一枚が氷のようなひよこだ。フェンさんの氷雪力をしっかり取り込んでいる。
そしてガルが一番ドラゴンの雛っぽくて、岩肌っぽいゴツゴツしたひよこである。こちらはピヨの【
「ではまずボウルに水と『ミノタウロスのお乳』、そして『
タコと生地、その二つの素材を聞けばもはやアレしかない。
そう、ドラゴン牧場にて青空タコ焼きパーティーだ。
別のボウルに具材として『
「さあ、あとは200度まで温めたこちらのホットプレートたこ焼き器に、サラダ油で湿らせたクッキングペーパーでササッと拭きます」
それからとろーり具材と生地をたこ焼き器の穴へ、たっぷり注いでゆく。
ジュゥゥゥゥゥゥゥウっと生地が焼ける音に続き、ウタによる【毒抜きの歌】が【
完璧な解毒を施したタコを俺が神速で切り刻み、より新鮮な状態で生地へ一粒一粒を入れてゆく。
プレートの熱で生地が固まったと判断すれば、ほどよい間隔でひっくり返す。
すると、こんがりと焼き色がついた丸い宝玉が顔を覗かす。
芳ばしい香りがドラゴン牧場にただよう頃になれば、みんながそれぞれのお皿にタコ焼きを盛ってゆく。そして好みのソースを選んで、あとはぶっかけるだけだ。
「鉄板の濃厚たこ焼ソースから和風だしまで、さらに【鬼ねぎ塩レモン】、【たっぷり雪羊チーズ明太子】、【化けねぎマヨ焦がし醤油】、
ほくほくのタコ焼きに各々の旨味がぎっしり詰まったソースがかけられてゆく。
すると当然、湯気に当てられたソースたちが食欲を刺激する香りを発生させてしまう。
推したちは、たまらずに『いただきます』の大合唱だ。
「はふはふっ……やっぱりこれよ……濃い味の王道、表面がカリッとなのに、中はふわとろっ……熱々のタコがぷりっとしていて……!」
頬がとろけていますな、きるるん。
「んんーっ、鬼ねぎっ! 塩レモンっ! さっぱり酸味が最高ですっ!」
目を閉じては、塩レモンの旨味を堪能するぎんにゅう。
「はむっ……はむっ……シンプルにおだしが効いて香り豊か、とろっとろのタコ焼きにすごいマッチしてるよお」
ハムスターのように頬をふくらませながら、一噛み一噛みをゆっくりと味わうそらちー。
「ふーふーっ、あむっ、あむあむ……チーズ明太子とタコ焼きが絡んで、口の中で溶ける……うまか!」
子供のように感動しながら全身を震わすヤミヤミ。
うん、タコ焼きではしゃぐ子供そのものだ。
『シャキシャキおねぎと、マヨのまろみ、そして焦がし醤油の相性が抜群ですわ!』
幼女なのにお上品に口をおさえながらも、目を何度もぱちくりするウタ。
全員が全員、ほっこりとした面持ちでタコ焼きをつついてゆく。そこへさらに、【獄・鬼タン塩】や【宝石魚のカルパッチョ】が食卓を彩ってゆく。
ぎんにゅうが『この鬼タンを食べたが最後です……』ときるるんを煽ってみたり、そらちーが『これを食べたら最高の美容になるよ!』とさらに興味をわかせてみたり。
ヤミヤミとウタはなぜか即興でビートで歌を刻み、完全にBGMと化していたり。
とにかく【にじらいぶ】のライバー全員が、口にせずとも言っているのだ。
『社長、いつもありがとう。おつかれさま』と。
きっとその気持ちはきるるんに届いているはずだ。
なにせあのお嬢様が、口元に食べかすがついてるのにも気付かずに、みんなと笑い合っているから。
推したちに囲まれる推し。
なんだかぽかぽかした気持ちになった。
◇
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【震えるたこ焼き】★★★
強酸性にも耐えうる『
外カリ中とろの王道を全うしつつも、ふわっふわっの食感に出汁の効いた生地がたまらない。あまりの美味さに全身が震えてそのまま逝去された人物もちらほら。
神々も猛毒の刺激に舌を巻き、ほくほくと頬をほころばせてしまう天下一品。
基本効果……食した者に『必中猛毒』を付与し、全身が痙攣しながら死ぬ。
★……基本効果を消滅させる
★★……永久にステータス防御+5を得る
★★★……特殊
『
【必要な調理力:260以上】
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