周辺探索

とりあえず俺は森の中を散策してみる。


動かずじっとしているのも暇だし、早めに見つけておきたいものがある。


そう、水だ。


人間であろうと猫であろうと生きていくために水が必要不可欠なのは変わりないはずだからな。




そう思いながら歩いていると遠くのほうから水の流れる音が聞こえてくる。




というか猫ってこんな遠くの音まで聞こえるんだ。すげぇな。




俺は猫の聴力に感心しながら音のするほうへと歩いていく。




しばらくすると、と言ってもかなり歩いたが、俺は小川へとたどり着く。


水は澄んでいる。これなら飲んでも大丈夫であろう。


本当なら煮沸消毒とかしたほうがいいんだろうけど、猫である俺がそんなことできるはずもない。


野生の猫もそのまま飲むだろうしな。


ということで俺もそのまま飲む。




ピチャピチャピチャーー。




飲みにくい! 非常に飲みにくい!


こんなちょっとずつしか飲めないのかよ。


人間だった頃がうらやましいな。




そう思いつつも俺はのどを潤す。




ふと、水面に映った自分の姿を見る。


全身真っ黒な毛並み、とんがった2つの耳、長くて細いしっぽ。


……俺ってこんな見た目だったんだ。


疑いようがない。俺は猫なんだ。黒猫になったんだ。







のどを潤し、俺は落ち着く。


さて、水場は確保したことだし、できればこの辺に拠点を作りたいな。


まぁ、拠点といっても猫の俺が家を作れるわけでもないから、とりあえず寝れる場所があればそれでいい。


まだ昼間だけどさっきから眠気がすごいんだよな。




ということで水場から少し離れたところで眠れそうな場所を探す。


何で水場から離れるのかって?


水場は他の動物も集まってくるからな。


もしかしたら襲ってくるような動物もいるかもしれないし、なるべく危険は遠ざけておきたい。


というわけで水場からは少し離れたいのだ。




しばらく寝床を探していると、俺はひときわ大きな大木を見つける。




めちゃくちゃでかいな、樹齢何年だ?


なんだか自然のエネルギーを感じるな。 




目の前の大木を見上げながら俺はそう思う。




うん、気にいった。ここにしよう。




そう思うと俺は手足を器用に使いながら大木によじ登る。


そして地面からある程度離れた、太めの枝を選んで座り込む。




木登りは小学生以来だったけど、難なく登れたな。


猫の体も特に違和感ないし。


けどやっぱり前の人間の体に比べると不便だよなー。




俺はそう思いながら目をつむる。先ほどから眠気が限界だ。


俺はすぐに眠りにつく。







俺はパチリと目を覚ます。


辺りは真っ暗。もうすっかり夜である。


にもかかわらず俺の視界ははっきりしている。


むしろ昼間よりもいい。頭も冴えてる。




ぐ~~~。




お腹すいたな。何か獲りに行くか。




そう思うと俺は大木から飛び降りる。




あっ、やべ。この高さから飛び降りて大丈夫か?




と不安に思ったのも束の間、俺は何事もなかったかのようにスタッと地面に着地する。




改めて猫ってすげぇ。






俺は周りに注意を払いながら足音を殺して歩く。


調子がいいとはいえ、ここは土地勘も何もない森の中。


どんな危険が潜んでいるかわからない。


注意を払うのは当たり前だ。




しかし、俺人生で一度も狩りなんてしたことないんだよなー。


前世人間だし。猫になるの初めてだし。




俺はちゃんと獲物を捕まえることができるのか不安になる。




とその時、目の前を小さな影がものすごいスピードで横切る。


一瞬の出来事にもかかわらず、俺はその姿を目にとらえていた。


ネズミだ!


そう思うと同時に俺の体は勝手に反応していた。


ものすごい速さでネズミを追い、気づくとネズミを仕留めていた。


先ほどの不安は何だったのか。


俺は猫だから当たり前なのだろうか?


それにしても猫ってすげぇ。




仕留めたネズミを咥えて、少し夜の散歩をする。


夜の森は何だかきれいだ。不思議と恐怖感のようなものはない。


それに昼間に比べると動きやすいんだよな。なんでだろう?




俺はそう思いながら大木の寝床へと帰る。




さて、ネズミを持って帰ってきたはいいものの、どうやって食べよう。


といっても食べ方は一つしかないのだが……。


俺が猫である以上火おこしなんてできない。


そう、生食だ。そのままだ。


野生の猫は、というか野生の肉食動物はみんなそうだろう。


躊躇する必要なんてない。




俺は心の中でそう言い聞かせながらネズミにかぶりつく。




うんうんうん……悪くない。




俺は木の上で寝そべりながら骨まで残さず食いつくす。




満腹とまではいかないものの、お腹は満たされたな。




俺はペロペロと自分の体をグルーミングしながら夜が明けるのを待つ。

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