転生したら猫でした。~黒猫に転生しましたが、猫としての愛嬌や能力を存分に使い何とか生き延びています~
ヘイホーみり
黒猫は不吉?
ある日の帰り道、俺はいつもと何ら変わらない帰り道をとぼとぼ歩いていた。
現在時刻は夜中の0時15分。今日も余裕の残業である。
正直頭はぼーっとしていて、今この場でも寝られるほどである。
「なんとか家までは帰らないと」
俺はそう言いながらとぼとぼと家を目指す。
「ん?」
俺は視界の片隅に光り輝く2つの球を見つける。
よーく目を凝らしてみる。
「なんだ猫か。驚かすなよ」
光り輝く2つの球の正体は猫の目玉だ。
全身真っ黒の黒猫であり、光った眼だけが宙に浮いているように見える。
黒猫は俺のほうをじーっと見つめていたが、すぐに目をそらして俺の目の前を横切って行く。
「そういえば黒猫に目の前を横切られるのは不吉だとかなんとかっていう迷信あったよな」
俺はふとそんな迷信を思い出して口にする。
「まっ、どうでもいいか」
そんなことは気にせずに俺はすぐに歩き出す。
とその時、
プーーーーーーーーー!!
後ろからトラックが突っ込んできて、俺は思いっきりトラックにひかれる。
そしてそのまま何メートルもぶっ飛ばされる。
何が起きた? 俺トラックにひかれた?
命はまだあるか? 体は動かないけど意識はまだあるから大丈夫なはずだ。
俺はそう思いながら倒れたままゆっくりと目を開ける。
目を開けると視界の中には一匹の黒猫。
じっとこちらを見つめている。
もしかしてお前のせいか?
あの迷信は本当だったのか?
頭のあたりが生温かい。
意識もどんどん遠ざかっていく。
あっ、これ駄目なやつだ……。
俺はそのまま深い眠りにつく。
♢
ここはどこだ?
確かトラックにひかれて、そのまま意識が遠のいて……助かったのか?
訳が分からないまま辺りを見回してみる。
木……木……木……。
辺り一面、木々の緑で埋め尽くされている。
森の中か? なんでこんなところに?
訳が分からずパニックになっている中、俺はあることに気づく。
なんか俺の目線低くね?
俺の感覚としては、俺は今地面の上に立っている。
にもかかわらず俺の目線は地面から20センチといったところだ。
どう考えても低すぎる。
人間が二本の足で立っていれば目線の高さは170センチくらいは……二本の足?
まさか俺はいはいしてる!?
いや、目線からしてはいはいしていると考えるほうがつじつまが合う。
おそらく俺はトラックにひかれて死んだはず。
そして別の世界に新しい命として生まれ変わった。
いわゆる転生というやつだ。
だとすれば、赤ん坊として生まれ変わったと考えればこの目線の低さにも納得がいく。
声はどうだ? さすがにまだしゃべることはできないか?
俺はそう思いながら声を発してみる。
「にゃ~」
にゃ~? 俺今にゃ~って言った?
あっけにとられた俺はもう一度言葉を発してみる。
「にゃ~」
……明らかに、にゃ~って言っている。
嘘だろ? 俺はにゃ~って鳴く生き物は1種類しか知らないぞ?
まさか……。
俺はそう思いながらおそるおそる自分の手を確認してみる。
真っ黒な毛。人間らしからぬ、見慣れない爪。そして手のひらには肉球。
俺は一瞬固まってしまう。そして確信する。
猫じゃん! これどう考えても猫じゃん!
人間の赤ん坊に転生したのかと思ったら、まさかの人間ですらなかった。
まさかの猫。おそらく黒猫。
ここで俺ははっとする。
まさか全部あの黒猫のせいなのか!?
突然トラックにひかれたことも、突然人生が終わったことも、黒猫に転生したことも、全部あの黒猫の仕業なのか!?
俺は突然の出来事にパニックになりながら、かわいい前足で自分の頭をかきむしる。
こうして俺の猫ライフが突然幕を開けたのであった。
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