お食事 BBQとお好み焼き
「コユキ。何が食べたい?」
「私……今まで野営で冒険者達が焼いたお肉を食べているのをただ見ていただけなんだよ。だから、食べてみたいんだよ。」
「オーケー。BBQな。」
「BBQ?」「コユキちゃん。お楽しみにすると良いよ。私達の中では特別なイベントみたいなもんだからね。」
「……そうだな。じゃあ。レムは何かリクエストはあるか?」
「我は食べたいというか、いつもはモンスターの肉を喰らっておる。生か魔法で炙っての。」
「お前それ、食事には魔法を使わない方が良いらしいぞ。魔力の独特の味や匂いが食材に移るみたいだ。
「そうなのか? だが通りで。考えてみれば邪神の魔力が美味いはずがない。」
「炭水化物とか食べた事はあるか?」
「なんだそれは?」
「穀物。稲や小麦などの植物の実やそれを潰した粉だ。これ。」
春人はレムレースに小麦粉を見せる。
「我がそんな面倒な事をすると思うか?」
「じゃあ。お好み焼きでも作るか。ただ、その二つだと俺が料理を作るというより、自分達で焼きながら食べる事になるけどな。それは我慢してくれ。」
「構わん。」
「俺が作るから、みんなはこの椅子に座って待っててくれ。うららはコユキとレムレースとスマホのゲームを教えててくれるか?」
「わかったわ。」
今回の料理
バーベキュー
お好み焼き
サラダ(小)
使用スキル
【 マテリア化 】(自動)
【 野菜の種 】
【 調味料+2生成 】
【 道具生成 】
【 調理器具+2生成 】
【 食品加工 】
使用魔法
風・火・水・土属性魔法
春人は、まず、少し離れた場所に、スキルで野菜の種を植えていった。スキル使用後に水を撒く。
次にうらら達がスマホで遊んでいる場所に戻り、土属性魔法で、大きめのバーベキューコンロを二台作る。
あらかじめ作っておいた炭をアイテムボックスから取り出しコンロの中央に山のようにして入れていく。火魔法で炭を燃やした。すると、うららが不思議そうに質問をする。
「なんで両端に炭は入れないの?」
「うん。火力調整の部分を作っているんだよ。お肉もお好み焼きも弱火や保温のスペースが欲しいだろ?」
「なるほど。それなら、出来たものから、急いでお皿に入れる必要もないわね。」
春人はアイテムボックスからテーブルを取り出し、調理器具を並べていく。まな板にバーベキュー用の肉を置き切り始めた。
今回使うモンスターはフィリスブルという名のCランクモンスターで、異世界の一般では高級肉として流通している。神が狙ってそうしたのか異世界の魔物は高ランク程美味しい。Cともなれば一般人はほとんど食べる事の出来ない格別な食材である。
春人はマテリア化によりモンスターに触れると、肉は血を抜いた状態でブロック状になる。今回アイテムボックスから取り出した部位は、なんとなくフィリスブルのタンと肩ロース肉とササバラを選んだ。丁寧に余計な脂肪などを切り落とし一口大に切っていく。
タン カルビ ロース
数分でバーベキュー用(今回は焼肉に近い)のお肉が完成した。
現在の春人はLv28で野菜の種の成長速度が飛躍的に上がっている。肉を切っている間に野菜がそれぞれ食べごろまで育っていた。春人が収穫し野菜に触ると、野菜についている土や汚れが即座にマテリア化される。以下の野菜を食べやすい大きさに切り分けた。
とうもろこし
ジャガイモ
茄子
たまねぎ
ピーマン
アスパラガス
ネギ(タンの上に細かく切ったネギをのせる。)
次に、春人はタレを作る。
塩レモン
【材料】
塩
レモン果汁
にんにく醤油ダレ(ベースタレ)
【材料】
醤油
みりん
砂糖
酒
にんにく(すりおろし)
生姜(すりおろし)
小さな鍋にいれ、コンロの遠火に置いておく。ベースの醤油タレのアルコールを飛ばす為だ。
※ベースタレは他のタレにも使うので、そのままをつけダレとして使用する場合は、その時にごまとごま油少々入れる。
ピリ辛ソース
【材料】
ベースの醤油ダレ
豆板醤
コチュジャン
ごま
ラー油
ポン酢ダレ
【材料】
醤油 + ベースの醤油ダレ
レモン果汁
タレまでを作り終えると次にお好み焼きの準備に取り掛かる。
小麦粉
ベーキングパウダー
クックルー鳥の卵(ニワトリの卵に近い種類)
水
和風だし
キャベツ
山芋
ネギ(細)
ホグダンディーの薄切り肉(異世界にできた可愛い妹編のホグワイルドの下位種)
かつお粉(調味料+2スキルには、まだ細かいかつお粉しかない。味は似ている。)
※+2では調味料の分類ではないものもリストにある。
あおさ(調味料+2スキル)
紅生姜(生姜を食品加工スキルで)
お好み焼きソース
からしマヨネーズ
春人はまず、山芋をすり鉢の中でおろす。
次にキャベツを粗めの微塵切りにする。
ネギを細かく刻む。
ボールの中に小麦粉とベーキングパウダーを入れて混ぜる。
そこに少しずつ水を入れながら混ぜる。
溶き卵と山芋と和風だしを入れ、良く混ぜ合わせる。少しかたかったので最後に水を少し入れ調節をした。
その中にキャベツ、ねぎ、紅生姜を入れる。
薄切り肉を切っておく。
これで、お好み焼きの材料作りが終わった。
春人は次に少量のサラダを作る。これは、手抜きをしようと思っていたので、ほぼ野菜を切るだけで終わった。
【材料】
レタス
キャベツ
ミニトマト
きゅうり
ドレッシング
【材料】
ポン酢ダレ(バーベキュー用で作ったタレ)
ゴマ油
サラダ油
酢
これで準備が完成した。
春人は鉄板に油を少量ひき豚肉の薄切りを敷き詰める。その上から生地をいれた。
「よーし準備が完了したぞ。お肉とか焼いて食べようぜ。」
「待て。今はゲームが良い所なのじゃ。」
「お。はまってくれたか。だがレムそれは駄目だ。皆で食べるんだから、先に食事をしてくれ。」
「仕方ないのお。」
コユキが肉や野菜を見て、ゴクリと喉を鳴らした。今まで見た野営の冒険者のものより遙かに食材が多い。
「ワクワクが止まらないんだよ。」
一方でレムレースはあまり期待してはいない。
テーブルには、それぞれの分のタレを3種類とサラダが置いてある。フォークとスプーン。それに箸も用意してある。
「よし、肉と野菜の方が焼きあがったぞ。ホレ。まずはコユキから。こっちの肉はタレで下味がついているから黒いタレのどれかを付けて食べな。次からはこのトングで自分で好きなものを取れよ。左がタレで右が塩の下味がついている。塩の方は透明なレモン汁を付けて食べるんだぞ。」
春人はレムレースとうららにも肉や野菜を取り分けて渡す。その間にコユキが食べ始めていた。
「はふはふ。……っ!? 絶妙なタレと噛む度に濃厚な脂が溶けだして口いっぱいに広がる。なんて美味しいのっ! 美味し過ぎるんだよっ!! 」
レムレースが鼻で笑っている。
「コユキはいちいち大袈裟だな。たかが肉。どんなにちょ……うまーーーーーいっ!! なんじゃこれは。はっ! タレっだ!! 香ばしい肉と旨味たっぷりの肉汁が、このタレの味と調和しこの最強を作り出しておるのか。……うまいぞっー!」
「二人共大袈裟だよ。うららを見ろ。どんな時も冷静だぞ。」
「異世界でこの味が食べられるなんて。」
うららは泣いていただけだった。春人と再会してからお肉はよく食べているが、みんなで食べるバーベキュー。それも高級焼肉に近い部位は、格別な味だった。レムレースは、今、食べている食事とうららの言葉を結び付けて、確信に辿り着く。
「お主等は、もしや
「異世界の人間をここではワンダラーって言うのか。……そうだ。長生きしているって事は見た事があるんだな。」
「我の眷属である魔王を倒しに来た
「待て待て。なぜ俺達が神様から与えられた力なんだ? それにコユキは特別なのか?」
「あのな。根本的に違うんだよ。春人とうららの体は、神のスキルや魔法に耐えきれる上位のものに作り変えられている。うららは我と同じだし春人の方は我よりも上位の肉体だ。スキルや魔法もこの世界の人間の常識とはかけ離れたものだぞ。コユキの方は精霊固有のスキルと魔法の才能。そのうちスキルの方だけを持っている。分かりやすく言うと半分は精霊だな。」
「なるほどな。よし、お好み焼きが焼けたぞ。」
「ほう。これを世間話のように流すんじゃのお。」
春人は納得がいっていないようなレムレースに、お好み焼きが焼けたので取り分ける。レムレースは、それをむしゃむしゃと食べ始めた。
「っ! これが炭水化物なのかっ!? ふわふわで濃厚クリーミーな生地に、甘辛いタレの味が相性ばつぐんで癖になりそうじゃ。 バーベキューもそうだが、我は悠久の時を無駄にしておったぞ。」
「美味しい食事は世界征服の代わりにはなるか?」
「なるっ! これが定期的に食べられる至福に比べれば、絶望した人間の顔を見る事など底辺の娯楽だ。我は新たな喜びを獲得したぞ。」
「……今まで、どんだけ不味い物を食ってたんだよ。スマホゲームの方はどうなんだ?」
「もちろん最高だ。もぐもぐ……とても気に入ったぞ。」
「お。レム。レベルが少し上がってるな。うーん。……ちょっと説明を見たけど、レムの場合、ゲームは筋トレの代わりになっているんじゃないか?」
「何。そうなのか? ならば我は筋トレをやめてゲームに明け暮れるぞ。」
「まあ。なんでも偏り過ぎは良くないから、ほどほどにな。」
一同はそれから、ゆっくりと食事を楽しんでいった。そして、楽しい食事も終わり。
「何かあったらすぐに我を呼ぶのだぞ。春人が死んだら我も終わりなのだからな。」
「レムほどの脅威ではないんだろ?」
「我と龍は、世界の始まりから世界の命運をかけて、ずっと戦っておる。二つの最強はこれまで幾度となく転生を繰り返してきたのだ。だが今回の転生で我は龍よりも圧倒的に強くなった。しかし、その間にも、ずっと生きて来た我等より下位の生物がおる。それこそ成長前の我より強いものも、僅かだが存在するぞ。」
「分かった。その時は頼むわ。」
「じゃあの。またすぐに来るぞ。」
レムレースは大満足で帰っていった。レムレースはアイテムボックスに、お土産などをたくさん貰っていったので、春人が予備に作っておいた食べ物は全てが無くなっていた。
そして、スマホでお互いの場所が分かるので、レムレースは定期的に遊びに来る事になっていた。
「コユキは食事、満足出来たか?」
「大満足なんだよ。全部が美味しかったけど、特にタン塩の歯切れの良い食感、肉の旨味とさっぱりとした爽快なタレが最高だったんだよ。」
「それは良かったよ。また定期的にBBQやろうな。さて。コユキはまだ冒険者のランクが低いから、こちらのギルドで依頼を受けながら次の街まで移動でもするか。しかしコユキが仲間になった事で移動手段が遅くなる。せっかくだから、他の冒険者でも雇って一緒に冒険でもしてみようか。」
うららがその言葉に喜んでいる。自身はあるが比較が出来ないので自分の強さがよく分からないのだ。
「それは楽しそうね。いろいろとこの世界の情報が聞けるだろうし。」
いっぽうで、コユキがむくれていた。
「移動速度が遅くなるとは、どういう意味なんだよ。うちだって、いろんな冒険者の後を追いかけてきたもん。移動だけは得意なんだよ。」
春人は少し離れた場所まで高速で飛行して、戻って来る。コユキは口をあんぐりと開けて驚いている。
「……ごめん。それに追いつくのは無理なんだよ。」
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