男 第一回 格闘遊戯①

 野菜の待ち時間に、春人はタブレットを操作していた。

 アクティブスキル遊戯の項目を確認する。 


 現在使える遊戯スキルは三つ。

【 雑談遊戯 】 【 格闘遊戯 】【 冒険遊戯 】


 そのゲーム内容は

【 雑談遊戯 】はAIチャット。現実世界で言う所のChatG〇P。

 春人は分からない事が多い異世界に於いて、それが現実世界の知識でもありがたいと思った。このサバイバル生活で自分にはない知識でも対応出来る。


【 格闘遊戯 】と【 冒険遊戯 】は、自分や他人に才能や能力を与えるゲーム。

 格闘遊戯が個人単体をストレートに強化し、冒険遊戯が一回で複数名を強化出来るがゆっくりと力を与える。


 自分に条件はないが、他人への条件は

 < 召喚スキル >

 スマホ 5/5  SP10,000 (格闘遊戯用)

 キッズスマホ6/6  SP10,000 (冒険遊戯用)


 それを渡した相手のみ強化出来る。

 ただし、消費SPは最初の一回のみで、渡した相手の変更は出来ない。

 春人が持っているタブレットのように手放しても体の周りを漂う事になる。

 春人の持つタブレットや連絡先を交換すれば他のスマホともいつでも通話やチャットなどが可能になる。


「【 スマホ 召喚 】ほれ、あんな。これを使えば俺達はいつでも連絡が取れるよ。」


「っ!? 通信用の魔道具ですら数える程しかないの。そんな魔法は、聞いた事ないなの。でもお兄ちゃんといつでも話せるのは嬉しいの。ありがとう。」


「スキルなんだけどな。それとレイア。もしもの話をするね。もし、不老不死になれるとしたら、なりたい?」


「当たり前なの。太古の昔からその方法を探して、ダンジョンに潜ってる亜人が殆どなの。今までそれに成功したのはセブン賢聖サガス と呼ばれる二人だけだと言われているの。」


セブン賢聖サガスなのに二人なのか?」


セブン賢聖サガスは四人なの。そのうちの二人は最初から不老不死なの。」


「空席があるの。でも、セブン賢聖サガスの事はそれに関わる重要な人しか知らないから内緒にして欲しいなの。」


「分かった。一応言質は取ったからな。」


「なの?」


「【 格闘 遊戯 】トゥルトゥル


 春人がスキルを唱えると二人の目の前に、亀の甲羅を背負った黒髪のマッチョなおじさんが現れる。口には黒いマスクをしていた。


「初回ボーナスが使える最初に儂を呼ぶとは、お主なかなかセンスがあるようじゃの。」


「まあな。むしろどう考えても、あんたしかあり得ない。」


「気付いたか。小童のくせに見どころがあるわい。イメージしろ。武器は何にする。」


「これにする。」


 春人が頭の中でイメージすると、右手の中に剣が現れた。


「何をしているの?」


「レイア離れていてくれ。今から戦闘が始まる。」


 レイアは離れながら、亀のおじさんに訊ねる。


「おじさん。あなたはどれくらい強いなの?」


「なあに。格闘遊戯のアバターは、全員が鬼神の如き強さじゃ。」


 レイアは恐怖で顔を歪める。

 レイアは亀のおじさんが登場した時から、まるで魔王とでも対峙したような強烈な畏怖を抱いていた。

 だから思わず強さを訊ねてしまったのだ。

 この恐怖の正体が間違いであると思いたかった。

 目の前の二人に感じるのは圧倒的な実力の差。

 世界最強の強者までを知り、それが分からないレイアではない。


『 Ready GO! 』


 どこから、ともなく、アナウンスが流れる。


 全身の筋肉が盛り上がり、体から目視出来る巨大なオーラを纏わせる亀おじさん。

 その一瞬の隙をつき、春人が直線で走り込む。

 亀おじさんの武器は拳についた硬そうなナックル。

 亀おじさんは両手のナックルを合わせガチリと鳴らした。


 春人は亀おじさんの手前で大きく跳ね上がり、空中で回転すると、亀おじさんの後頭部に剣を振り下ろした。

「ぶはっ。」

 亀おじさんはバランスを崩し前のめりの態勢になる。

 亀おじさんは急いで後ろに重心を移動させる。

 春人は着地すると、そのまま亀おじさんの横に周り込み、剣で顔面を一閃した。

 重たい甲羅を背負った亀おじさんは、後ろに重心を移動させた勢いもあり

 今度は後ろに倒れそうになる。

 春人はそこに膝裏への斬撃を与え、亀おじさんは仰向けに倒れていく。


「やっぱ、亀の弱点はコレだろ。」


 春人は倒れた亀おじさんのHPがなくなるまで、剣で斬り裂き続けた。


「容赦ない、酷いっ、お兄ちゃん強すぎるのっ。」


『 You win! 』


 亀おじさんはHPがなくなり、黄金の亀に変化した。


『小童なかなかやりおるの。まあ、手加減してやったのだから感謝するがいい。』


「嘘っぽいの。おじさん鼻水だして苦しそうだったの。お兄ちゃん。本当は強いなの。さっきはへっぴり腰だったのに、私を欺いていたなの。」


 春人はレイアを見て嬉しそうに笑った。


「強いだろ? 俺はゲームだけは得意なんだ。これがVRゲームで磨いた腕だ。実際の戦闘は嫌いだし弱いけどな。」


「ゲームと現実で何が違うか分からないの。一緒なの。」


『仕方ないのお。小童何の強化をする。』


【 格闘 遊戯 】 


 トゥルトゥルは、天賦の才の1種類を強化する化身インカーネーション

 50万円 1UP 

 100万円 3UP 

 200万円 5UP

 300万円 全UP


「もちろん。節約の全強化だ。」


『よかろう。』


 春人の天賦の才 節約 が最大になる。


 節約 -Ⅹ-

 このスキルを持つ者に絶大な節約効果を齎す。

 ①スキルで円を使用する場合、必ず9割引き価格になる。

 ②ゴールドを使用する場合は、必ず円に変換し50ゴールドを100円に変換する。

 ③異世界での買い物には、20%から50%の割引価格が適用される。

 ※ただし、この効果は会計時に発動し、ひとつの商品につき最初の一度しか発動しない。


「おっし狙い通り。これで、スキル使用は全てが9割引きだ。この格闘遊戯もその対象だろ?」


『もちろんだ。で、次はどうする。24時間、格闘遊戯がプレイ出来るのは今日1日だけ。後は一週間に1時間のみだぞ。ボーナスも今日中に使う事が前提とされている。』


 格闘遊戯にはボーナスが二つついている。

 ①初回無料ボーナス

 ②ボーナスセット

{ ジョブ付与 2回無料

  属性付与 1回無料

  天賦の才昇格 1回無料

  天賦の才付与 11回無料  }


「ああ。次だけはボーナス無しでやるよ。先につけないといけないものがあるからな。ありがとなトゥルトゥル。もういいぞ。」


『そうか。では健闘を祈る。さらばである。』



 春人はレイアの頭を撫でる。


「次はレイアの番だぞ。」


「無理なの。あんな魔王みたいに強い人、倒せないの。」


「大丈夫。ゲームは俺がプレイするんだ。」


 レイアは言っている意味が分からなかった。


 そして、この格闘遊戯が終わった後、レイアは驚愕の事実と『奇跡』を知る事になる。

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