無能だからと実家を追いだされ底辺をさまよってる冒険者だったけど、ユニークスキル【魔眼】が覚醒したので無双してみる~え? 歓迎してやるから家に帰って来い? お断わりします~
第39話 今更仲間になんかなりたくないんだよね
第39話 今更仲間になんかなりたくないんだよね
「ひどい目に合った……」
僕は先日の出来事を思い返す。フレアによってライトニングチェアに拘束されてから、僕は全身の至る所に雷を流され、そして気絶した。
目が覚めた時には僕はベッドの上に横たわっていた。僕が気絶している間に、ライトニングチェアはフレアの手によってラマテール公爵家に引き渡されたらしい。
「もうだいぶ時間が経ったではないですか。それに、ちゃんと回復ポーションも使ったので後遺症などの心配もないと思いますけど」
「その心配はしていないさ。だけど、未だに身体中に雷が通った感覚が残っているんだよ」
「更に時間がたてば治ると思いますけど……。今日ギルドに行くのはやめますか?」
「いや、その必要はない。あくまで感覚が残っているだけで、痛みがあったり、身体が動かないわけじゃないからな」
「なら良かったです」
僕らは今、冒険者ギルドに向かっている。先日約束した通り、一緒にギルドの依頼をこなすためだ。ギルドに入ると、そのまままっすぐに依頼の張りだされた掲示板の前に立つ。
「どれにする?」
「なるべく魔物のレベルが高く、数が多い場所の依頼が望ましいですね。ニブルヘイムで範囲魔法や高位の魔法を使いたいですし」
「となると……」
「ラースさん、ちょっと良いかな?」
フレアと話し合っていると、横からレイピアを持った冒険者とその取り巻きに声をかけられる。彼らのパーティー名は【鉄の嵐】だったかな。等級は僕と同じ銀級冒険者のパーティーだ。
「何の用だ?」
「依頼を探しているようだけど、良かったら僕らのパーティーに加入しないかい? 今、前衛が一人足りなくてねぇ。良ければそこのお嬢さんも。服装的にあなたは後衛の魔法職だろう? ならば大歓迎だよ」
僕は視線を感じて辺りを見回す。見ると、【鉄の嵐】とは関係のない冒険者たちまでもが僕らのことを興味深く見つめている。
「僕は今のところ誰かとパーティーを組む気はないな」
「そこのお嬢さんとは組むのにかい?」
「私がラースとパーティーを組んでいるのはたまたまです。私は魔道具作成師なので、自分の作った魔道具を魔物に使うため彼に同行するのですよ」
「だが、鉄級で受けられる魔物の討伐依頼は少ないんじゃないかな。僕らと行動を共にした方が効率的に魔道具の実験ができると思うけど」
「いや、この前僕は銀級冒険者になったんだ。だから僕らだけでもそれなりの依頼を受けられるさ」
「そうかい。残念だよ。気が向いたら声をかけてくれたまえ」
【鉄の嵐】たちはあっさりと引き下がっていった。僕らのことを興味深く見ていた冒険者たちも、興味をなくしたかのように視線を動かしていく。
おそらく、僕が他の冒険者とパーティーを組む気がないことが分かったからだろう。
「良かったのですか? 複数人で挑んだ方が良い依頼なども中にはあるでしょうから、今のうちに人脈を広げるべきだとおもうのですけれど」
「ああ。僕を偽物とかいうあだ名で呼んでいた奴らと関わるくらいなら、ソロの冒険者でいた方がましだよ」
「偽物とは?」
僕はフレアに、あだ名の由来を説明する。
「ラースにそのようなことを言っておいて、今更仲間にならないかとは、随分都合の良い方々ですね」
「まあ、グレシャムを倒した僕に今更ちょっかいはかけてこないだろうし、もうどうでも良いかな」
「あなたがあまり気にしていないのでしたら良かったです」
ちなみに、グレシャムはもうトロンの町にはいない。
怪我はもう完治したらしいが、鉄級冒険者だった僕に決闘で負けたという噂が広まってしまい、町中で笑い者にされたことに耐えられなくなったのか、同じパーティメンバーたちと一緒にトロンを出ていったようだ。
冒険者たちをあしらった僕らは、再び掲示板を見ながら手頃が依頼がないか物色する。
「これなどどうでしょう」
フレアが気になった依頼書に手を伸ばそうとするも、彼女の身長より少し高い位置に張りだされているため、取るのに苦戦している。
「きゅいー」
そこで、シルが飛んで依頼書を彼女の下に運んできた。
「シル、ありがとう」
「きゅいきゅい」
「それで、どんな依頼なんだ?」
「マキュイガー火山での遺品回収ですね。『銀級以上の冒険者が依頼を受けることを推奨』と書かれています」
よく見ると、依頼書はそれなりに色あせているように思える。
「掲示板の上の方にあったやつだし、かなりの長期間放置されてきたものだと思うんだが……。大丈夫か?」
長い時間、放置されている塩漬け依頼は良いものが少ない。依頼の難易度と報酬の金額が見合っていなかったり、過去に多くの冒険者が命を落とした危険なダンジョンやフィールドでの活動が求められる場合が多いからだ。
もちろん、高ランク冒険者向けの依頼で、ギルドに依頼をこなせる人間がいないだけというケースもあるが。その場合も依頼自体が危険なものであることには変わりがない。
「最悪失敗しても問題ないでしょう。なにしろ、失敗しても罰金等はないとも書かれていますし」
「まぁ、それなら良いか。依頼内容も強力な魔物の討伐とかではなく、遺品回収だしな。マキュイガー火山は灼熱の大地だし、遺品を探し回るのは大変そうだ。依頼を引き受ける冒険者がいないのもうなづける」
「ですが、遺品の捜索をする道中で魔物に遭遇することは多いでしょうし。楽しみですね。魔導書ニブルヘイムに収録された魔法が試せるわけですから。魔物の討伐依頼ですと魔物の素材が痛まないように注意を払う必要がありますが、遺品回収ならその必要もなく、強力な魔法も使えますし」
「なるほど。だからこの依頼にしようと考えたわけか」
『魔導書だけでなく、我の実力も確認してほしいものだな』
腰に吊るされた魔剣エラムが声をかけてくる。
「もちろん」
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