第5話 前書き後書きあり やはり金と権力はすべてを解決する

 前書き

 今回は弟のディオ視点となります。

 ―――――――――――――――――――――――


「ディオ、こんな夜遅くまでなにをしていたのだ!」


 王都にある学園にて、1人の教師が怒鳴り散らしていた。


「あ゛あ゛ん? てめぇには関係ねぇだろ!」


 俺はイライラしながら返事をする。時期ヴィクトル辺境伯後継者となった俺は学園に通わされていた。


 最初、雷魔法を本格的に使えるだろうと思っていたが、実際に通ってみたらそんなことはなかった。


 毎日のように魔法とは無縁な座学や運動ばかりさせられることに飽きた俺は、授業なんてサボりまくっている。


「関係あるわ! お前は私の生徒なのだからな! 授業にもろくに出席せず、門限をすぎてほっつき歩いているお前をしかるのは当然のことだ!」


「うるせぇなぁ。とりあえず、ここへは馬を取りに来ただけだから、また出て行くわ」


「なんだと! 貴様、どれだけふざけたまねをすれば気が済むんだ!!!」


「さあな」


 俺はそのまま厩舎きゅうしゃに入ると、馬にまたがり学園を飛びだしていく。


「くそう。これはもうディオの実家に連絡する他あるまい」


 学園の教師がなにか言っていたような気がするが、どうせいつもの文句だろう。無視して構わねぇな。俺は振り返ることもせず、馬を走らせ続けた。



 ◆❖◇◇❖◆



「ったく。あのクソ教師は本当に面倒くさいな。子爵のくせに生意気なこと言いやがって。もうしばらく学園に戻る必要はねぇかな」


 俺は口元を歪ませながら呟くと、馬を走らせながら王都の北西へと向かう。きらびやかな王都中央とは異なり、そこは多くの寂れた家々が立ち並んだスラム街だ。


 あまり治安はよくないもののそんなことはどうでもいい。なにせ俺には雷魔法も、大量の魔力もあるわけだからな。


 そこらのごろつきが襲ってきたとしても、返り討ちにしてやるだけだ。俺は強いからな。あの落ちこぼれの兄とは違って。


 俺はとある大きな邸宅の前に立った。門には2人の屈強そうな男が立っている。


「通してくれ」


 顔パスで中に入る。ここは闇ギルドの運営する宿だ。もちろんただの宿なんかじゃない。


 賭博場や娼館、酒場などが併設されているテーマパークのような場所だ。


 国の認可を貰っていないため違法だが、役人に賄賂わいろを渡すことによって黙認されているらしい。


「いらっしゃいませ、ディオ様。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 出迎えてくれたのは正装を身にまとった従業員だ。俺は彼の案内の下、入口から真っ直ぐ進み、奥にある階段を降りていく。


 すると、目の前に豪華絢爛けんらんな部屋が現れる。ここは一部の権力者や金持ちしか入れない特別室だ。


「ディオさん、やっと来ましたか」


「全く、遅いですよ。もう先に飲み始めちまったところです」


 特別室にはもうすでに何人もの先客がいるが、俺が来たことを知るやいなや全員がこちらを向く。彼らは全員俺みたいな貴族の息子たちだ。とはいっても、ここにいるのは所詮は小者しかいない。


 貴族家の中でも、次男三男だったため爵位を継ぐこともできず、あまり大切にされてこなかったり、家が落ちぶれているせいで学園に通えないようなやつばかりだ。


「わりいわりぃ。あのクソ教師に引き留められちまってよぉ」


 こんなクズみたいなやつらでも、俺が次期辺境伯なことと、比較的珍しい【雷魔法】を持っているために敬語だし、なんだかんだ敬意を払ってくる。


 全く、俺の偉大さが分かるなんて、学園のやつらとは大違いだぜ。辺境伯に就任したら、こいつらを取り立てるのも悪くねぇな。


 俺は彼らと酒を飲みつつ、トランプやサイコロを使った賭けをしていく。賭けに使ってる金はすべて学園の中でも気が弱く、爵位も低い生徒からカツアゲして手に入れたものだ。


 酒もその金で買っている。


「よし、上がりだ!」


 最後に遊んだカードゲームにて、一番最初に上がる。おかげで賭け金の大半が俺の物となった。


「くそ~。ディオさん本当に容赦ないですねぇ」


「本当ですよ。毎度一番勝利する率が高くて羨ましいです」


「ははは。俺くらいになってくるとこんなの朝飯前さ」


 俺はやたらと賭け事に対する運は高い。なので毎回それなりに儲けてはいる。


「やべぇ。また負けちまった」


 そんな中、一人の男が顔を青白くして震えていた。ええと、確かこいつはエッジ。ミラーノフ子爵家の次男だったか。


 先代がこしらえた借金のせいで没落気味らしい。


「エッジ! なにしけたツラしてんだよ!」


 隣のやつが彼の背中をバンバンと叩く。


「ごめん。大丈夫だよ」


「?」


 そういいつつ、エッジは一瞬俺の方を睨んだ気がした。


 ―――――――――――――――――――――――

 うーん、本当にディオのことを慕っているのであれば、先に酒を飲み始めたりしないと思うんですけど、どうなんでしょうね。

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