第2話 女子高生になっちゃった!?

 朝起きると理人は、胸のあたりにいままでに感じたことのない重みを感じた。肩のあたりもなんとなく重い感じがする。

 昨日変な体勢で寝てしまったのかなと、あまり深く考えずトイレに入った。


 ―――あれが、ない!


 トイレに入り用を足そうと思ってズボンを下げたとき、股間にあるべきものがなくなっていたことに気づいた。

 予想外の出来事に驚いたが、今は原因を考えるより先に尿意の処理をしなくてはと思い出し、ひとまずトイレに座ることにした。


 ―――何が起きた?


 トイレをしながら、考えてみたが何が起きているのか分からない。股間にあるものがなくなっているということは、ひょっとして。

 理人は恐る恐る胸を触ってみた。柔らかい感触があった。

 今きづいたが、寝間着もいつも使っているグレーのスウェットから、ピンクでフリルいっぱいのパジャマに変わっていた。


「驚いたか?」


 昨日夢に出てきた、仙人のような神様がいきなりトイレの中に現れた。


「昨日のジジイ!何をした!?」

「何をしたって、見ての通りお主の体を女にしただけだ。囲碁の才能をくれるなら、何でもすると言っておったろ」


 その言葉を聞くと、理人は慌ててトイレから出て、洗面台で自分の顔を確認した。

 目や鼻の形にすこし以前の面影が残っているが、肩まで伸びた髪、少し丸みをおびた顔の輪郭、透明感のある白い肌、美少女と言っていい顔が鏡に写っていた。


「気に入ってくれたか?これから一緒にいるなら、ダサい男よりもかわいい女子高生の方が良いから変えておいたぞ」

「女子高生!?」

「そうじゃ、名前は理央になっておる。桜が丘高校2年生、17歳の女子高生じゃ」

「女子高生って、年齢まで変わってるじゃん。戸籍とかどうした?」

「そんなもん、神様なんだからどうにでもなる。それに、お主が困らないように藤沢理央として生きてきた17年間の記憶も作っておいたぞ。ありがたく思え」


 恩着せがましく言われても、全然ありがたくない。

 高校の場所やクラスメイトの名前などで試してみたが、確かにその記憶はある。

 理央として生まれ変わっていくのに、支障はなさそうだ。


 ―――肝心の囲碁の才能はどうなんだ?


 理央は洗面所から部屋に戻った。カーテンも緑からピンクになっていたり、ぬいぐるみが置いてあったりと、部屋の雰囲気も以前からガラリと変わり女子高生らしい部屋になっていた。


 神様ってなんでもありなんだな。そう思いながら、本棚から詰碁の本を取り出して、ページをめくった。

 問題の図を見た瞬間に、パッと頭の中に正解の手順が浮かんでくる。今までよりも速く正確に解けるようになっていた。


「嘘はついておらんぞ。お主に欠けていた、急所をみつける力を授けた。」

「爺さん、じゃなかった、神様、ありがとうございます」

「ようやく、敬語になったな。一つ言っておくが、あくまでも儂が与えたのは、才能だけだ。才能も磨かなければ光らない。急所を見つけたとしてもその後展開を読む力がないと、宝の持ち腐れじゃ。これからも精進を怠るでないぞ」

「わかりました」

「ところで、そろそろ着替えないと学校に遅れるぞ」


 神様に言われて時計を見てみると、学校に行く時間が迫っていた。着替えるためにクローゼットへと向かった。

 歩きながら桜が丘高校は制服もあるが、私服での登校もOKだったことを思い出した。 


 クローゼットを開くと、紺地にピンクのラインのチェックスカートとピンクのブラウスとリボンといった制服の他に、スカートやブラウスなど女性ものの服が目に入った。手に取って見てみる。


「ジジイ!なんで、ミニスカートばかりなんだ。」

「またしても、ジジイよばわりか。神様に対する敬意というのはないのか?私服でも学校に行けるんだから、そのピンクのスカートと白のブラウスなんかどうじゃ」


 神様の言う白のブラウスは、シースルーになっておりスケスケだ。どうやら神様のくせして、割と俗っぽい趣味のようだ。

 他の服も見てみたが、同じようにスカートの丈は短く、トップスも露出多めであったため、制服以外はとても着れそうにない。


 残念がっている神様を横目に着替えを始めた。パジャマを脱いだところで、ブラジャーをつけていないことに気づいた。さすがにノーブラではまずいことぐらい男の俺でもわかるので、ブラジャーを探すが見つからない。


「ジジイ!ブラジャーはないのか?」

「衣装ケースの一番上に入れてある」


 言われたところを探すと、黒のスポーツブラが入ってあった。


「意外と下着はまともなんだな」

「それはまたのお楽しみというやつじゃ」


 まだ何か企んでいそうだったが、時間も無かったため、スポーツブラを付け制服に着替えることにした。スカートを履きホックを止め、合わせが逆で慣れないブラウスのボタンをとめ、リボンをつけた。


 クローゼットについている鏡で自分の姿を見てみると、かわいらしい女子高生が写っていた。

 スカートの裏地ってツルツルしていて気持ちいい。でも、太ももが直接触れ合うことで伝わってくる体温が生暖かく気持ち悪い。

 初めてのスカートの感触を確かめていたら、学校に行く時間が迫ってることに気づいた。

 玄関に行き、よく高校生が履いているローファーと呼ばれる革靴を履き、家を出た。








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