第10話 運命の人はオッドアイ



 これもかなり古い映画だと思う。ずいぶん前の新春映画で見た。タイトル忘れてしまってるやつですね。すごくファンタジックで素敵な話だったのに。

 たぶん、アメリカ映画だったと思うんだけど。


 主役は三姉妹のなかの末っ子。と言っても、現在、アラサー。じつはこの三人。代々、魔女の家系に生まれた魔女。と言っても、いい魔女です。奥様は魔女的な、可愛い魔女ですね。


 物語の始まりは、まだヒロインが少女のころ。魔法陣のなかに運命の相手が現れる魔法を試しているところから、だったかな?

 このときに、現れた少年がいたんだけど。


 目が覚めると現在に戻っていて、ヒロインはすっかり恋をあきらめていた。なぜなら、彼女の愛する人は必ず死んでしまうからだ。これまで三人の恋人がいたけど、全員、若くして亡くなってしまった。


 彼女を心配して、新しい人を作りなさいよと勧める姉二人。

「いいのよ。わたしは一生、一人で生きていくわ」と強がるヒロイン。


 魔女と言っても、ふだんはふつうに働いて暮らしている。魔女だということは世間的にはナイショだ。

 たしか、ファストフード店でウェイトレスとして働いてたんだったかな?


 ある日、その店に、よその町からやってきたイケメンがいた。ハンサムで明るく、優しく、ナイスガイ。革ジャン着て、バイクに乗ってた気がする。ちょっとジェイムス・ディーンのような。


 もう入ってきたときの演出からして、「あ、こいつが運命の人か」って感じ。

 ふわっと爽やかな風がただようような。


 この瞬間、ヒロインは恋に堕ちた。でも、じつは困ったことに、ヒロインはある体質があった。なんか忘れたけど、恋をすると何かが起こるんだった。本人が病気になってしまうような何か。相手の男を殺すんだったか、相手から自分の記憶を消すんだったか、なんかしたら治るんだけど。


 ヒロインは自分のこの体質に気づいてなかったんだと思う。知ってるのは姉二人。


「もしかして、〇〇(ヒロインが好きなにったイケメンの名前)のことが気になるんじゃないの?」

「バカね。そんなわけないじゃない。わたしの理想はブラウンの髪で、背は高くて、笑うと片方にえくぼができて、右の瞳はブルーで左はグリーン。ちょっとはにかみやで、たまになんでもないとこでつまづくけど、走るのが速くて、素敵な人よ」

「〇〇そのものじゃない」


 この会話がすごく印象に残ってる。

 しかもそのあとのシーンで彼女に会いにきた〇〇が、ほんとに彼女の言ったとおりの行動をするのが、うなりたくなるほどのいい演出。こまかい条件は僕が勝手につけくわえたものもあるけど、長々と詳細を述べてたのはほんと。たしか、ちょっと床でつまづきかけて恥ずかしそうに笑ったりしてたはず。画面的には左右の瞳の色が違ってるようには見えなかったけど、設定ではそういうことになってたらしい。今ならたぶん、カラコン入れてるところ。ヒロインが念を入れて、「そう。この条件は絶対、外せない。右はブルーで左はグリーンよ」とか言ってたので。


 日本人の常識として、オッドアイなんてほんとにいるの? みたいな衝撃を受けた作品でもあった。デビッドボウイがそうだったらしいですね。


 で、たずねてきた彼に告白されてつきあってほしいと言われるんだけど、断る彼女。


「僕のこと嫌いかい?」

「そうじゃない。あなたのことは好きよ。でも、わたし、ふみだせないの。わたしが愛した人は必ず死ぬのよ。最初のAは事故で死んだわ。次のBは病気で。Cがつきあおうって言ったとき、わたしは断ったのよ。でも、『そんなのただのぐうぜんだ。おれは恐れないよ』って。でも、Cは死んだのよ。冬の寒い日に酔っぱらって雪のなかで寝てたから(死亡した原因はほんとのとこは忘れた)。だから、もう誰ともつきあわない。誰のことも愛したらいけないのよ!」

「そんなの信じない。運命なんてあるわけない。なんだよ。ほんの三人がたまたま死んだからって、僕がそうなるとはかぎらないだろ?」

「でも……」

「僕を信じろ! 絶対に君を幸せにする。君の前で死んだりしない」

「〇〇!」


 抱きあう二人。だが、その瞬間に、ヒロインは〇〇の腕のなかで石像になった。そうだった。たしか、恋をして、好きな人と結ばれると石になってしまう体質だった。


 うろたえる男。

 そこへやってくる二人の姉。


「遅かったね。こうなったら、〇〇。あんたに協力してもらうしかない」

「協力も何も、何がどうなってるんだ?」

「エミリ(妹の名前。今てきとうに考えた)は恋をすると石になってしまうんだ。それを治す方法がたった一つだけある。あんたにしかできない」

「エミリが治るんならなんでもするよ。なんでも言ってくれ」

「あんたのなかから、エミリの記憶をなくすことさ」

「なんだって?」

「エミリにはあんたが死んだと伝えておく。恋からさめれば、もとに戻るから」

「そんな……」

「あんたは遠くの町に行って、ふつうに暮らせばいいんだよ」

「でも、エミリのことを忘れてしまうんだろ?」

「じゃあ、エミリをこのまま永遠に石にしとくのかい?」


 なんか、そんな会話があったような気がする。

 この作品の全体のテーマが運命の恋について。なので、これでもかと試練が立ちふさがる。


 これまでの三人の恋人もほんとは死んでなくて、姉の魔法で記憶を失い、遠くへ去っていた。


 悩んだすえ、〇〇もエミリのために承諾する。


「わかった。やってくれ」


 石化がとけ、もとに戻ったエミリ。石になってるあいだの記憶はないので、自分がそういう体質だということは知らない。〇〇が死んだと聞かされ、なげき悲しむ。今度こそ、もう二度と恋なんてしない……。


 落胆し、元気のないエミリ。

 そんなとき、子どものころにした魔法を思いだす。運命の相手を呼びだす魔法。魔法陣のなかに一瞬だけ現れた少年。


(あのときの男の子、目の色がオッドアイだった。右はブルー。左はグリーン……まさか、〇〇なの?)


 エミリは〇〇が死んだと思ってるので、もう一度だけ会ってみたい、亡霊でもいいと思い、あのときの魔法を試してみる。


「ダメだよ。エミリ。やめるんだ」

「それをやっちゃいけない!」


 妹がまた石化すると思い、止めに来る姉たち。

 だが、そのときには魔法が完了していて、一陣の風とともに、魔法陣のなかに現れたのは、〇〇だった。エミリのことを忘れてるはずなのに、彼は微笑んだ。


「子どものころ、小さな魔女を見たことがあるんだ。君はそのときの女の子にそっくりだ」

「生きてたのね。〇〇……」


 抱きあう二人。止める姉。だが、なぜか、エミリは石化しない。運命の恋がエミリの呪いを打ちやぶったのだ。めでたし、めでたし。


 そんな感じだったと思う。

 すごくハッピーな気持ちになれる可愛いファンタジーでした。ファンタジーと言ってもラノベっぽいわけじゃなく、大人も楽しめる恋愛ファンタジー。


 タイトルも何もおぼえてないけど、良質な映画だったので、これもお勧め。


 愛する人が必ず死ぬっていうのは、じつはうちのワレスさんがそうなんだけど、言わせてもらえばパクりではありません。このときにはすでにワレスさんのシリーズを書いてて、むしろ、その番組紹介にビックリして「見てみよう」と思ったので。


 結果、うちとはずいぶん違うタイプの明るく可愛いお話でした。こういうふうに料理すれば、一般ウケするのですね……。

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