用語集2-1 医学用語(基礎医学編)

※用語集はおまけコーナーです。読まなくても物語の理解には差し支えありません。

※特に断りがない場合、この用語集の内容は作中の設定ではなく現実に準拠しています。

※用語集に含まれる情報は2023年3月時点のものであり、現行の制度とは一致していない場合があります。



・医学と医療の違い


 一般に医学は学問、医療は実社会への医学の応用とされます。例として、消化器内科医は消化器内科学という「医学」を理解した上で患者に問診、内視鏡検査・内視鏡治療、投薬といった「医療」行為を施しています。


・臨床医学と基礎医学


 医療現場における患者の治療を目的とする臨床医学に対し、臨床医学の原理となる学問の研究を目的とするのが基礎医学です。

 臨床医学と基礎医学との関係は工学部と理学部との関係に近く、お互いに成果をフィードバックすることで医学は進歩します。

 例えば神経内科では神経伝導や筋収縮に異常が生じる疾患を扱いますが、「神経伝導」「筋収縮」といったヒトの体内における生命現象そのものを研究するのは生理学の役割であり、神経や筋の構造を研究するのは解剖学の役割です。神経伝導や筋収縮に関与する化学物質は生化学研究の対象となり、神経内科で用いられる治療薬の研究には薬理学の知見が必要となります。

 このように臨床医学と基礎医学は表裏一体の存在であり、医学の発展には両者の協調が必要不可欠と言えます。


・社会医学


 患者の治療を目的とする臨床医学、その原理を研究する基礎医学に対し、医学・医療の社会的側面や社会生活への応用を研究する学問は社会医学と呼ばれます。

 公衆衛生学、法医学、心理学・行動科学といった学問があり、基礎医学よりもさらにマイナーですが医療の現場で重要な役割を果たしています。


・基礎医学その1「解剖学」


 人体のマクロな構造を学ぶ学問ですが、ミクロな構造を学ぶ組織学や人体の発生を学ぶ発生学も解剖学教室の管轄にあります。解剖学のうち、特にヒトの骨や骨格こっかくについて学ぶ学問を骨学こつがくと呼びます。

 医学の中でも最古の学問であるため現在では解剖学を中心に研究している人は少なく、組織学や発生学の研究が主流です。


・基礎医学その2「生化学」


 ヒトの体内で起きている化学現象について学ぶ学問です。

 アミノ酸や蛋白質、核酸といった細胞はもちろんウイルスよりも小さい構造体を研究するため、基礎医学の中で最もミクロな視点の学問と言えます。


・基礎医学その3「生理学」


 人体の構造を学ぶ解剖学とは対照的に、人体の機能を学ぶ学問です。

 「時計を解体して内部構造を調べるのが解剖学、動いている時計がなぜ動くのかを調べるのが生理学」という説明があるように、生理学では人体が正常に働く仕組みを研究します。


・基礎医学その4「微生物学」


 細菌・真菌・ウイルス・原虫といった感染症を引き起こす生物について学ぶ学問ですが、免疫機構について学ぶ免疫学や感染症そのものを学ぶ感染症学も微生物学教室の管轄にあります。

 厳密にはウイルスは生物ではありませんが、「微生物」という用語にはウイルスも含まれます。また、回虫やアニサキスなどの蠕虫ぜんちゅうや蚊・ハエ・ダニなどの衛生動物は肉眼で見えるほど大きいため微生物には含まれませんが、蠕虫にはヒトに寄生して害をもたらすものが多く、衛生動物の多くは感染症を媒介するため蠕虫や衛生動物の研究も微生物学教室の管轄にあります。

 病理学と並んで臨床医学に近く、感染症内科という診療科が存在します。


・基礎医学その5「薬理学」


 ヒトの体内における薬物の動態や薬理作用について学ぶ学問です。

 病理学・微生物学と異なり薬理学そのものが診療科となることはありませんが、新薬の開発や既存薬物の改良を通じて臨床医学にも大きく貢献しています。


・基礎医学その6「病理学」


 正常の人体の構造を学ぶ解剖学、正常の人体の機能を学ぶ生理学に対し、病気の人体について学ぶのが病理学です。

 「やまいことわり」を学ぶ基礎医学としての病理学に対し、病変を顕微鏡で見て診断を下す臨床医学は病理診断学と呼ばれ、医師免許を保有している病理学研究者は研究と病理診断の両方を手がけている場合が多いです。

 現在では病理診断学に基づいて「病理診断科」という診療科が成立しており、病理学研究を行わず病理診断科の臨床医としてのみ働く病理医も珍しくありません。

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