166 金が欲しいか
メッセージを送信してスマホをポケットに戻し、息を吐いてソファにもたれているとレースゲームで遊んでいた若い男性のグループが近寄ってきた。
店の隅にあるゲームを遊びに行くのだろうかと思っていると、両耳にピアスを付けた金髪の男が龍之介の隣に腰かけてきた。
龍之介が不穏な雰囲気を察した瞬間、金髪の男は口を開き、
「君、夜遊びはいけないんじゃないかなあ。保護者同伴でも子供は22時までしかゲームセンターで遊んじゃいけないんだよ?」
相手を小馬鹿にした口調でそう言った。
「ああ、心配されなくてもボクは成人してるから大丈夫です。今は友達と来てるんで」
「へえー、成人しとるんや。せやったらお金も一杯持っとるんとちゃうの? ちょっと俺らに分けてくれん?」
龍之介の目の前に立っているモヒカン刈りの巨漢が関西弁で言った。
「お金は大して持ってないですし、見ず知らずの人にあげる訳ないですよ。じゃあボクはこの辺で」
外見に
「待てやお前。俺らをなめたらあかんで」
ラフな服装をした背の高い男がそう言って左手で龍之介の右肩をつかんだ。
肩をつかまれた瞬間、龍之介は瞬時に相手の左腕を両手で捉え、
「何するんですか、触らないでください」
「あいたたたたっ!!」
全力でねじり上げた。
「ちょっと君、暴力はいけないんじゃない? 僕らは別に君に危害を加えようって訳じゃないのに」
「うるせえ、カツアゲならもっと弱い奴にやれ」
「あだだだだ!!」
金髪の男が
かなり強い力を加えたからか背の高い男はそのまま床に倒れて苦しみ始めた。
「こいつ1人で俺らに勝てる
「勝てると思ってるよ。お前から黙らせてやる」
そう言って龍之介がモヒカンの巨漢に襲いかかろうとした瞬間、
「薬師寺、その辺でやめとけ」
トイレから帰ってきたらしい公祐が後方からそう言った。
「呉君、危ないから向こう行ってて!!」
「何やお前、このガキのダチか!?」
公祐の身の危険を案じた龍之介が逃げるよう促すと、モヒカンの巨漢は公祐に対して声を荒げた。
その時。
「お前ら、金が欲しいんだろ? じゃあやるよ、ほら!!」
公祐はカバンから取り出した財布に手を突っ込むと、そのまま大量の一万円札を取り出した。
合計で20枚ほどの一万円札をつかむと公祐はそれを店内の地面にばらまいた。
「こ、これ、本物の一万円か!?」
「バカ言え、どうせ偽物だ」
「本物だよ! さあ拾え、この金でいくらでも遊んでこい!」
突然の行為に混乱する不良たちに公祐はハイテンションで叫ぶと、
「龍之介! ちょうどいい頃合いだ、俺らは帰るぞ!!」
初めて龍之介の名前を呼び、そのまま手を取って走り出した。
「呉君……」
公祐に右手を引かれながら、龍之介は目の前で起きた展開に驚きを感じていた。
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