163 ほのぼの湯けむりガールズ

 脱衣所で衣服を脱いでバスタオルを身体に巻いた4人の女子医学生は温泉に続く扉をガラガラと開くと、湯気の漂う岩の地面に足を踏み入れた。


「来た来た、ここがコズミックホテルの温泉だよ。人工のお湯だけど結構入り心地いいんだから」


 昨年もここに来たことのある理子はそう言うと後輩である化奈と恵理に手本を示すようにかけ湯を浴びた。


「とりあえず身体洗います? 壬生川さん、うち背中流すわ」

「ありがとう。じゃあ私たちはそっちで洗ってきますね」


 化奈と恵理はそう言うと壁際に設けられたシャワー台に向かった。



「私たちもそうしよっか。……あの、さっちゃん?」

「うひひひ…………あ、ごめん。私もヤミ子の背中流すから」


 歩いていく化奈と恵理のうなじを凝視していた剖良は理子の声にはっと我に返った。



 それから身体を洗い終えると、4人は連れ立って広々とした温泉へと足を浸けた。


「ちょうどいい温度ですね。壬生川さん、バスタオルはここに置いとかん?」

「確かにタオルはお湯に浸けちゃいけないわね。こうしてと……」

「!?」


 身体に巻き付いていたタオルを取り払った恵理の姿を見て、剖良の脳内に電撃が走った。



「私もここに置いとこっと。ほら、さっちゃんもちゃんと脱いで」

「うっ、うん、今すぐ脱ぐから……」


 その直後に理子の生まれたままの姿も目にすることになり、剖良はあまりの衝撃と眼福にしばらく動けなかった。



 4人とも温泉に浸かり、向かって左側から化奈、恵理、剖良、理子という順番で並んで温泉を楽しんでいる。


「皆で温泉っていいですね。カナちゃんの実家ならもっと広いお風呂があったりするの?」

「社長言うても家はただの一軒家やからそんなことないで。うちも壬生川さんと先輩と温泉入れて嬉しいわ」


 温泉の中で談笑し合う後輩2名の姿を理子も微笑ましく眺めていた。


「去年はさっちゃんと2人だけだったから、私も4人で入れてすごく嬉しい。来年も皆で入れたらいいね」

「私もです。さっちゃん先輩、お湯加減どうですか?」


 理子はそう言って右腕を剖良の左腕に組み、恵理も剖良のいる側に振り向いた。



「!!??」


 理子のほどよいサイズの胸が左腕に、恵理の豊かな胸が右腕に当たり、剖良の脳内に最大級の電撃が走った。



(2つの柔らかさに包まれるなんて、ここは楽園……?)


 幸せの絶頂に達した所で剖良は鼻から血を流し始め、そのまま背中から後ろ向きに倒れた。



「わっ、さっちゃんが鼻血出して倒れてる! 湯あたりしたの!?」

「ヤミ子先輩、とりあえず外に出してあげましょう!」

「うちも手伝います!」


 気絶した剖良はそのまま3人の手で温泉から引き揚げられ、理子は全裸のまま剖良を背負って温泉を出ていった。



 突然のアクシデントにより化奈と恵理は2人きりになり、このまま出るのもどうかということで再び温泉に浸かった。


「さっちゃん無事やったらええね。ヤミ子先輩が付いてるから大丈夫やろけど」

「それは心配ないわよ。私たちはゆっくり温泉を楽しみましょ」


 そのまま同級生の女子同士の他愛もない話が続き、一旦会話が途絶えた所で化奈は恵理にある話題を切り出した。



「……壬生川さん、白神君と付き合い始めたんやってな」

「ええ、そうよ。付き合う前からあんまり変わってないけどね」


 化奈は思い人であった塔也が恵理と付き合い始めたことを2回生女子の情報網で知り、予想がついていた結果とはいえ人生で初めての失恋にはそれなりに傷ついていた。


「うちは白神君のこと好きやったけど、やっぱり壬生川さんには勝てへんわ。ずっと前から知り合いやったらしいし、うちは壬生川さんほど美人ちゃうし」

「そんなことはないわよ、カナちゃん。塔也は私と同級生だったことを完全に忘れてたしカナちゃんだってすっごく美人なんだから。それこそ、カナちゃんが先にはっきり告白してたら塔也はカナちゃんを選んだかも」

「あはは、そう思うとくわ」


 化奈はそう言って苦笑し、恵理は相手に複雑な思いがあるとしてもこのまま友人関係を続けていきたいと強く思った。



「カナちゃんこそ誰かいい人いないの? 塔也なんかじゃなくても他に素敵な男性は一杯いるはずよ」

「せやね。いい人かって言うと微妙やけど2歳下の従弟いとこはうちに惚れてるらしくて、将来は結婚したいんやって。まだ高校生やから女の子をよう知らんだけやとは思うけど」

「そうなのね。その従弟ってどんな人なの?」


 恵理の質問を受け、化奈は従弟である珠樹たまきの人となりについて簡単に説明した。


「へえー、その珠樹君って学校でも塾でも人気者なのね。いとこ同士は結婚できるんだしカナちゃんも前向きに考えてあげたら?」

「うーん、いとこ同士なんはそこまで気にしてへんねんけどうちから見たら珠樹はまだ未熟やねん。はよう大人になろおもて頑張ってる所やから、うちも近くから見守ってあげようとはおもてる」

「なるほどね。将来的にお付き合いしてもしなくても、お互いを大事に思える関係は美しいと思うわよ」


 率直に感想を述べた恵理に化奈はありがと、と返事した。



 入浴時間が長くなってきて若干頭が火照ほてってきた化奈は、恵理にあるお願いをすることにした。


「そういえば壬生川さんってめっちゃスタイルええよね。うちはあんまり胸ないからうらやましいわ」

「女の子にはそう言われるけど、大きいのって結構大変なのよ。男の人には大抵じろじろ見られるし、胸が目立たない服を選ぶのも手間だし。できることならもうちょっと普通のサイズに生まれたかったわ」

「そうなんや。……ちょっと触ってみてもええ?」

「えっ? 別にいいわよ。どうぞ、好きにして」


 恵理はそう言うと化奈に背中を向け、化奈は背後から両腕を回して恵理の乳房に手をかけた。


 柔らかくも重量感のある感触が両手に伝わり、化奈はやはり自分にもこれがあればいいのにと思った。



(白神君も、これを好き放題するんやな……)


 塔也が今後恵理とするはずの行為を思い浮かべた化奈は、無意識的に恵理の胸を強く揉みしだいていた。



「ちょ、ちょっとカナちゃん、痛い!」

「あ、ごめん。力入り過ぎてもうたわ……」


 自分も湯あたりしてきたと気づき、化奈はそのまま恵理に声をかけて一緒に温泉を出た。


 温泉から出る最中も恵理の乳房は見事に揺れていて、化奈は人生の不条理さを感じた。

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