129 気分は新興進学校
「じゃ、次は私から自己紹介する番かな。前にも話したかも知れないけど私は生まれも育ちも兵庫県の西宮市で、出身高校は宝塚市の
「すみません、あまり聞いたことがなくて……」
剖良先輩の出身校である
ヤッ君先輩の出身校である
「飛燕高校はお酒で有名なヨントリーが作った私立高校で、幼稚園から高校まで一貫のセレブな学校なの。十数年前までは地元のお坊ちゃんお嬢ちゃんが行く所って扱いで、中学や高校から入る生徒はよその進学校の滑り止めがほとんどだったから全国的には全然知られてないんだよね。私が高校に入学する数年前から段々進学実績が上がってきて、今では高校から入れる所では兵庫県内トップクラスの進学校になっちゃったの。まあ私が一浪でここに入れたって聞いた元担任の先生が泣いて喜ぶぐらいだから、まだ大したレベルじゃないけどね」
「なるほど、最近存在感を増してきてる高校なんですね」
ワインやビールはもちろん清涼飲料水のブランドでも有名なヨントリーが作った学校というだけでも面白いが、滑り止め扱いから十年ちょっとで県内トップクラスの進学校になる高校というのは珍しいと思った。
医学部受験ブームにより最近では高校の進学実績は「国公立大学」「私立難関大学」の他に「医学部医学科」だけの実績もアピールされるのが一般的で、浪人しての合格でも医学部医学科の進学実績を稼げるのは高校にとって大変ありがたいらしい。ヤミ子先輩が畿内医大に合格したことも飛燕高校では「畿内医科大学医学部医学科プラス1名(既卒生)」として扱われているのだろう。
「ということは、ヤミ子先輩も飛燕高校には進学実績に魅力を感じて入学されたんですか?」
高校受験をしている時点で先輩はおそらく公立中学校の出身なのだろうが、先輩の話を聞く限りでは公立高校の滑り止めにした訳ではなさそうだった。
「いや、飛燕高校を第一志望にしてたのは事実なんだけど進学実績はおまけかな。兵庫県の公立高校入試では5教科だけじゃなくて副教科の成績もすごく重視されるんだけど、私って本当にびっくりするぐらい運動音痴だから中3になっても体育の評定が5段階で2だったんだよ。5教科はよくできたし担任の先生からは頑張って公立トップ校を狙おうって言われたんだけど、苦手な体育を無理に頑張るのが嫌になっちゃって両親にも相談して私立専願に切り替えたの。私立なら内申書は関係ないし5教科の筆記試験だけできれば入れるから」
「兵庫県の公立高校入試って大変なんですね……」
他の45都道府県のことは知らないが愛媛県の公立高校入試では原則として主要5教科(国語・数学・英語・理科・社会)だけが重要であり、体育・音楽・美術・技術家庭の副教科4つはおまけ程度の扱いだった。
僕も美術の成績はかなり悪かったので兵庫県のような入試制度なら公立トップ校に受かっていたかは怪しい。
「高校を出てからは
「な、なるほど……」
僕と同様に剖良先輩も途中から研究医養成コースに転入したというのは初耳だった。
その理由はおそらくヤミ子先輩の存在によるのだろうが、ヤミ子先輩本人は気づいていないかも知れないし2人が現在どういう関係なのかは僕自身分かっていないので黙っておいた。
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