73 気分は勘違い
2019年6月14日、金曜日。時刻は昼の12時30分頃。
来週月曜の6月17日からは2回生の試験が3日連続で行われることになっており、試験直前ということでこの日の2回生の授業は午前中までで終わっていた。
免疫学の講義の終了後に第二講堂前のロビーの椅子に座って人を待っていると、同級生にしてサッカー部のマネージャーである山形さんが声をかけてきた。
「お疲れー。白神君、さっきから誰か待ってるの?」
「うん。午前の講義終わったら一緒にご飯食べに行くつもり」
「試験前なのによくやるわね。よーし、当ててあげましょう。カナちゃんも恵理ちゃんもさっき帰ってたし弓道部の
「いや、そもそも女の子じゃないので……」
山形さんは僕より一つ年上の女子学生だが恋愛に関する話題になると勝手にヒートアップしがちだった。
「あっ、いたいた。遅れてごめん」
呼びかけられた声に振り向くとそこには待ち人である薬師寺龍之介先輩、通称ヤッ君先輩の姿があった。
現れた男子学生の体格はどう見ても高校生か背が高めの中学生ぐらいで中性的で美しい容貌をしていたからか、山形さんは露骨にぎょっとしていた。
「お疲れ様です。僕もさっき終わった所ですよ」
本当は10分ぐらい座っていたのを軽くごまかして言うと、
「そうなの? こっちも消化器の先生が授業延長してちょっと遅れちゃった。試験前だけど今日も2時間ぐらいは付き合ってね」
少し安心した様子で先輩はそう答えた。
「じゃあ急ぐのでこの辺で失礼します。先輩、目的地ってどの辺でしたっけ?」
「えっとね、JR皆月駅の近くの店なんだけど……」
山形さんに一言挨拶すると僕はヤッ君先輩と共に昼食の店に向けて歩き始めた。
「……白神君、そっちの方もいける人だったの?」
僕らが去った後、彼女がとんでもない勘違いをしていたことは誰も知らない。
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