グラコロ馴染み
福神漬け
第1話
10年前のあの日、隕石が落ちて世界も僕も全て終わって仕舞えばよかったのに。
康介が彼を知ったのは、大学初めのオリエンテーションでのことだった。
もちろん、彼が康介のことを知ったのはもっと後だったはずだ。目を見て話したのも大学四年の夏が初めて。いや、もしかしたらそれよりもずっと後だったのかもしれない。
だが、彼はそのことを微塵にも感じさせない。さも初めから康介を知っていたかのよう話すのだ。
それは康介にとって脅威だった。己の卑屈な性格を見透かされているような。奇妙な彼が先回りをして、彼を妬むことを許さない、と釘を刺されている。そう思った。
彼が嫌いだった、憎かった、恨めしかった。彼を構成する全てが康介と対極に位置するのだ。
おかしなものだ、実際は康介の方が彼にとって害であったと言うのに。
己では自分の害となるものか、害とならぬものなのか、と評価の仕方しか知らないのだ。己が他者に害をなすことは毛頭ない。いや、興味がないのだ。他者に不利益を与えることに罪悪感なぞ抱かない。むしろ、勝手に滅びていろ、とも思うのだ。
しかし、彼だけには不利益を与えたいと、与えても良いと思ったことはない。これだけは私の手記中で唯一の真実だと保証する。
そして康介は彼のことを大層避けた。避けに避けて、避け続けた。が、大学四年の初夏に話すことになる。
出会わなければ良かった、少なくともあの時康介に話しかけなければ良かったのだ。きっと彼は一生、悔やむ。いや、悔やむべきなのだ、恨むべきだ。でなければ私が報われない。彼にとって康介と出会ってしまっのは人生の一点”蛾”なのだ。彼の美しい庭園に放たれた排除するべき異物である。
その年の夏は一段と暑く、ジリジリと太陽がアスファルトをよく焦がした。
このアスファルトがプリンであったらカラメルの重苦しい香りが充満したことだろう。しかし、これはアスファルト、ジリジリとした重苦しい空気が漂うだけだ。
それは青天の霹靂だった。
康介は彼と自分は違う人種だと理解していた。
もし康介の性根が微少でも一般であれば、彼の隣を だろうと、そう思うのだ。構わない
例え、
「私たちは知っておくべきなのです。この世界の真理を、実情を!」
「なぜ、僕たちはわざわざ人を分類したがるんだろうね。」
「北アメリカに生息するアブラムシは2種類も種類があるのに、ちなみに!
このアブラムシ同士は交雑が生じにくく、たとえ交雑が起きても生存率が低い個体が生まれる確率が高い!ので!この集団は種文化の途中段階と、言えるのです!」
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