ツガイが当たり前の世界で、ツガイが居ない私は……

雛あひる

プロローグ

 この国にはただひとつ当たり前のことがある。それは『ツガイ』と呼ばれる魂の片割れが必ず存在するということだ。


『ツガイ』とは神が定めた運命の相手であり、何よりも尊ぶ至上の存在。


 古い建国の書物にも『ツガイ』を貴ぶ記載がいくつもされている。それほどに『ツガイ』はこの国の人々にとって大切な存在、自身が何者であるか知るために必要な存在とされている。


 だからこそ、『ツガイ』と異なる存在への理解が乏しく、『ツガイ』と死別した『カタヨク』と、そもそも『ツガイ』が存在しないこの国の当たり前の外にいる存在である『カケラ』は無意識の差別を受けることになっていたが、数が圧倒的に少ないためその問題が顕在かすることはない。


 『カケラ』の語源は定かではないが、元は『欠けた』が語源ではないかとされているため、『ツガイ』が完全な調和を意味する意味を持つならば、『カケラ』は欠けた不十分なもの、あるいは罪を前世で犯して『ツガイ』が居ない忌むべき存在とすら認知するものすらいた。


 それは『カタヨク』も同じだったが、『カタヨク』が元々『ツガイ』だったりのに対して、『カケラ』はそもそも『ツガイ』がいない存在であり、本来何があっても全力で庇ってくれる『ツガイ』を持たず生涯を『ツガイ』の居ない状態で過ごすことが決まっているとても孤独な存在。


この物語は『ツガイ』が絶対の世界に『カケラ』として生まれた少女がただこの世界の片隅で生きたいと願い続ける物語。





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