ほとんど記憶ありませんけど
秀人が意識をはっきりさせると、先程までの苦痛は一切無くなっていた。それどころか、自分のいる場所は明らかに現実世界のものではない。宇宙空間のように、どこまでも広がった部屋。目の前には美女が椅子に座っている。
「秀人君。私の事呼びましたよねー? 初めまして。私は女神アルテミス。ガイアの唯一神です。」
「女神様……もしかして、助けてくれるんですか?」
「はい。あなたの願いは異世界に転生する事で叶うでしょう。もちろん、それを叶える為にも現実世界にはいつでも戻る事が出来ますよー。それと、私のお願いをきいてくれるなら、最終的にとても大きな夢のような、それはもう素晴らしい偉大な神界の一番のお宝のような何かが貰えたりします。」
「助けてくれるなら、俺も女神様の願いに答えます。だから、どうか……どうか香――」
言葉の途中で秀人の意識が朦朧とする。女神との会話の後で、そのほとんどの部分が記憶から抜け落ちていたのだ。秀人に記憶が戻ったのは女神が全ての説明を終えた時だった。
「――説明はそれくらいです。それでは、レベル上げと仲間集めを頑張って下さい。地球とガイア、両方の星の滅亡は絶対に阻止して下さい。それとさっきも言いましたけど、地球とガイアを結ぶ扉を行き来出来る仲間は2人までです。仲間は現地で調達して下さい。それじゃあねー。ひでちゃん、よろしくー。」
「え? 女神様、ちょっと待っ――」
女神の言葉の後、秀人が何かを言いかけている途中で、視界がブラックアウトする。
「あれ~? ひでちゃん。何か言いたいみたいだったけど、もう送っちゃったよ。戻せないし仕方ないわね。あれだけ説明したんだから、なんとかなるでしょう。」
女神に肉体を転移させられ意識が完全に途切れた後、秀人は別の場所で目覚めた。転移と同時に、秀人の魂にインストールされたものが大きすぎて気を失っていた。
「んんんんー。」
秀人が目を覚ますと知らないベットで寝ている自分がいる。
6畳くらいの質素な部屋。四角い窓、小さな丸テーブルの上に花瓶とメモ帳と羽ペン、それだけがある簡易的な真新しい洋室。現実では考えられないような白い石造りの部屋。
秀人がベットから飛び起き、窓の外を眺めると、中世のヨーロッパみたいな街並みが並んでいる。
だが、秀人はここで何をすれば良いのかをまったく理解していない。女神様に会った事は覚えている。説明が終わった所もかろうじて記憶がある。
「……まいったな。女神様の説明が、完全に抜け落ちてる。どうすれば良いんだよー!」
秀人が大声で叫ぶと、部屋の扉からコンコンッというノックの音が聞こえて来た。
「あの、お客様、よろしいでしょうか?」
「どうぞー。」
「失礼します。何か問題がございましたかにゃ?」
メイド風の衣装を来た猫耳女子が部屋に入って来る。丁寧な言葉とは裏腹に不審者を見るような目つきだ。
「いえ。あの……ここはどこですか? それと、お客様って事は、俺はここに宿泊してるって事で良いのかな?」
猫耳は再び怪訝な表情を浮かべると質問に答えていた。
「にゃ? ユートピア王国王都プレバティーにある名もなき宿屋です。お客様は先程チェックインなさって、すでに朝晩2食付きで1か月分のお代を頂いておりますにゃ?」
「あ、はい。わかりました。ちょっと物忘れが激しくて、すいません。」
猫耳は秀人の不可解な言動に不信感を抱いている。だが、一応は一ヶ月分を支払い済みの太客なので、丁寧な言葉で宿の予定を案内をした。
「では、夕飯まであと5時間はあるので、お待ちくださいにゃ。17時から23時までには食堂にいらしてくださいにゃ。それでは、失礼しにゃす。」
猫耳が部屋を去ると秀人は呟いていた。
「うーん。女神様が1か月分の宿泊代を出してくれたという事なのかな。」
「まず状況を整理しなくては。
よし。
うーん。
どうすれば良いんだ?」
秀人は30分くらい部屋の中や自分の事を調べていた。
すると腰の前に空間の切れ目みたいなものが見つかる。
触ってみると空間の中に手が入り、その中に何かが入っている感触があった。
四角くて薄い紙のようなものが何回か折られていた。
女神様からの手紙だった。
『秀人君。重要な説明を忘れるような馬鹿な話はないと思うけど、念の為に大切な事を書いておきます。私達が与えたガイアでの能力について。
1.
君は
ランクL【
一番大きな異世界転移の特典はひとつの
2. ソウルと
これは地球の神様からのギフトで、君とその仲間である
ソウルについても魂の数だけ付与してあります。誰かにステータスを見られたら自分でごまかしてね。
3.アイテムと装備品
アイテムボックスには、このメモの他に私からのプレゼントなどが入ってます。
『異界への扉』『携帯ダンジョン』『携帯作業室』
そして、全ての生産職に使える防具と各生産職の専用道具。
最も重要な事は、自分から見て左上の>記号です。
そこをタップするとウインドウがでます。
スキル鑑定で自分や他人、アイテムなどの能力を確認出来ます。
あとは秀人君の願いとその方法についてですが、今回の特典として、異世界で制作したものは現実世界で正規に登録されたものとして変換されます。ですが、これは地球の神と共同で力を使う為に最初の一日が限度です。そこから発生したお金の流れは正規のものとして変換され一生疑われる事はありません。ご利用は計画的に。
最後に、分からない事があったらそのウィンドウを使って自分で調べて下さい。それでは、良い旅を。』
秀人はやっとの事で一安心する事が出来た。
「女神様が心配性で助かった。」
なにやら、たくさんのチートが用意されている事に秀人は期待が膨らんでいた。
でも、その前に香織を助けたい。
「よし! やってやる。香織姉ちゃん。必ず助けるから待ってて。そして、この機会に俺は成功する。異世界か現実世界で早期リタイアしよう。自立して一生遊んで暮らせる環境を作るぞ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
※ 能力やアイテムの説明
生まれ持った才能の性質。ガイアの異世界人は何の才能を持っているかで、その人生が変わる。
武器の変更により
基本的に
アビリティー
自分が持つ
ソウル
地球の神から秀人とその系譜にだけ渡される特殊な力。異世界では異質な能力で、現在の秀人では詳細な鑑定は不可能。
異界への扉
扉型アイテム。現実世界と異世界ガイアを繋ぐゲート。初回移動の際に発生する転移者特典に、膨大なプログラムが組み込まれている為に、秀人を含めて3人までしか通る事が出来ない。
携帯ダンジョン
扉型アイテム。扉の先が自動でモンスターの出現するダンジョン部屋になっている。時間の流れを遅く調節する事が出来る。
携帯作業室
扉型アイテム。扉の先がクラフターの為の作業室になっている。
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